大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON499「道州制・大阪府政~現象を冷静に捉える視点を鍛える」

2014年1月10日



道州制 同床異夢の道州制

大阪府政 泉北高速鉄道 三セク売却議案が否決


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▼ 道州制の実現に向けて、各論レベルでの議論が重要

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日経新聞は12月20日、「同床異夢の道州制」と題する記事を掲載しました。


これは19日に開催された全国知事会議で、先の臨時国会において

道州制推進基本法案の提出を見送った自民党に抗議文が

提出されたと紹介。


日本維新の会との連携を探る政策として道州制を重視した自民党も、

日本維新の会が橋下共同代表の慰安婦発言などで勢いを失うと、

熱気が急速にしぼんだと指摘しています。


これは本当に残念なことです。もし橋下氏が、道州制のみに

集中してやっていれば、こんな事態にならず、

実現に向けて動いていたと思います。


また日経新聞がいう「同床異夢」というのは的を射た表現です。


地方に権限を持ってくるということで、全国各地の知事も

道州制に「総論」としては賛成しています。


しかし「各論」になってくると、反対する立場をとる人もいます。




例えば、福島県は東北ではなく関東と一緒になることを望んでいたり、

四国と中国で一緒になることはお互いに望んでいないなど、

それぞれ意見が異なります。


道州制の実現にあたり、地域によっては経済的に独立できるのか

不安視されているところもありますが、私に言わせれば

「四国だけでもデンマーク並みの経済がある」のだから、大丈夫です。


実現しようと思えば、やれるはずです。


私は今後も道州制の実現に向けて尽力していきたいと思っていますが、

返す返すも橋下氏の勢いが削がれてしまったのが残念です。


もし橋下氏があのままの勢いで道州制を推し進めていれば、

自民党も民主党も従うしかなかったと思います。


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▼ 大阪府政の根本的な問題は、橋下氏の政治的な力が衰えたこと

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大阪府が泉北高速鉄道を運営する第三セクターの株式を

米投資会社に売却するための関連議案が12月16日の

府議会本会議で否決されました。


大阪維新の会は会派として賛成方針を決めていましたが、

所属4議員が反対。


大阪維新は市議会に加え、府議会でも単独過半数の勢力を

維持できなくなり、看板政策「大阪都構想」への影響は

必至の様相です。


地下鉄の民営化も計画倒れに終わり、

この案件も非常に面白い試みでしたが否決されてしまいました。


すでに、大阪維新の会はガタガタの状態になっています。


地元大阪でも決定事項を通すことができず、府議会、市議会でも

過半数を割り込んでいます。


かつて橋下氏と維新の会に勢いがあった頃は、

下手に反対すると「橋下氏が怖い」という感覚があったはずです。


郵政選挙で刺客を送り込んだ小泉元首相のように、

何かあれば橋下氏が対立候補を送り込んできて

痛い目にあうかもしれない、という怖さです。


ところが前回の堺市長選挙で、すでに橋下氏と維新の会には、

その力がないことが露呈してしまいました。


だから、今は誰も怖れる人はいないでしょう。


橋下氏の影響力が低下し、今回の三セク売却議案だけでなく、

すべてが巻き戻されてしまうと思います。


当然、大阪都構想も白紙になるでしょう。

非常にもったいないことです。


外資系ファンドへの恐怖が原因という人もいますが、

より根本的には橋下氏や松井氏の力がなくなってしまった

ことだと私は思います。


そして、そもそも外資系ファンドだからと言って

敬遠すること自体、私には理解できません。


外資系ファンドであっても法律には従うわけですから、

何か法に抵触することがあれば訴えればいいだけです。


外資系というだけで「黒船」を例に出して、

恐怖心を煽る人がいますが、黒船にしても日本の開国のきっかけを

作ってくれたのですから、感謝すべきです。


戦後の財閥解体なども、より日本の財閥系企業を強くする

結果になっていますから、私は良かったと思っています。


外資というだけで盲目的に怖いと考えるのではなく、

冷静に客観的に見るべきでしょう。


大阪府政の根本的な問題は、橋下氏の政治的な力が衰えたことです。

今回の件も、それが表面化した一例に過ぎないと思います。



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