大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON500「2013年国内市場・日本の現状と問題点~問題解決の視点で日本の先を見通す」

2014年1月17日


2013国内市場 日経平均株価6年ぶりに1万6000円台

外国人投資家 2013年の日本株買越額

自社株買い 2013年初から自社株買い

1人当たりGDP 日本の1人当たりGDP4万6537ドル

中小企業支援 個人保証制度改正で経営者以外も容認へ


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▼ 年明けから、日本経済の勢いに対する潮目が変わりつつある。

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2013年末の日経平均株価は1万6291円と前年末から

56.7%上昇しました。


年間の上昇率は1972年(91.9%)以来、41年ぶりの上昇率。


安倍首相は先月30日、東京証券取引所の大納会に出席し

「来年もアベノミクスは買いだ」とあいさつしたそうです。


昨年末の大納会の時点での日経平均株価を見ると、

確かにある種の勢いを感じられたのですが、

年が明けて少々様相が変わってきていると私は感じています。


アベノミクスや金融緩和である程度の成果が見られた一方で、

その後遺症があるのも事実です。


実態を超えて株価が上がり続けることはありませんし、

世界経済の動きから見ても風向きが変わりつつあると感じます。


円安になっているのに実際の輸出量は増えていないですし、

円安についても欧州では一部の企業から悲鳴が上がり始めていて、

円に対する歯止めがかかり始めています。


エコノミストや証券会社に言わせると、株価は2万円を

突破するとか、円は130円を突破するとか、昨年の勢いのままに

好き放題に言うと思いますが、私は年明けから「潮目」が

変わり始めていると思っています。


日本の株価を支えている1つの大きな要因と言われる

外国人投資家による日本株売買についても、

手放しで安心していられる状況ではないでしょう。


東京証券取引所がまとめたところによると、

2013年12月第3週の海外投資家の売買高は

8803億円の買い越しでした。


買い越しは8週連続で、買い越した金額はこれまでの過去最高を

上回る約14兆円超を記録しているとのことですが、

これもいつムードが一変するかわかりません。


過去の外国人投資家の日本株売買状況を見ると、

入っては出ての繰り返しであり、

ぬかりなく便乗している姿勢が伺えます。


もちろん長期的なスタンスで投資している場合も多いですが、

ヘッジファンドなども確実に入り込んできています。


新興国でも実際に起こっているように、こうした外国人投資家は

ムードが変われば、さっと手を引いていきます。


現時点において外国人投資家による買い越しが

大きいのは事実ですが、これから先はわかりません。


先日、日本の1人あたりGDPが3年連続で過去最高になったと

発表されましたが、こうしたニュースも、安倍首相は「見せ方」が

上手なので、しっかりと事実を知ることが大切でしょう。


発表された数字は2012年のGDPですが、これは為替実効レートが

79円だったことが大きく影響しています。


つまり、為替の影響を無視できません。


もし他の条件を一切除外し、単純に2013年の為替レートで

換算すれば、日本の1人あたりGDPはオーストラリアや米国を下回り、

ニュージーランドやイタリア並みに落ち込む計算になります。


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▼ 金余り状態、モラルハザードに見る日本経済の問題点。

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金融情報会社のアイ・エヌ情報センターによると、

2013年初からの自社株買いは合計約2兆1000億円。


昨年1年間の実績を4割近く上回りました。


一般に株高局面では進みにくいのに、2013年は企業業績の回復を

追い風に取得額が膨らんだとの見解ですが、

私は少し違う感想を持ちました。


というのは、日本経済は「カネ余り」状態になっていて、

企業は余った資金を持て余しているからです。


日本企業の内部留保は総額で約230兆円と言われています。


自社株買いが増えていると言われますが、

投資先も見つけられず、行き先のない資金になっています。


経営者は、資金を使うアイディアを出せずに困っているという状況です。


そして銀行も同じくらいの金額の資金を持っていますが、

貸出先がなく、持て余しています。


それにも関わらず、日銀がさらにカネ余り状態を助長している状況です。


積極的に自社株買いが進んでいるというよりも、

このカネ余りという状況をしっかりと認識することが重要だと思います。


先日、銀行などが中小企業へ融資する際の個人保証の制度改正を巡り、

引き受け側の自発的な意思が確認できれば、

経営者以外にも保証を認める方向となりました。


今、日本の銀行はカネ余り状態ですから、とにかく

「お金を借りてほしい」と思っています。


ですから、貸出をするとなれば、金利をゼロでも貸し出します。


ところが、そんな状況にあっても経営的に不安がある場合には、

保証(担保)を取らなければ貸さない、ということです。


本来、銀行は経営者や経営戦略から融資判断をすべきですが、

結局、担保でしか判断しないのであれば、本来の機能を

失っていると言わざるをえないでしょう。


さらに今おかしい状況になっているのは、中小企業金融円滑化法が

終了しているにも関わらず、金融庁の指導によって、

本来の処理をしていないことです。


本当なら「破綻懸念先」に分類し、引当金を

計上しなければならないものでも、金融庁の許可を得て、

「健全先」として分類したままにしています。


あってはならないモラルハザードだと思います。


亀井氏が推し進めた悪法(中小企業金融円滑化法)は、

30万社を巻き込んだまま、未だに問題を先送りにしています。


それでも、超カネ余り状態ゆえ誰も痛痒を感じていないのが

恐ろしいと私は思っています。


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