大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON486「東京エレクトロン・LIXIL・東レ~各企業のM&A戦略を考える」

2013年10月4日


 東京エレクトロン 2014年後半の経営統合を発表

 LIXILグループ 独グローエ買収を発表

 東レ 米ゾルテックを買収


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 ▼ 半導体製造装置メーカーが、規模の経済で半導体メーカーに対抗する

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 半導体製造装置の国内首位で世界3位の東京エレクトロンと

 世界首位の米アプライドマテリアルズが、先月24日、2014年後半に

 経営統合すると発表しました。


 スマートフォンの普及で進む半導体の高機能化に対応するため、

 経営統合により開発費を分担。


 今後、次世代技術である450ミリウエハー向け製造装置の実用化や

 メモリーの大容量化に対応した技術開発を進める意向とのことです。


 東京エレクトロンもアプライドマテリアルズも、

 非常に高収益企業でしたが、ここ最近伸び悩んでいました。


 業界2位にいるオランダのASMLに脅威を感じた、3位と1位が

 手を組んだという形です。


 この経営統合でシェアは25.6%となり、ASMLの2倍になります。


 半導体製造装置メーカーは、巨大になりすぎた半導体メーカーから、

 厳しい仕打ちを受けています。


 半導体メーカーは、アップルやクアルコムから発注を受けると、

 半導体製造装置メーカーに厳しい条件を突きつけてきました。


 今回の経営統合は、規模経済によって半導体メーカーに

 対抗できるようになるため、というのが最も大きな目的でしょう。


 本社はオランダとのことですが、ここはほぼペーパーカンパニーに

 近いでしょう。


 実際のオペレーションは日本と米国でそれぞれ行うはずです。


 ただし、半導体メーカーとの交渉は一本化し、

 対抗する姿勢を示してくるものと思います。


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 ▼ LIXILは買収後のマネジメントを引き締めることが大切

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 LIXILグループは26日、日本政策投資銀行と共同で

 ドイツの住宅用機器大手グローエを買収すると正式発表しました。


 負債の承継を含めた買収総額は約29億ユーロ(約3800億円)。


 欧米などの独禁当局の許可を得て2014年前半に買収を完了する予定です。


 先日、私はこのテーマをケース・スタディで扱った時、

 今後LIXILが狙うべきM&Aの対象は、欧州市場の水回りメーカー、

 北米の建材メーカーだと提案しました。


 LIXILはすでにアメリカンスタンダードを買収済みですから、

 まさに私の推薦はグローエでした。


 グローエといえば、超高級メーカーの代名詞のような存在です。

 

 超一流ホテル、超大金持ちの家は、水回りやキッチンが

 グローエになっています。


 グローエを使っているだけで、お金持ちだとわかるほどです。


 アメリカンスタンダードとは対照的なブランドになりますから、

 その意味でもLIXILにとっては非常に良い買収になると思います。


 LIXILがアメリカンスタンダードとグローエを

 どう使い分けていくのか、楽しみにしています。


 LIXILの藤森社長は、海外・国内でそれぞれ1兆円という規模を

 託されているそうですが、今回の買収で6000億円が

 見えてきましたから、あと4000億円です。


 GEの副社長としても敏腕を振るった藤森社長なら、

 おそらく実現させると思います。


 ただし、気をつけなくてはいけないのは、買収後の

 マネジメントとインテグレーションです。


 当然、GEのノウハウを持っているとは思いますが、

 それでもプライドの高い会社を買収した後、

 マネジメントしていくのは大変です。


 買収戦略で成長しているジョンソン・アンド・ジョンソンや

 ネスレ、そして藤森社長の古巣であるGEなどは、

 必ず「買収後の3ヶ月でやるべきこと」が決まっています。


 LIXILが同じようなことができれば、日本で例外的に

 成功した会社として名を残すことができるでしょう。


 LIXILと同様、こちらも期待したいのが東レです。


 東レは27日、炭素繊維大手の米ゾルテックを買収することで

 合意したと発表しました。


 買収額は600億円~700億円で世界首位の東レは高機能品を

 主力としており、廉価品でトップメーカーのゾルテックを

 傘下に収めることで、炭素繊維の新たな用途を開拓する考えです。


 東レは炭素繊維生産能力シェアで現在トップです。


 ゾルテックは業界シェア3位ですが、東レとは異なり廉価品の

 炭素繊維を扱っています。


 東レはゾルテックを買収することで、既存のハイエンド品と

 廉価品の両方を抑えシェアは30%に達します。


 LIXILと東レの動きは日本企業にとっては、頼もしい限りです。

 今後の両社に期待したいと思います。

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