大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON483「中国理財商品・中国外資誘致策・中国工業団地開発・シェールガス~直面する中国の課題を考える」

2013年9月13日


 中国理財商品 中国銀行全体の残高145兆6000億円

 中国外資誘致策 外資系企業に関わる法律変更認める決定

 中国工業団地開発 大型工業団地開発が頓挫

 シェールガス 中国のシェールガス開発課題山積で振り出しに


 -------------------------------------------------------------

 ▼ 中国のバブル崩壊は秒読み段階に入った

 -------------------------------------------------------------


 銀行業監督管理委員会によると、6月末の中国の銀行全体の

 理財商品の残高は9兆800億元(145兆6000億円)で、

 昨年末に比べて28%増加しました。


 中国の銀行金利も決して高い水準ではないので、

 高い利回りを求めるとなると、理財商品に行き着きます。


 結果として、地方政府の傘下にあるディベロッパーなどに

 その資金が流れていきます。


 今中国では窓口規制が始まり、普通に銀行からお金を借りることが

 出来ないので、高い金利であっても、このような場所で

 借りるしか方法がなくなっています。


 しかし、これでは国家が「利ざや稼ぎのゲーム」に

 参加しているようなものです。


 日本のバブル崩壊直前、米国のバブル崩壊直前

 と全く同じような現象が起きています。


 中国経済のバブル崩壊も秒読み段階に入ったと言えるでしょう。


 そんな中、上海と香港でおかしな動きを見せています。


 立法機関の全国人民代表大会常務委員会は30日、上海の自由貿易試験区内で

 「外資企業法」など外資系企業にかかわる法律を変更する権利を

 10月1日から3年間、国務院(政府)に与えることを決定しました。


 上海は常に香港を意識してきたのでしょうが、外資系企業に対する

 自由の点で、香港にはなかなか及ばず、思ったように香港から上海に

 外資系企業が誘致できていないという状態が続いています。


 そこで、上海を香港並みに「緩める」という方向で調整するようですが、

 香港はこれに対して反感を持っていて、一生懸命ロビー活動を

 展開しています。


 上海と香港で騙し合いの様相を呈してきました。


 -------------------------------------------------------------

 ▼ シェールガスの探査は進まず、工業団地開発は暗礁に

 -------------------------------------------------------------


 ロイターは6日、世界最大の埋蔵量といわれる中国の

 シェールガスの開発が、振り出しに戻りつつあると報じました。


 シェールガス開発に参入する企業の多様化や国有会社の

 消極的な投資姿勢で、開発が進んでいない現状を紹介しています。


 中国の石油関係は、習近平に睨まれているので、その影響も

 あるのかも知れません。


 米国やアルゼンチンよりも、国のシェールガス埋蔵量は多いものの、

 掘り出しにくいという弱点があります。


 シェールガスがあっても、水のない場所のため水圧破砕法による

 安価な採取ができないこともあるでしょう。


 中国にはシェールガス採取のための技術も資金も不足している

 という状況です。


 第2次シェールガス開発入札では、中国企業16社が探査権を

 落札しましたが、結局のところ1社も実際に「穴を掘った」

 ところはありません。


 ロイターの報じているところだと、中国政府に中国での

 初のシェールガス生産物分与契約(PSC)を承認された、

 ロイヤル・ダッチ・シェルでさえ、何もしてないということです。


 また、もう1つ習近平体制に移行してからは関心が低下していると

 報じられているのが中国の大型の工業団地開発プロジェクトです。


 かつて中国の胡錦濤前指導部が国家プロジェクトと位置付けた

 大型の工業団地開発が暗礁に乗り上げています。


 当時の温家宝首相が来日時にPRするほど重視していた

 中国河北省唐山市の開発区「曹妃甸(そうひでん)」が

 話題になっています。


 かつて江沢民政権下の上海では浦東地区の開発をすごい勢いで

 進めていましたが、まさにあれは国家プロジェクトと呼ぶに

 相応しかったと思います。


 しかし、唐山市・曹妃甸の開発はもともと盛り上がりが

 今ひとつだったという印象を拭えません。


 渤海湾の周辺には、大連・天津がありますから、

 唐山が盛り上がらないのは必然といえるかも知れません。


 外資系企業にしても、天津の方が便利ですから、唐山まで行く

 必然性がありません。


 おそらくこの工業団地開発プロジェクトは、胡錦濤の置き土産

 としてこのまま終了してしまう可能性が高いでしょう。

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点