大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON474「生保年金マネー・公的年金・国内住宅事情~長期的な時間の流れで考える」

2013年7月12日


 生保・年金マネー 米ミシガン州の火力発電所を買収

 公的年金 2012年度運用益 11兆2222億円

 国内住宅事情 40歳未満の持ち家比率 25年間で14pt低下


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 ▼ 日本の年金基金は、カナダなどから学ぶべきことが多い

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 三菱商事や企業年金連合会、みずほ銀行、国際協力銀行は

 カナダの公的年金と共同で、月内に米ミシガン州の火力発電所を

 買収すると発表しました。


 買収総額は2000億円弱で、民間資金によるインフラ整備が

 世界の潮流となるなか、株式や債券以外にも投資先を探す日本の

 年金マネーを呼び込むモデルケースとなる見込みです。


 今日本では金余り状態が続いていますから、

 非常に良いことだと思います。


 欲を言えば、日本の発電所も含まれていて欲しいところです。


 カナダの年金ファンドの運用実績を見ると、

 非常にしっかりしていることが分かります。


 インフラファンドへの投資家としては、公的年金基金、企業年金基金、

 保険会社、銀行、アセットマネージャー、

 そしてスーパーアニュエーションなどがあります。


 スーパーアニュエーションというファンドは

 オーストラリア独自のファンドで、リゾートなども取り扱っています。


 ですので、年金を買った人は、安い金額でリゾート地への旅行が

 可能になることもあります。


 引退したら、こういう仕組みを利用できるのは

 大いにメリットがあるでしょう。



 世界のインフラ投資ファンドを見ても、カナダ、アメリカ、

 オーストラリアは非常に経験豊富です。


 正直、三菱商事だけでは不安です。



 カナダの公的年金と共同というのは、良い勉強にもなるでしょうし、

 非常に良いことだと思います。


 日本の年金基金の運用利回りは、カナダ、アメリカ、オーストラリア

 に比べると、まだまだ低い水準です。


 国民年金と厚生年金の積立金を運用する

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2日発表した2012年度の

 運用成績は運用利回りが10.23%と過去最高になったとのことですが、

 逆に言えば過去最高で「10%」なのです。


 過去の運用実績を四半期別に見ると、マイナスの時期もあったので

 全体の平均では10%には遠く及びません。


 GPIFが公表している名目運用利回りの目標である3.2%にも

 届いていないことも少なくありません。


 一方、カナダやシンガポールの年金基金は、

 巧妙な運用で知られています。


 アベノミクスのフェイントによって瞬間風速で10%の運用利回りは

 すごいと言われても、今年の後半まで持つのかどうかさえ

 不安に感じてしまいます。


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 ▼ 今の日本では、持ち家ではなく賃貸のほうが圧倒的にリーズナブル

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 国土交通省は2日、2012年度の国土交通白書を発表しました。


 それによると、40歳未満の若者の持ち家比率が1983年から08年の25年間で

 42.2%から28.4%へと約14ポイント低下したとのことです。


 このニュースについて、私は非常にポジティブに捉えています。


 というのは、今の日本の状況に鑑みれば、持ち家ではなく

 賃貸という選択肢を取るのは間違っていないと思うからです。


 日本は空き家の比率が13%もあり、地価は上がらない状況です。


 その上、今後人口は減っていきますから、さらに空き家は増えるでしょう。


 この状況からすれば、無理をして持ち家を買うのではなく、

 賃貸のほうが明らかにリーズナブルです。


 しかも日本はこの十数年で年収も減っています。


 無理をして持ち家を買うために、数千万円の借金を抱えるのは

 得策とは思えません。


 自分で余裕を持って支払える範囲内で賃貸を利用するほうが

 良いと思います。


 フランスでは年収の5倍、ドイツでは8倍が持ち家価格の限界と

 言われています。


 日本はかつて年収の20倍の持ち家を買っていました。


 「将来間違いなく地価が上がるから今買っておかないと損だ」という

 時代であれば、確かに多少無理をしてでも持ち家を買うほうが得策です。


 とは言え、バブル時代の日本で地価が上がり続けると思って持ち家を

 買った人達は未だにそのときの借金を抱えている人が多くいます。


 非常に不幸な財務バランスになってしまっています。


 人生の財務バランスを考えた時、大きな金額で持ち家を買って、

 いきなり大きなマイナスからスタートするのは避けたほうが

 良いと思います。


 また住む場所を固定してしまうと、何かあっても自由に動くことが

 難しくなります。


 日本では持ち家がないとクレジットカードの審査で不利になるなど

 不便な側面もありますが、それを考慮しても、今の日本では

 持ち家ではなく賃貸という選択肢のほうがリーズナブルだと思います。


 それでも人生の最後には持ち家が欲しいという人もいるでしょう。


 そのような場合には、定年退職後に避暑地などでリーズナブルな

 家を見つけると良いと思います。


 そして、定年後の20年間住む家を持つというのも

 1つの選択肢ではないでしょうか。



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