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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON509「ウクライナ情勢・世界情勢~日本人の「寄りかかり的思考」を考える」

2014年3月20日



ウクライナ情勢 ロシア編入の賛否を問う

世界情勢 ここ数年で「Gゼロ」の傾向強まり


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▼ クリミア半島の独立は、歴史的に見て何ら特別なことではない

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ウクライナ南部クリミア半島で16日、

ロシア連邦への編入の賛否を問う住民投票が始まりました。


投票は日本時間17日に締め切られ、暫定結果が発表される予定。


ウクライナ新政権や欧米諸国は、住民投票はウクライナ憲法や国際法に

反しており、ロシアによる事実上の「クリミア併合」だとして強く反発

しているとのことですが、私はそれは筋違いだと思います。


日本政府も米国の意見に流されて、ロシアに思い留まるよう、

国家安全保障局の谷内局長をロシアに派遣すると発表しましたが、

私に言わせれば「余計なお世話」に過ぎません。


クリミア半島の住民の6割がロシア系ですし、

独立を支持する人が圧倒的多数だと言われていますから、

ほぼ間違いなく、ロシアへの編入が可決されるでしょう。


その後、ロシアがすぐに編入を実施するのか、

あるいは1年後になるのか、まだわかりません。


それにしても、欧米諸国が反対しているからというだけで、

その意見に同意してしまう日本もどうかと思います。


第二次世界大戦後、独立・領土編入はいくつもの事例がありますが、

それらの事例を見ても、いったい今回のクリミア半島のロシア編入に

何を文句を言えるのか?と私は思います。




コソボ独立に際しては、独立宣言をすればEUへの加盟を認めるという

条件をつきつけ、米国は今のロシアと同じ立場をとっていました。


ザールラントは世界大戦後、フランス領になりましたが、

1955年の住民投票の結果、ドイツ帰属への声が過半数となり、

57年にドイツに編入されています。


特に米国の歴史を顧みれば、ルイジアナ、ハワイ、カリフォルニアなど、

どれを見ても今回のロシアを非難できる立場ではないでしょう。


クリミア半島の人たちはロシアに編入されると、

給料や年金が増えるとも言われています。


編入賛成派によって、この事実を伝えるCMが流れているそうです。


ウクライナは完全に破綻した国家ですから、致し方ないでしょう。


それでも、クリミア半島の独立に対して、ウクライナ政府は

電力供給の停止で脅し、逆にロシアはウクライナに対する

ガス供給の停止で対抗する姿勢を見せています。


ロシアへの編入賛成の住民投票結果を受け、事態は泥沼化する

可能性が高いですが、全体的にはロシア優位で

進んでいくだろうと私は見ています。


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▼ G0時代、日本は寄りかかる対象を失い、どうあるべきか?

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こうしたロシアの動きを受けて、シリア問題など

ロシアに出し抜かれた形になった米オバマ大統領の手腕への

批判が出てきています。


その根底にある考え方が「G0」というものです。


これは、イアン・ブレマー氏が数年前に書いた本『「Gゼロ」後の世界』

で提唱された考え方です。


G2、G7、G20など様々言われていますが、実際のところは「G0」であり、

誰も世界の主導権を握っていないのではないか?ということです。


むしろ、冷戦時代のほうが、米国とロシアが明確に主導権を握っていて、

「寄りかかる対象」が明確だったと言えます。


寄りかかる対象が失われると、

日本のように寄りかかることに慣れきった国は

茫然自失状態に陥ります。


最近で言えば、日本は自分の思い通りに動いた結果、

韓国や中国との関係性が悪化しました。


米国に泣きついてみたものの、見事に突き放されて、

さてどうしたものかと困り果てている状態です。


G0の時代のおいては、日本のように寄りかかることに

慣れきっている国は厳しいことになります。


ドイツなどは、日本に比べて自分自身の考えで

動くことができるようになってきています。


今回のウクライナ問題についても、欧米の意見に流れるのではなく、

しっかりと自分自身の意見を持ち、対処してもらいたいところです。


少なくとも冷静に歴史を見れば、様々な侵攻や編入を行ってきた米国が、

今回のウクライナ問題について、「国際法上」「道義的」にも

許しがたい行為と批判できる立場にあるとは到底思えません。



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