大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON526「タイヤ世界大手・ソニー・JR九州~市場の大きな流れを理解する」

2014年7月18日


タイヤ世界大手 世界で競うブリヂストン VS ミシュラン

ソニー 教育用システム開発大学に販売へ

JR九州 2016年度までの上場検討


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▼ 世界を見据えるブリヂストン、世界一へ

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日経新聞は2日、タイヤ世界首位を争うブリヂストンと

仏ミシュランを比較・分析する記事を掲載しました。


これはブリヂストンの2013年12月期の自己資本利益率(ROE)が

12.7%とミシュランを逆転したと紹介。


円安に加え、米事業の改革が功を奏したものですが、

配当性向では依然として、ミシュランに見劣りするとし、

今後は市場との対話にも注力する必要があると指摘しています。


日本ではダントツのブリヂストンも、世界ではミシュランや

グッドイヤーの後塵を拝してきましたが、ついにグッドイヤーを抜き、

さらにミシュランも上回る数値を見せてくれています。


時価総額、売上、純利益、ROE、そしてシェアもミシュランを

上回るようになったとのことです。


この業界におけるミシュランの重要性は、

ラジアルタイヤの発明にあります。


それまではナイロンなどの繊維コードのタイヤが主流でしたが、

一気にスティールコードのタイヤに代わりました。


一昔前見かけましたが、道路でタイヤのパンク修理をする人の姿を、

今はほとんど見ることはないはずです。


それはラジアルタイヤのおかげです。


ブリヂストンを含め、業界中の企業がラジアルタイヤの開発には

苦労しましたが、ようやくミシュランと同程度のものが

作れるようになってきました。


ブリヂストンはフォードとの関係性が強いファイアストーンを

買収し、米国でのポジションも築き上げつつあります。


世界の覇権を狙える立場だと言っても過言ではないでしょう。

後は配当だけという印象です。


ぜひ今後の頑張りに期待したいと思います。


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▼ 学校の校舎を建てただけで教育事業と言うな

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ソニーは電子ペーパーを活用した教育用システムを開発し、

今秋に大学に販売する見通しが明らかになりました。


紙の感覚で文字を書ける電子ペーパーをノート代わりに使い、

教材やテストなどを無線でやり取りできるとのこと。


印刷物をなくし丸ごと電子化することで、効率化や学生との

コミュニケーションの向上につなげる狙いです。


私達のように十数年間にわたってオンライン教育事業を

展開している身から言わせてもらえば、はっきり言って

「バカにしている」レベルのニュースです。


情けなくなるくらいに「コンテンツ不在」「経験不在」であり、

ハードウェア主体のゼネコン国家では何も実現できない、

と指摘したいところです。


このようなことに対して、IT投資の予算を割り当てる国も

どうかしていますし、事業化を目指すというソニーもひどいものです。


教育というのは「コンテンツ」が最重要であり、

さらに「先生」の質や「教材」の作り方などを考慮すべきです。


今回のように「システム開発をして大学に販売します」

というのは、何十年も前から聞いている話ですが、

まともに実現されたことはありません。


学校の校舎を建てているだけの話で、

教育事業として成立しないのです。


IT投資にもなっていないレベルです。


一度、ぜひ我々のところに来て、コンテンツやその作り方を見て、

自分たちに同じレベルのことができるのか?を問いかけて欲しいと思います。


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▼ JR九州は本業・鉄道事業の業績改善が必須

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国土交通省は、国が全株式を持つ九州旅客鉄道(JR九州)を

2016年度までに上場させる検討に入りました。


収益力が高まり、上場後も安定的に経営できる環境が

整ってきたと判断。


売却益の一部は北海道、北陸で建設中の整備新幹線の

開業時期を早める財源に充てるとのことです。


JR九州、JR四国、JR北海道は、経営安定基金からの

助けを得て、運用益を出せています。


JR九州の経常利益の内訳を見ると、関連事業や流通業などが

好調だとわかります。


一方で、本業の鉄道事業は苦戦しています。

100億円規模の損失になっています。


これを改善しない限り、上場しても

おかしな構図になってしまうでしょう。


日本初のクルーズトレインとした話題になりましたが、

「ななつ星 in 九州」だけではダメなのです。


鉄道事業の損失を、これからの1年~2年で

解消しなければいけないと思います。


駅ビルなどの事業も好調で、日本では珍しいほど

その他事業で利益を上げているので、

ぜひ本業の改善に正面から取り組んで欲しいと思います。


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