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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON471「人口減少問題・成長戦略・税制改正~現状を認識して解決策を考える」

2013年6月21日


 人口減少問題 2040年の生産年齢人口 2010年比23%減

 成長戦略 経営者アンケート 「成長戦略を評価」88%

 税制改正 減価償却費の「即時償却」を要望


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 ▼ 人口減に対する施策なしに、日本経済の見通しは明るくならない

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 国土交通省は11日に発表した「首都圏白書」で、2040年時点の

 東京圏の生産年齢人口(15~64歳)が2010年に比べて23%(550万人)

 減少し、高齢者人口は5割増になる見通しを明らかにしました。


 これについて、空き家の増加や介護保険施設の不足が

 深刻になると指摘。


 鉄道など公共交通網の維持も課題になると指摘しています。


 ここにアベノミクスの最大の問題が指摘されています。


 アベノミクスは日本の人口減への対処策は何も示していません。


 1000兆円の借金を抱えている国家財政を考えたとき、

 誰がこの借金を返すことができるのか?


 この点について言及しない限り、アベノミクス第2の矢である

 「財政出動」は片付きませんし、第3の矢「成長戦略」を

 実現することも当然のことながら不可能です。


 6月10日号のBusinessWeek誌には、ピンクの漫画に彩られた

 安倍総理の写真が掲載されていました。


 タイトルは「MIRACLE WORKER(=奇跡を起こす男)」でした。


 イタリアや米国などを大きく上回り、日本の借金は

 世界各国の中でも飛び抜けており、GDP比200%を超えていると指摘。


 また人口減によって、世界に占めるGDP比率も2010年の7%から

 2030年には4%、2060年には3%になると予測を掲載。


 結果、成長戦略どころか借金を返す財政戦略すらないと

 批判しています。


 この状況を打破するためには、「奇跡を起こさなければ無理」

 だろうという論調でした。


 アベノミクスの化けの皮が剥がれ、世界は日本経済に対して

 大きな危機感を抱いています。


 これを反転させるためには、かなり大胆な政策が必要でしょう。


 例えば、毎年70万人の移民を受け入れて人口減の問題に対処する、

 あるいは建築基準法を改正し規制で伸び悩んでいた建築業界を

 一気に開放する、というくらい大胆で具体的な施策です。


 しかし現状を見ていると、非常に難しいだろうと私は思います。


 というのは、この成長戦略を考えた人たちには、

 根本的な危機感が欠如しているからです。


 日本の現状について、正しく認識し危機感を持つことすら

 できていなければ、大胆な政策を打ち出すことは

 絶対にないでしょう。


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 ▼ 減価償却期間を短くすることは、かなり経済効果がある

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 経済産業省は2014年度の税制改正で、企業が新規設備を

 導入した場合に法人税負担を圧縮できる仕組みを要望する方針を

 固めました。


 これは、非常に期待できる具体的な良い施策だと思います。


 安倍総理は企業の設備投資を促す減税について

 「秋には思い切った減税を決定したい」と述べていたそうですが、

 私は以前からそれなら「減価償却期間を短くする以外に方法はない」

 と指摘していました。


 今回、有難いことに経済産業省がその施策を打ち出してくれました。

 

 「単年度償却」は税収が減るため、財務省は反対すると思いますが、

 この効果は絶大です。


 例えば、現在8年の償却になっているものを2年に圧縮するだけで、

 「税金に持っていかれるくらいなら、投資しておこう」と

 考える企業は多いはずです。


 企業経営者にしてみると、非常に有難い施策になると思います。


 日本の企業経営者と言えば、先日、日本経済新聞による

 経営者緊急アンケートが行われました。


 それによると、安倍総理の成長戦略について主要企業で

 一定の評価をする割合は計88%に達したとのことです。


 BusinessWeek誌で指摘されているようなことを少しでも

 日本の企業経営者が懸念していれば、

 このような結果にはならないでしょう。


 さらには、安倍総理が秋にも検討する追加策に

 盛り込むべき政策では、「思い切った法人減税」を挙げる企業が

 95.4%だったそうです。


 要するに、自社が払う税金を減らしてもらいたいだけ

 ということです。


 おそらく、日本の成長戦略として何をするべきか?

 自分の意見を明確に持っている企業経営者は

 ごく一部だけだと思います。


 日経新聞がこのようなアンケート結果に対して、

 何の批判もなく掲載したことも私には不思議です。


 日本の財政問題、成長戦略について、もっと現実を見つめて

 危機感を持つことが大切ではないかと思います。

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