大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON517「人口減少問題・外国人受け入れ制度・国内財政~問題解決に必要な目標設定」

2014年5月16日


人口減少問題 中長期国家目標で「50年後に1億人維持」

外国人受け入れ制度 高度人材、及び腰の「歓迎」

国内財政 国と地方の財政の長期試算を公表


-------------------------------------------------------------

▼ 感情論で否定せず、移民を受け入れる体制を整えるべき

-------------------------------------------------------------


政府が「50年後(2060年代)に人口1億人程度を維持する」

との中長期の国家目標を設けることが3日明らかになりました。


日本の人口はこのままでは2060年に約8600万人まで

減る見通しのため、2020年ごろまでに集中的に対策を進め、

人口減少に歯止めをかける狙いとのことです。


相変わらず、政治家や役人はずるい表現をするものです。


「50年後」には誰も生きていないでしょうし、

責任を問われることもないでしょう。


ただし、政府にこのような態度を取らせてしまう責任は

国民にもあります。


日本が人口を維持するとなれば、

計画的に移民を受け入れる以外に方法はないと私は思います。


しかし日本人は移民の受け入れに、

異常なほどマイナス感情を持っています。


本来ならば、50年後といわず「数年後」と

言いたいところなのでしょうが、

国民感情を考えて50年後と言っているのだと思います。


50年後と言いながら、徐々に国民に危機感を抱かせ、

理解してもらうという手順を想定しているのでしょう。


しかし私に言わせれば、逆にそれでは「危機感」は

生まれてきません。


50年後ではなく「5年後」と言うことで、

強烈な危機感を抱かせるほうが良いと私は思います。


そして、遅々として移民対策は進んでいません。


政府は2012年5月から外国人受け入れの優遇制度を

始めましたが、結局機能していません。


これまで単純労働者は認めない一方、高度人材は

歓迎すると説明してきましたが、実際の受け入れペースは鈍く、

高度人材の認定数は今年1月までの20ヶ月間でおよそ900人、

月50人程度のペースで法務省が見込んだ認定ペースの

3分の1以下に留まるとのことです。


世界の外国人労働力人口の割合を見れば、

米国15%、ドイツ10%程度です。


英国も最近大きく割合が上がってきています。


そんな中、日本はほとんどゼロに等しい状況です。


最近では、建設業界で人手不足のため一時的に

外国人労働者を受け入れていますが、

需要がなくなったら、再び本国に返してしまいます。


これではダメなのです。


人口減少、高齢化社会、労働人口不足は

「構造的な」問題だからです。


「外国人=犯罪」というイメージなどが強く、

日本は異常なほど外国人アレルギーを持っています。


それでも移民を受け入れ、2年間の教育制度を整備して、

グリーンカードを配布するなどの施策を

私は20年以上前から提唱しています。


こんなことを言えば、周りから叩かれるので

誰も言いたくないのでしょうが、本当の意味で

日本の将来を考えれば、やらなければいけないことです。


年間30万人以上の移民を受け入れなければ

間に合わないのだという事実を認識し、

すぐに動き出してもらいたいと思います。


-------------------------------------------------------------

▼ 国民の甘えが消えない限り、財政改善施策など無意味

-------------------------------------------------------------


人口問題と同様、今の日本にとって非常に大きな問題に

なっているのが「財政問題」です。


財政制度等審議会が先月28日、

国と地方の財政の長期試算を発表しました。


2060年度に債務残高の対GDP比を100%に安定させるためには、

2021年度から2026年度の6年間で、

約12.71%~6.98%(約45兆円~81兆円)の収支改善が

必要になるとのことです。


常に無駄遣いをしてきた結果、

今の借金だらけの状況を招いています。


しかしそれでもまだ、日本は無駄遣いをやめません。


なぜなら、無駄遣いをやめるよう緊縮財政を掲げると

選挙に落ちるからです。


すなわち、今の借金まみれの日本の状況は、

甘えた国民・甘えた国家が招いたのだと私は思っています。


80兆円の収支改善など、「今のままの甘えた」国民と

国家では絶対に実行することはできないでしょう。


おそらく、どこかのタイミングで市場から

制裁を受けて、日本国債の暴落を招き、経済破綻という

爆弾を落とされて痛い目に遭って、初めて改善への

取り組みを始められるのではないかと思います。


今回のような「試算」をいくら出したところで、

マスコミも国民も実行することはないでしょう。


政治家にしても、選挙になればまたリップサービスを

するに決まっています。


人口問題にしても、財政問題にしても、

国民の甘えの結果とも言えます。


この点を国民一人ひとりが

強く意識することが大切ではないかと思います。


問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点