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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON521「米兵開放問題・キルギス米軍基地・次期欧州委員長・英エネルギー政策~英国議会の施政方針演説の特徴」

2014年6月13日



米兵開放  米バーグドール軍曹がタリバンから開放

キルギス米軍基地  マナス空軍基地閉鎖、返還で式典

次期欧州委員長  ユンケル氏選出ならEU残留保証せず

英エネルギー政策  シェール開発の推進促し



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▼ したたかに米軍に基地を貸し出していたキルギスタンの今後の方針は?

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アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンによって

5年近く拘束されていた米軍兵士・ボウ・バーグドール陸軍軍曹が

解放され、1日にドイツにある米軍の病院施設に移送されました。


これを受けてオバマ大統領は、

米軍は「一人の兵士も置き去りにしない」と表明しましたが、

兵士の開放はグアンタナモ基地に収容されていたタリバン幹部5人

と引き換えに行われたことや、兵士が脱走兵だった疑惑も浮上しており、

当初の歓迎ムードが変化しつつあります。


オバマ大統領は「一人も置き去りにしない」などと

発言していますが、北朝鮮でも3人ほど捕まっていて、

北朝鮮政府は米国への交渉材料として利用しようと考えているでしょう。


現実的にはオバマ大統領の発言には全く説得力を感じません。


米軍がアフガニスタン作戦の後方支援拠点として

活用してきた中央アジア・キルギスのマナス空軍基地で3日、

閉鎖式典が開かれました。


この基地は、米軍がアフガニスタンでの対テロ作戦のため

中央アジアで唯一駐留してきた基地ですが、

今回の閉鎖によりこの地域での米国の影響力が低下する一方、

ロシアや中国の影響力が拡大しそうです。


キルギスタンは、わりと中立的な立場の国です。


人口はわずか550万人で、一人あたりGDPは1,000ドル弱という

貧しい国です。


今後は、ロシアがカザフスタンやベラルーシと画策している

新しい経済連合に入る可能性が指摘されています。


米国に基地を貸し出してお金を稼ぐ、

というしたたかさも持ち合わせている国です。


米国との関係性がなくなれば、ロシアに近づく可能性は

高いかも知れません。


また、中国とも長い距離にわたって国境が接していて、

中国にとっても新疆ウイグル自治区との関係性などを

考えると、重要な地区になっています。


そういう意味でも、非常に興味深い地域だと思います。


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▼ 英国では、女王陛下が施政方針演説を全て読む

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ドイツ週刊誌シュピーゲルは先月31日、キャメロン英首相が

ドイツのメルケル首相に対し、欧州連合(EU)の次期欧州委員長に

EU権限強化を唱えるユンケル前ルクセンブルク首相が選出された場合、

英国がEUを離脱する可能性に言及したと報じました。


欧州委員長は、同議会の承認を得てEU加盟国の首脳から選ばれます。


前週に投票が行われた同議会選では、ユンケル氏が所属する

中道右派の欧州人民党(EPP)が議席を大幅に減らしたものの

最大会派の座を維持しました。


一方、英国では反EUを掲げる英国独立党が欧州議会選で第1党になり、

EUの権限強化を主張するユンケル氏の存在は、英国の政局を

不安定にするとキャメロン首相が懸念しているとのことです。


メルケル首相とキャメロン首相は、ユンケル前ルクセンブルク首相を

追い落とし、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事を推そうと

していたそうですが、上手くいかなかったようです。


今ドイツでは、メルケル首相に対する批判が強まっています。


結局ユンケル氏で良いのなら、なぜラガルド氏を

引っ張りだそうとジタバタしていたのか、と指摘されています。


英国のエリザベス女王は4日、英議会での施政方針演説で

「英国の産業競争力やエネルギー安全保障のために、シェール開発を進める必要がある」

との見解を示しました。


国内での資源開発を促しエネルギー関連産業の競争力を高める

英政府の方針を受けたもので、ロシア産ガスへの依存度を

低下させる狙いもあるとのことです。


私はBBC放送で、エリザベス女王の施政方針演説を

全て聞いていました。


80歳を超える年齢ながら、分厚い施政方針演説の冊子を

1ページずつ全て読まれていました。


キャメロン首相が書いた内容とは思いますが、

その施政方針として財政・税制からインフラ投資、年金、住宅、教育、

犯罪にいたるまで、非常に幅広い内容を含んでいました。


実は私も英国の施政方針演説を女王が読むのを

聞いたのは初めてでした。


日本の皇室の場合には開催の宣言のみですので、

英国の女王があれほど長い施政方針演説を

読み上げるとは正直、驚きました。


キャメロン首相とエリザベス女王の間で、

どれほど内容について議論されているのかはわかりませんが、

もしかするとある程度、話し合いが持たれているかも知れません。


非常に面白いのは、女王陛下が施政方針演説を読み上げると、

野党としてもなかなかツッコミを入れるのが難しいということです。


「先程、女王陛下も申し上げたとおり・・・」という枕詞が

ついてしまうと、致し方ないでしょう。


キャメロン首相はずる賢く利用していると思います。


それにしても、与党と野党のトップまでもが、

エリザベス女王の施政方針演説を聞いている姿というのは

非常に刺激的であり、日本との違いにショックを受けました。


ぜひ、BBC放送を見てみて欲しいと思います。


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