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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON470「西武ホールディングスと大阪主要百貨店~定性情報の重要性を考える」

2013年6月14日


 西武HD

 持ち株比率35.48% 米サーベラス

 大阪主要百貨店

 阪急百貨店梅田本店 前年同月比63%増


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 ▼ 西武HDは悪しき前例を作ってしまうだろう

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 米投資ファンド、サーベラスは1日、西武ホールディングスに対する

 持ち株比率が35.48%になると発表しました。


 株式公開買い付け(TOB)の目標は下回りましたが、

 「3分の1超」で重要案件への拒否権を得ており、

 取締役を選ぶ株主総会などで攻防は続くとの見通しです。


 36%弱で止まってしまったのは、サーベラス陣営にとっては

 痛手でしょう。


 もし44%まで持ち株比率を高められていれば、万一、

 委任状争奪戦(プロキシファイト)に発展したとしても

 勝てたはずです。


 それどころか現在の持ち株比率だと、株主総会後に

 西武HDの現経営陣が第3者割当増資を実施することで、

 サーベラスの持ち株比率を簡単に薄めることができてしまいます。


 おそらく、30%を割り込むことになるでしょう。


 現経営陣はみずほ銀行出身の人達ですから、ぬかりなく

 実施してくると思います。


 私としては、この西武HDの対応を決してフェアだとは

 感じていません。


 一般的には「日本VSハゲタカ」の構図でとらえられがちですが、

 むしろ現西武HDの経営陣は怠慢であり、やるべきことを

 やっていないと思います。

 軽井沢、新宿、品川の開発など、西武HDのポテンシャルを

 活かすチャンスなど沢山あります。


 さらに言えば、私はJR東日本への売却も含め、

 西武HD改革のための提案書を西武HDにもサーベラスにも

 送ったことがあります。


 それでも西武HDは改革に着手しなかったのです。


 しかし今となっては、そのような前向きな戦略を語る

 フェーズは終了してしまったと言わざるを得ないでしょう。


 今後の西武HDの対応次第ですが、怠慢経営のツケを払わず

 金融上のテクニックでお茶を濁してごまかすという、

 悪しき前例を残すことになるだろうと思います。


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 ▼ 大阪梅田の百貨店戦争は、阪急梅田店の一人勝ち

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 大阪市内の主要百貨店が3日に発表した5月の売上高は、

 阪急百貨店梅田本店が前年同月比63.0%増となる一方、

 大丸梅田店とJR大阪三越伊勢丹はいずれも約7%減少しました。


 阪急梅田店が大阪梅田の百貨店戦争に見事勝ち抜くだろうと

 私は思っていましたが、それでもこれほどの数字が出てくるとは

 想像していませんでした。


 大阪梅田駅周辺は日本一の百貨店激戦区です。


 全ての百貨店が揃ったとき、どこが勝ち組になるのか?

 色々な人が予測をしていました。


 しかし誰一人、ここまで阪急梅田店だけが一人勝ちするとは

 考えていませんでした。


 すべての人の予測を裏切った一人勝ちだと言えるでしょう。


 阪急梅田店が63%増加する一方、大丸心斎橋店はそこそこ、

 高島屋、大丸梅田店の売上高は減少しています。


 なぜ阪急梅田店が圧倒的に勝てたのか?

 様々な理由があると思います。


 駅からの動線が重要だという人もいるでしょう。


 ただ、それ以上に私はこれまでの百貨店にはなかった「物語性」

 「イベント性」を持っていることが、阪急梅田店の最大の

 強みであり、一人勝ちできた要因ではないかと感じています。


 一度、足を運んで自分自身で体験してみることをお勧めします。


 阪急梅田店がある阪急沿線は、芦屋を筆頭に日本で最も

 高齢化が進んでいる地域の1つですが、「物語性」「イベント性」

 があるおかげで高齢者も足を運ぶ理由になっていると思います。


 また阪急梅田店は外商が強いので、そちらで売上を伸ばしている

 という側面もあるでしょう。


 全ての人の予測を裏切った、大阪梅田の百貨店戦争における

 阪急梅田店の一人勝ちは見事としか言えません。


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