大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON467「シャープ・ソニー・ダイキン・ファミリーマート~外部環境に応じた意思決定を考える」

2013年5月24日


 シャープ 高橋副社長が社長に昇格

 ソニー サード・ポイントがソニーに事業分離を提案

 ダイキン 連結売上高 1兆7600億円

 ファミリーマート 韓国コンビニ、日本離れ


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 ▼ シャープの再建に必要なこと/ソニーは事業分離提案を受け入れない

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 シャープは13日、高橋興三代表取締役副社長執行役員が6月下旬に

 社長に昇格する人事を固めました。


 同社は2013年3月期まで2期連続の巨額の最終赤字を計上しました。


 主力取引銀行から追加支援を受けることも決まっており、

 経営体制の刷新で再建を急ぐ考えです。


 率直に言って、お家騒動で揉めている現状を考えると、

 副社長が昇格する人事では再建することは難しいと思います。


 日産をV字回復させたカルロス・ゴーン氏のように、お家騒動には

 縁もゆかりもない人が来て、内部の対立に一切関係なく、

 正しいことを実行する体制を作ることが必須でしょう。


 記者会見では、2014年までに損益分岐点まで回復させると

 発表したそうですが、現在の右肩下がりの状況を

 どう打開するのか?具体的な点が見えて来ません。


 白物家電、情報機器では黒字ですが、AV通信機器も含めて

 その他多くの事業が赤字です。


 これらのことを踏まえた上で、

 こういう戦略で損益分岐点まで持っていくと言えなければ

 意味が無いと思います。


 家電業界ではソニーも非常に厳しい状況に立たされています。


 そのソニーに、米有力ヘッジファンドのサード・ポイントは14日、

 映画や音楽などの事業を分離し、米国で上場するよう提案した

 とのこと。


 ソニーはグループの一体戦略を加速させる方針で難色を示す

 公算が大きいですが、サード・ポイントは米ヤフーに取締役交代や

 戦略の転換を要求し実現したこともあり、

 今後の動向に注目が集まっています。


 私はサード・ポイントの提案は、面白い提案だと思います。


 しかし今のソニーには受け入れられないと思います。


 なぜなら、今回の提案はこれまでのソニーの戦略と正反対のものに

 なるからです。


 ソニーは様々な事業を子会社として分社化して、

 そのたびに大きな収益を上げてきました。


 そして、ソニー本体の収益が悪化したときには、

 分社化した会社を再び吸収することで、ソニー本体の収益改善を

 図ってきました。


 今は、ちょうどソニー本体に吸収したタイミングです。


 ソニーのセグメント別の業績を見ると、モバイルは赤字、

 金融はセグメント中最大の黒字、家電・音響が赤字、

 音楽・映画は黒字となっています。


 この中で音楽・映画分野を独立させて、米国で上場をさせる

 というのが今回の提案ですが、実はそれほど大きなインパクトは

 残せないと思います。


 私としてはこれらの事業を米国に持っていくのは面白いと

 思いますが、現状の数値を見せた上で大きな絵を描いて

 示してくれないと、もう1つ説得力に欠けるという印象です。


 ソニーは6月下旬に退任するハワード・ストリンガー取締役会議長

 の後任に中外製薬の永山治会長兼最高経営責任者を起用するとの

 ことです。


 ハワード・ストリンガー氏よりはよほど良い仕事をしてくれると

 思いますし、期待したいと思います。


 それでも今のソニーのメンタリティではサード・ポイントの

 提案は否決されることになると思います。


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 ▼ 順調にグローバル展開するダイキン/寝首をかかれたファミリーマート

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 ダイキン工業が示した2014年3月期の業績予想は、

 連結売上高は前期比36%増の1兆7600億円、

 営業利益は41%増の1250億円を見込んでいます。


 営業利益は08年3月期の過去最高に迫る勢いで、

 建機や自動車など日本企業が苦戦する中国市場で

 快進撃を続けていることが寄与しているとのことです。


 ダイキンと言えば、コマツと並んで日本を代表する

 グローバル企業と言えます。


 2008年のリーマン・ショックで打撃を受けましたが、

 見事に回復しました。


 ダイキンの空調事業の地域別売上高の推移を見ると、

 欧州での強さ、そして中国での拡大が光っています。


 コマツにしてもダイキンにしても、当然のことながら

 様々な経営課題は抱えていますが、日本企業の中で数少ない

 グローバル展開に成功している企業です。


 ぜひ頑張って欲しいと思います。


 14日の日経新聞では「韓国コンビニ、日本離れ」と題する記事を

 掲載しました。


 これは、コンビニ大手ファミリーマートが韓国のFC先の

 普光グループと取り組んできた韓国展開について、

 昨年6月時点で出店数7,000店超と韓国首位に立ったのを機に

 普光グループがファミリーマートからの独立を打ち出したと紹介。


 かつての電器・自動車等と同様、日本企業の技術支援を受けた

 韓国企業は途中から独立性を強め、やがて日本企業の強力な

 ライバルとなる現象がコンビニ業界でも起きていると

 指摘しています。


 ファミリーマートは韓国のコンビニ市場で圧倒的な強さを

 誇っていましたが、いわゆる「パートナーに寝首をかかれた」

 形になります。


 かつて横浜ゴムからの技術提供を受けたタイヤメーカーの

 ハンコック、ヤマハの技術提供を受けたピアノメーカーの

 サミックなどと同様、「よくある物語」の1つに

 なってしまいました。


 ファミリーマートの場合、現在展開している韓国内の

 7000店舗をどちらが運営するのか?によって話は

 大きく変わってくると思います。


 普光グループが新しくゼロから展開するのかどうか、

 この点が現時点では分かっていません。

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