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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON512「電力問題・原発輸出~原発再稼働をハードとソフトに分解して考える」

2014年4月11日


電力問題 東日本から電力融通受ける検討

原発輸出 原子力協定承認案


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▼ 原子炉の問題は「ハード面」ではなく、「ソフト面」の準備の遅れ

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関西電力が原発ゼロで迎える今夏の電力需給見通しに関し、

東京電力など周波数の違う東日本の電力会社から供給を

受ける検討を始めたことが4日、明らかになりました。


関電は融通量を数十万キロワット程度で

交渉しているとみられています。


実現すれば周波数変換設備を通じて

電力を調達することになります。


関東と関西の周波数の違う境目になる

糸魚川ラインの周波数変換所のキャパシティが、

120万キロワット程度です。


数十万キロワットなら十分に範囲内ですが、

私はこのキャパシティを3倍にするべきだと

以前から指摘しています。


東日本のほうが電力確保が厳しいように思われますが、

実際にはそんなことはありません。


九州電力、関西電力、四国電力など西日本は

原子力への依存度が高く、

電力確保は差し迫った問題になっています。


予備率を比較してみても、西日本の電力会社は

4%~5%と低く、非常に危ない状況だと思います。



暑い夏を迎え、予備率が3%台に落ちてくると、

いよいよブラックアウトの危険すらあるほどです。


そのような事態をさけるために、

東日本からの電力供給を受け入れる体制を

整えようとしているのです。


原子力規制委員会としても、九州電力の川内原発や

関西電力の大飯原発などの再稼働を

急ぎたいところでしょう。


原発再稼働については様々な議論がありますが、

柏崎刈羽原発の状況などを見ると、私としては

「ハード面」での体制は整っていると感じます。


私は「一人事故調査委員会」として福島第一原発の

事故原因を追求し、課題と解決策を指摘しましたが、

柏崎刈羽原発は私が指摘したハード面での準備を

しっかり整えています。


むしろ政府組織の対応、電力会社の情報共有、

万一の時の避難対策など、「ソフト面」の準備が

進んでおらず、遅れをとっています。


これらに合わせて、いつまでも再稼働を見送る

必要はないと私は思います。


また、小型原子炉の有用性についても

議論があるようですが、今求められているのは

100万キロワットレベルなので、

私はそれほど有効だと感じません。


小型でなくてもハード面での安全性を

確保する技術はできています。


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▼ 原子炉輸出は有望だが、国内での新型原子炉は30年間は無理

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トルコとアラブ首長国連邦(UAE)に原子力発電所を

輸出できるようにする原子力協定承認案が

4日衆院本会議で可決、参院に送られました。


条約や協定は衆院の議決が参院に優先するため、

今国会での承認は確実。


これにより、日本企業の受注拡大に

弾みがつきそうな状況です。


日本と原子力協定を締結済みの国は、

トルコ、アラブ首長国連邦以外にも、米国、英国、

カナダ、オーストラリア、中国、フランスなど

多数あります。


現在、インド、ブラジル、南アフリカ共和国と交渉中で、

メキシコ、サウジアラビアまで視野に入れています。


福島第一原発の事故から学んだことを反映した

新型原子炉を作る、というのは大きな優位性があります。


世界的に見ても原子炉開発と言えば、仏アルバ・三菱重工、

日立・GE、東芝・ウエスティングハウスくらいですから、

日本勢だけで世界シェアの3分の2を

確保することは十分に可能でしょう。


しかし日本国内で新しい原子炉を作るという

話になるのは、おそらく30年後くらいでしょう。


米国もスリーマイルの事故後、30年間は

国内に新しい原子炉を作ることはできませんでした。


雪解けのためには時間が必要で、日本でも30年間の

時間を見ておく必要があると思います。



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