大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON494「米住宅金融公社・プエルトリコ財政・FRB次期議長・欧州財政~データの背景を理解する」

2013年11月29日



 米住宅金融公社 2公社救済の公的資金年内回収へ

 プエルトリコ財政の債務危機 米版ギリシャの様相

 FRB次期議長 金融緩和の出口「特定の時期決めていない」

 欧州財政 ECB、政策金利の引き下げ 過去最低の0.25%に


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 ▼ 米住宅市場の回復とプエルトリコの危機

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 米政府は、2008年の金融危機後に米住宅金融2公社の

 救済で使った公的資金1874億ドル(約18兆4000億円)の

 ほぼ全額を年内に回収する見通しと発表。


 米住宅市場の回復を支えに2公社の業績が好転し、

 政府は2公社から巨額の配当を得たとのことです。


 ファニーメイとフレディマックという2公社は

 ほぼ解体路線でしたが、18兆円の返済を終えて、

 急激に印象を回復しています。


 実際、ケースシラーの数値を見ても、住宅価格が

 戻ってきていることがわかります。


 米国住宅業界の最大の悩みの1つだった公社問題が

 解決するのは、非常に良いことだと思います。


 今後については、18兆円の返済も終えたのでこのまま解体

 させれば良いという意見がある一方で、買収・民営化して

 運営すると名乗りを上げている企業も出てきているようです。


 一方で、米国にとって少し頭が痛いニュースもありました。




 日経新聞は6日、

 「プエルトリコの債務危機 米国版ギリシャの様相」

 と題する記事を掲載しました。


 米国自治領プエルトリコの債券利回りが急上昇していると紹介。


 長期に渡る財政拡大により、公的債務が700億ドルに

 膨れ上がっていることに投資家が警戒を

 強めているとのことです。


 プエルトリコは米国の準州のようなもので、51番目の州

 といっても良い存在ですが、自ら債券を発行できるため、

 無責任な経営を許す結果となっています。


 サトウキビ、コーヒー、タバコ栽培、そして観光といった

 主要産業があるにも関わらず、政府がしっかりしていない

 ために財政が著しく悪化しています。


 とは言え、6兆円~7兆円規模の話なので、

 米国の51番目の州になれば、すぐに問題は解決されると思います。


 そろそろプエルトリコから米国に救済を申し出る頃かも知れません。


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 ▼ 雇用情勢が回復する一方で、人材のミスマッチ問題が残る

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 米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長に指名された

 イエレン同副議長は、量的緩和の縮小開始について

 「特定の時期は決めていない」と明言。


 今後の雇用情勢を踏まえ判断する考えを示しています。


 昨今、米国の雇用情勢は改善してきています。


 8%~9%台だった失業率は、7%を少し上回る水準まで

 回復してきていますが、これが7%を下回ってきたら、

 量的緩和第3弾(QE3)を締め上げていくということです。


 しかしその水準に達すると、ある問題が浮上します。


 それが人材のミスマッチです。


 すなわち企業が求める人材が、実際に仕事を求めている人には

 合わないので、雇用が改善しないのです。


 ゆえに、米国では失業率が7%を下回ることが難しくなっています。


 日本でも同じ理由で、失業率が4%を下回ることはほぼありません。


 欧州でも理系の人材を求めているのに、市場にいるのは

 文科系の人材ばかりで、人材のミスマッチが発生しています。


 若者の失業率が40%を超えるという問題がある一方で、

 そもそも文科系の勉強しかしていないのではダメだ、

 という話になっています。


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 ▼ 経常収支を見ると、欧州は最悪期を脱したと言える

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 欧州中央銀行(ECB)は7日、政策金利を現行の年0.5%から

 過去最低の0.25%とすることを決めました。


 また、アイルランドは14日、欧州連合(EU)から

 2010年末以降受けてきた金融支援を12月半ばに終えると

 発表しました。


 支援の条件として国際社会に約束した財政再建を着実に進め、

 自力で市場から資金を調達していくメドがついたとのことです。


 意外なことに、欧州は米国や日本と同様、

 金利を引き下げる政策を採用しました。


 FRBと日銀の政策金利はほぼゼロですが、欧州でも主要国の

 それは同じ水準になってきています。


 欧州主要国の経常収支を見ると、ポルトガル、ギリシャも

 最悪期を脱して経常収支がプラスに転じています。


 アイルランドも非常事態を卒業し、

 若者の失業率の問題はあるもののスペインも経常収支は

 プラスになってきています。


 欧州全体としてみれば、小康状態になって、

 今はプラスに転じているタイミングです。


 最悪の時期は脱したという観測が多いようですが、

 それも頷けます。


 もちろん、銀行がいつ破綻するかわからない、ギリシャの

 財政削減は限界ではないか、といった問題は残っています。


 しかし、経常収支を見る限りは、ずいぶんと改善に向けて

 動いてきた結果が出てきたと言えると思います。



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