大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON482「マクドナルド・パナソニック・ソニー・カーナビ業界~日本独特の競争環境を考える」

2013年9月6日


 日本マクドナルド 原田会長兼社長が退任

 パナソニック 個人向けスマホ事業撤退で最終調整

 カーナビ大手 カーナビ大手の株価下落

 ソニー ヒトゲノム解析事業に参入


 -------------------------------------------------------------

 ▼ マクドナルドが低迷した原因は、日本独特の激しい競争環境

 -------------------------------------------------------------


 日本マクドナルドホールディングスは先月27日、傘下の事業会社、

 日本マクドナルドの原田泳幸会長兼社長が社長を退任し、後任に

 マクドナルド・カナダ出身のサラ・カサノバ氏が就任する人事を

 発表しました。


 「100円マック」のヒットなどでデフレの勝ち組と言われた

 日本マクドナルドですが、足元の業績は低迷。


 原田氏は同社の会長とホールディングスの会長兼社長には

 留まるものの、今後は米国本社主導で立て直しが

 進むと見られています。


 以前原田氏はマクドナルドの低迷の原因の1つとして、

 特に東日本大震災以降の日本人の心理変化を

 挙げていましたが、私はその意見には与しません。


 これまでの実績を見れば、経営者として優れた人物だと

 思いますが、この点についての認識は正しくないと私は思います。


 マクドナルドの低迷の原因は、日本人の心理が変わったから

 ではなく、マクドナルドを取り巻く競争環境が変化し

 多様化する中で、マクドナルドが対応できていないからです。


 コンビニ弁当・お惣菜、立ち食いうどん・そば、

 すき家・吉野家の牛丼など、かなりバラエティにあふれています。


 このような状況において、マクドナルドが売っているものの

 魅力が薄れているのだと思います。



 健康志向の食べ物でもありませんし、

 特別に安いわけでもありません。


 セットメニューも「バリューセット」の名前ほど、

 手ごろ感はないと感じる人も多いと思います。


 日本のコンビニ弁当などは世界でも類を見ないほど

 充実しています。


 加えて、牛丼チェーン店もかなりの強豪です。


 こうした状況は日本独特のものなので、

 果たしてカサノバ氏がどこまで対応できるのか、

 一筋縄ではいかないでしょう。


 原田氏でさえ理解していなかった、

 この日本の市場環境について、米国本社は

 どれくらい理解できているのかは疑問です。


 今でも世界的に見れば、マクドナルドは非常に立派な会社ですが、

 「日本独特の競争環境」について理解して臨まなければ、

 日本を立て直すことは難しいと私は見ています。


 -------------------------------------------------------------

 ▼ スマホ、カーナビ市場の時代の流れ。ソニーは医療市場に活路を見いだせるか。

 -------------------------------------------------------------


 マクドナルドにおいて原田氏の退任が1つの時代の終わりだとすれば、

 スマホ事業から撤退するというパナソニックでも1つの時代が

 終わろうとしています。


 パナソニックは国内の個人向けスマートフォン(スマホ)事業から

 撤退する方向で最終調整に入りました。


 来年3月までに唯一の自社拠点であるマレーシア工場での生産を

 停止する方針で、販売不振で営業赤字が続いており、

 立て直しが難しいと判断したとのことです。


 今でもパナソニックは国内で290万台の携帯電話を出荷していますが、

 それでも撤退という事態になりました。


 基地局事業まで売却するということです。


 今後どこで利益を上げていくつもりなのか、課題は山積みといった

 ところでしょうが、時代の流れの中では致し方ないのかも知れません。


 先月28日、東京株式市場でカーナビゲーションシステム大手の株価が

 下落したと報じられました。こちらもほとんど同じような状況でしょう。


 JVCケンウッドとパイオニアが年初来安値を更新、クラリオンも

 年初来安値に接近。


 格安なカーナビの増加に加え、スマートフォン(スマホ)の普及により

 自動車用品店で販売するカーナビ市場が縮小。


 4~6月期はそろって営業赤字となるなど、業績悪化が

 嫌気されているとのことですが、私に言わせれば、

 未だに株価が付いていることが不思議です。


 日本のカーナビは世界的に見ても高額でした。


 海外に行けばカーナビは4~5万円で購入出来ます。


 それも今では2万円台に価格が下落しています。


 さらに次のバージョンでは、スマートフォンを車のダッシュボードに

 取り付けて、カーナビの代わりになると言われていますから、

 ますます状況は厳しくなっていくでしょう。


 また経営再建中のソニーは、ヒトゲノム解析事業に

 参入するとのことです。


 米国の遺伝子解析装置大手イルミナと合弁会社を設立し、

 製薬会社や研究機関などから受託し、イルミナの装置を使って

 解析を進める方針で、データベース化した情報の国内製薬会社への

 販売することも計画しているそうです。


 ぜひ頑張って欲しいところですが、医療関係の市場環境は、

 世界中で非常に厳しくなっています。


 また個人情報の取り扱いやモラルの問題など、

 他の市場よりも慎重にすべきことも多々あります。


 医療分野に活路を見出そうとして、ソニーが向こう岸まで

 泳ぎきれるのか注目したいと思います。



問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点