大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON472「日米関係・日ロ関係・G8首脳会談~客観的事実を理解する情報収集法」

2013年6月28日


 日米関係 オバマ大統領が日米首脳会談をキャンセル

 米ロ関係 G8会場内首脳会談

 G8首脳会談 首脳宣言を採択し閉幕


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 ▼ 米国にとって日本の重要性は大きく下がっている

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 英国・北アイルランドで開かれていた主要国(G8)首脳会議での

 日米首脳会談が「オバマ大統領からキャンセルされた」ことが

 わかりました。


 米中首脳会談の終了直後であることから、安倍首相は

 オバマ大統領と日米首脳会談を開き、強固な同盟関係を

 示す考えでしたが、オバマ大統領は

 「他国首脳との会談を優先させたい考え」だったということです。


 当初、安倍首相は2月にオバマ大統領と電話会談をした

 ばかりだったので、日本側からオバマ大統領との会談を

 断ったという趣旨の発言をしていました。


 しかし実際にはオバマ大統領から断られていたということです。


 米国の国務省は、安倍首相、石原前都知事、橋下大阪市長などが

 台頭し、日本の中枢が極右化しつつあると懸念していると聞きます。


 そのような背景もあって優先順位を下げられたとも思えます。


 TIME誌では、今回の習近平国家主席とオバマ大統領の

 米中首脳会談を高く評価しています。


 かつて中国との国交を開いたニクソン元大統領に匹敵する功績だと

 称えるほどです。


 太平洋の2代勢力として、米中が新しい時代を切り開く

 第一歩になったという論調でした。


 完全に日本はサイドラインに追いやられてしまい、

 米国の眼中にはないという事実を受け止めるべきだと思います。


 また米国とロシアの関係を見ると、オバマ大統領と

 ロシアのプーチン大統領が17日、主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)

 の会場内で約2時間会談しました。


 その中で、シリアのアサド政権存続の是非や欧米による反体制派への

 軍事支援をめぐって意見交換が行われましたが、

 議論は平行線に終わったということです。


 G7には参加していなかったプーチン大統領は、今回のG8では

 特にシリア問題について一人で総攻撃を受ける形になりました。


 見ているだけでも、プーチン大統領が相当イライラしていたのが

 分かります。


 あの延長線上でオバマ大統領と議論をしても、

 上手くいかないだろうと思います。


 シリア問題については完全に議論がかみ合わないまま終わりました。


 さらにプーチン大統領としては、戦略・核兵器の削減に関する

 オバマ大統領の提案に対して、前回の約束を半分も果たしていない

 米国に言われたくない、という思いもあったことと思います。


 この点も、プーチン大統領の気分が荒れる原因になったのでしょう。


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 ▼ 日本のメディアを見ていても、事実を客観的に理解できない

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 主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)は18日、多国籍企業の

 課税逃れを防止するルール作りなどを盛り込んだ

 首脳宣言を採択して閉幕しました。


 安倍総理大臣はサミット終了後の記者会見で

 「アベノミクスについて賛同を引き出し、北朝鮮の核と拉致問題

 について明確な立場を主張する狙いを達成し、大きな成果を

 あげることができた」と述べました。


 このニュースが日本で報道されたとき、

 私は日本のメディアのレベルはこんなにも低いものなのか、

 と呆れてしまいました。


 日本では「アベノミクスが一定の評価を得た」とされていますが、

 実態は全く違います。


 G8で安倍首相によるアベノミクスの説明を聞いた各国の首脳は、

 キョトンとしていました。


 金融、財政、成長戦略という3つは、わざわざアベノミクスなどと

 名前をつけなくても、世界の常識だからです。


 なぜ目新しい要素は何もないのに「アベノミクス」などと

 言っているのか、不思議に思ったことでしょう。


 アベノミクスが評価を受けたと報じられましたが、

 実際にはタガをはめられたと言っても良いと私は思います。


 第1の「金融緩和」については出口戦略で世界に迷惑をかけない

 ように注意を促され、第2の財政については「財政出動」ではなく

 「財政規律」をしっかりやることを約束させられています。


 日本の記者はG8の現場に行っていても、しっかりと内容を

 捉える常識がなく、またそれを吟味するスキルもないのでしょう。


 現地で配布されたブリーフィングの資料を、大本営発表

 そのままに記事にしているだけです。


 日本中の新聞で「アベノミクスが評価を受けた」と

 報じられたのですから、恐ろしい限りです。


 こうした事態は例を挙げれば枚挙にいとまがありません。


 先に紹介した安倍首相がオバマ大統領から首脳会談を断られていた

 というニュースも、海外のメディアを見れば、欧州も韓国も中国も、

 すべてオバマ大統領側から日米首脳会談を断ったと

 発表しているのに、日本だけが安倍首相から断ったと報じていました。


 日本の記者はいわゆる政治部の記者であり、ぶら下がり記者です。


 政治的な配慮や圧力もあって事実を書けないのかも知れませんが、

 それ自体が大きな問題です。


 あるいは事実を自分で入手することができないか、

 それを正しく認識することができないのかも知れませんが、

 それもまた致命的です。


 日本で流れるニュースを鵜呑みにしてしまうと、

 客観的な事実として正しく理解することはできません。


 自分自身でニュースを正しく読み解くスキルを身につけることが

 大切だと思います。


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