電力問題 東日本から電力融通受ける検討
原発輸出 原子力協定承認案
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▼ 原子炉の問題は「ハード面」ではなく、「ソフト面」の準備の遅れ
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関西電力が原発ゼロで迎える今夏の電力需給見通しに関し、
東京電力など周波数の違う東日本の電力会社から供給を
受ける検討を始めたことが4日、明らかになりました。
関電は融通量を数十万キロワット程度で
交渉しているとみられています。
実現すれば周波数変換設備を通じて
電力を調達することになります。
関東と関西の周波数の違う境目になる
糸魚川ラインの周波数変換所のキャパシティが、
120万キロワット程度です。
数十万キロワットなら十分に範囲内ですが、
私はこのキャパシティを3倍にするべきだと
以前から指摘しています。
東日本のほうが電力確保が厳しいように思われますが、
実際にはそんなことはありません。
九州電力、関西電力、四国電力など西日本は
原子力への依存度が高く、
電力確保は差し迫った問題になっています。
予備率を比較してみても、西日本の電力会社は
4%~5%と低く、非常に危ない状況だと思います。
暑い夏を迎え、予備率が3%台に落ちてくると、
いよいよブラックアウトの危険すらあるほどです。
そのような事態をさけるために、
東日本からの電力供給を受け入れる体制を
整えようとしているのです。
原子力規制委員会としても、九州電力の川内原発や
関西電力の大飯原発などの再稼働を
急ぎたいところでしょう。
原発再稼働については様々な議論がありますが、
柏崎刈羽原発の状況などを見ると、私としては
「ハード面」での体制は整っていると感じます。
私は「一人事故調査委員会」として福島第一原発の
事故原因を追求し、課題と解決策を指摘しましたが、
柏崎刈羽原発は私が指摘したハード面での準備を
しっかり整えています。
むしろ政府組織の対応、電力会社の情報共有、
万一の時の避難対策など、「ソフト面」の準備が
進んでおらず、遅れをとっています。
これらに合わせて、いつまでも再稼働を見送る
必要はないと私は思います。
また、小型原子炉の有用性についても
議論があるようですが、今求められているのは
100万キロワットレベルなので、
私はそれほど有効だと感じません。
小型でなくてもハード面での安全性を
確保する技術はできています。
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▼ 原子炉輸出は有望だが、国内での新型原子炉は30年間は無理
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トルコとアラブ首長国連邦(UAE)に原子力発電所を
輸出できるようにする原子力協定承認案が
4日衆院本会議で可決、参院に送られました。
条約や協定は衆院の議決が参院に優先するため、
今国会での承認は確実。
これにより、日本企業の受注拡大に
弾みがつきそうな状況です。
日本と原子力協定を締結済みの国は、
トルコ、アラブ首長国連邦以外にも、米国、英国、
カナダ、オーストラリア、中国、フランスなど
多数あります。
現在、インド、ブラジル、南アフリカ共和国と交渉中で、
メキシコ、サウジアラビアまで視野に入れています。
福島第一原発の事故から学んだことを反映した
新型原子炉を作る、というのは大きな優位性があります。
世界的に見ても原子炉開発と言えば、仏アルバ・三菱重工、
日立・GE、東芝・ウエスティングハウスくらいですから、
日本勢だけで世界シェアの3分の2を
確保することは十分に可能でしょう。
しかし日本国内で新しい原子炉を作るという
話になるのは、おそらく30年後くらいでしょう。
米国もスリーマイルの事故後、30年間は
国内に新しい原子炉を作ることはできませんでした。
雪解けのためには時間が必要で、日本でも30年間の
時間を見ておく必要があると思います。