大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON514「TPP・総合取引所創設~情報を多角的な視点で見る重要性」

2014年4月25日



TPP 3日間の閣僚会議を終了

総合取引所創設 強まる政治圧力


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▼ 消費者にとっては、TPPもEPAも大いに進めるべき

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日米両政府は18日、環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る

閣僚による3日間の関税協議を終えました。


協議では、日本が関税維持を求めるコメや牛・豚肉など

農産品5項目と、米国が守りたい自動車の輸入関税について

集中的に議論されました。


甘利経済財政・再生相は会談後、

「一定の前進はあったが、まだ距離は相当ある」

と述べました。


オバマ米大統領が23日から来日する予定があるので、

それまでに何とか形にしたかったというところでしょう。


オバマ米大統領の手前「一定の前進」と言っていますが、

実際には全く上手くいっていません。


今の日本のやり方では、

米国が条件をのむことは難しいでしょう。


また日本の聖域を認めつつも、米国は非常に

「厳しい」数字を要求しています。


日本のマスコミも「厳しい」「キツい」要求だと

報じていますが、現実的に言えば、一部の少数利益団体と

議員と役人にとって厳しいものであり、

大多数の一般人にとっては、むしろ歓迎すべき事態です。


自分たちの生活が楽になるというのに、

なぜ消費者がもっとTPPを後押ししないのか私には不思議です。



一方、欧州とのEPAも積極的に進めるべきだと私は感じています。




歴史的に見ても欧州と日本は、

全体的にいい交易を続けてきました。


しかし、ここに来て韓国が日本に先駆けて

EUとEPA協定の締結を強力に進めています。


今年からEUへの韓国自動車の輸出関税は撤廃されています。


日本に対しては自動車の関税が10%課されていますから、

それだけでも韓国に遅れをとっていると言わざるを得ないでしょう。


せめて韓国並みの条件を実現できるように動くべきだと思います。


また、ワインやチーズなど日本への輸入についても、

大いに受け入れる体制を整えるほうが良いでしょう。


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▼ 天下り体質がなくならないと、日本の取引所は復活しない

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日経新聞は、15日「総合取引所創設 強まわる政治圧力」

と題する記事を掲載しました。


株式や商品をまとめて扱う総合取引所の創設をめぐり、

政治の圧力が強まっていると指摘しています。


2007年の第1次安倍晋三政権で創設方針を決定したにも関わらず、

一向に実現していない背景には、代々、経産省OBをトップに迎えてきた

東京商品取引所への配慮と、それを排除するため議員立法での

創設を図る自民党の思惑が交差しているとのことです。


2013年に総合取引所(日本取引所グループ)が発足しましたが、

結局は当初のコンセプト通りには至っていません。


すなわち、商品先物から穀物まで全てを

1つの取引所で扱うことは未だに実現していないのです。


この原因は日本の役所体質にあります。


農水省、経産省、金融庁など

それぞれ管轄する役所が異なります。


それぞれが天下り先を確保したいゆえに、統一されないのです。

これは由々しき事態を招いています。


2004年時点では、世界の商品取引所の出来高ランキングで、

東京工業品取引所は世界3位に位置していました。


ところが、2010年になると11位まで順位を落としました。

東京穀物商品取引所は、9位から20位まで下落しています。


この間に出来高が減ったのは、日本の取引所だけで、

逆に世界の取引所は大きく成長しています。


上海先物取引所、ニューヨーク商業取引所、大連商品取引所、

シカゴマーカンタイル取引所などが良い例でしょう。


市場が縮小していることもあり、取引業者も小規模な企業ばかりです。


ある程度の人数がいなければ、

社内の体制整備、分析、安全性の確認なども覚束ないでしょう。


取引業者も育っていないという状況です。


こんな状況ですから、コモディティに関しては

海外の取引所でやればいいという発想になります。


実際、商社は日本の取引所を相手にせず、

海外の取引所を利用しています。


経産省も、いつまでも天下りのポジションにしがみつくのは、

みっともないのでやめてもらいたいと思います。


国内商品先物取引所は、

出来高も取引金額も減って苦境に陥っています。


そして次のシステム開発へ投資するお金もないという

八方ふさがりの状況です。


天下りが大事だと思っていると、いつまでたっても

状況を打開することはできないでしょう。


いい加減に世界を見て気づいてもらいたいところです。




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