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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON528「国内経済・人手不足問題・外国人労働者・起業支援・最低賃金~外国人労働者の受け入れを考える」

2014年8月1日


国内経済: 2014年度GDP成長率

人手不足問題: パート・アルバイト「不足」が7割

外国人労働者: 日本人並み給与を義務付け方針

起業支援: 起業準備中も失業手当支払いへ

最低賃金: 時給664円、働けど


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▼ 時給2000円でもアルバイトが集まらない地域もある

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政府は22日、経済財政諮問会議を開き、

2014年度の実質国内総生産(GDP)成長率が1.2%になるとの

見通しをまとめました。


先週0.1ポイントに続いて、

また今週0.1ポイント下落となっています。


輸出の伸び悩みと言われていますが、

実際にGDP成長率の内訳を見ると、輸出の伸び悩みよりも、

「民間最終消費支出」が伸びていないとわかります。


政府としては、この事実を言いたくないがために、

「輸出」を言い訳にしているのでしょう。


今の日本経済の実態について、朝日新聞は24日

「時給664円、働けど」という記事を掲載しました。


安倍政権が成長戦略の中で2年連続で最低賃金の引き上げを

明記した一方、地方の経営者の多くは昨年のような

賃金引き上げは厳しいと指摘しています。


少々この指摘は的外れと言わざるを得ません。


実際には時給664円では人は集まらないでしょうし、

そもそも私に言わせれば、国が時給を決めているのが

おかしいと思います。


どのくらいの時給が適正なのかは

地域によっても異なりますし、市場原理に任せるべきです。


例えば、私の友人に聞いたところでは、軽井沢では

時給2000円でアルバイトを募集しても

満足に集まってくれず困っているそうです。


無限に時給を高くするわけにはいかないでしょうから、

オペレーションに問題が出てくる可能性が高いでしょう。


特に小売りや外食の店舗運営に欠かせないパート・アルバイトの不足については、

日本経済新聞社が主要企業に調査したところでは、回答企業の約7割が

不足していると回答したということですから、他の地域でも

同様の問題が起こっているかも知れません。


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▼ 外国人労働者を「テンポラリー」な存在と考えてはいけない

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政府は来年度から受け入れを拡大する建設業の外国人労働者について、

同じ技能を持つ日本人と同等以上の給与を支払うよう

受け入れ企業に義務付ける方針を固めたとのこと。


これは日本人の労働者のポジションを確保する意味でも、

良いことだと思います。


ただし、外国人労働者について「テンポラリー」な存在として

捉えている今の姿勢は改めるべきだと思います。


現在、外国人技能実習制度が補完され、最長で6年の滞在が

認められるようになっています。


6年滞在して問題のない人なら60年滞在しても

何ら問題にはならないはずだと私は思います。


また、技能実習制度で来日した経験がある研修生が

再来日する場合、帰国後1年未満なら2年、1年以上では3年の滞在を、

それぞれ特定活動として認めるとなっていますが、

全く理屈に合っておらず、私には理解できません。


その人が日本にとって必要であり、有能な人材ならば、

条件を満たす限りグリーンカードを発行して

就業できるようにすべきです。


今、特に建築の解体工事などで人材が不足しているようですが、

日本人がいないなら外国人が何年でも働けるようにすれば良いのです。


外国人労働者に対する意識が低い一方で、

政府は起業を志す人には気の利いた施策を打ち出しました。


現状、起業準備段階の人は「自営業者」とみなして失業手当を

支払う対象としないことが多いのですが、

今後は原則として払うように運用を改めると発表しました。


最長1年間で、前職の賃金の5~8割の失業手当を給付するそうですが、

起業支援という意味では良いことだと思います。


ここまで気が利くのなら、外国人労働者に対する

グリーンカードについても思いを巡らせて欲しいところです。


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