大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON460「ブリヂストンと電気自動車~顧客を理解して戦略を決める」

2013年4月5日


 ブリヂストン

 ブランド戦略を見直し

 電気自動車

 EV試作第3号車「シム・セル」を発表


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 ▼ タイヤメーカーのブランド戦略が、今必要か?

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 ブリヂストンの津谷正明最高経営責任者(CEO)は27日、

 グループ全体で整合性が取れた1つのブランド戦略をまとめたいとの

 見解を示しました。


 ブリヂストンの他、ファイアストン、デイトンなど複数のブランドを

 保有していますが、地域によって混在しており、ブランド戦略を

 統一することで新興国を含めたグローバル展開を加速する方針です。


 正直、今になってなぜブランド戦略を見直す必要があるのか、

 私には理解出来ません。


 例えば、ファイアストンブランドは米国でも

 よく知られたブランドですが、特段傷ついたブランドでもありません。


 今、価格別にブランドを統一する意味があるのでしょうか?


 そもそも、タイヤにとってブランド力がどれほど重要か?

 という点について、消費者の立場から考えるべきでしょう。


 車を持っている人に、自分が乗っている車の

 タイヤメーカーを聞いても、まともに正解できる人は

 そう多くないはずです。


 車メーカーは摩擦、音、重量などを考慮して車種ごとにタイヤを

 共同開発しますから、タイヤメーカーに対する意識は高いですが、

 消費者はタイヤメーカーをそれほど気にしていないのが

 実情だと思います。



 そして車メーカーがタイヤを選ぶ際は、

 技術的な観点から厳格にそれぞれの車種にあったタイヤを選びます。


 あるいは、古くから付き合いが深いメーカーのものを

 選ぶということもあるでしょう。


 いずれにせよ、ブランド力が大きな影響力を持っている

 とは感じません。



 ブランド戦略を見直すのは結構なことですが、

 その前にお客さんとなる消費者に目を向けて考えるべきです。


 お客さんの頭にあるのは、タイヤメーカーのブランドではなく、

 車メーカーのブランドではないでしょうか?


 実際、車のシェアとその車が使っているタイヤのシェアは

 ほとんど同じになりますから、タイヤ単独のブランド力は

 ほとんど関係がないと言えるでしょう。


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 ▼ 電気自動車のポイントは、量産体制を築き上げられるかどうか

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 慶応義塾大学発電気自動車(EV)開発ベンチャーの

 シムドライブは27日、始動から4.2秒で時速100キロメートルまで

 加速できるEVの試作第3号車「シム・セル」を発表しました。


 2015年の量産をめざすとのことです。


 シムドライブは、車輪のホイールにモーターを組み込む

 「インホイールモーター」の採用による低コストなEVの量産化を

 掲げたベンチャー企業です。


 会長には、その趣旨に賛同したベネッセコーポーレションの

 福武總一郎会長が就任しています。


 今回発表されたEVの性能を見ると、ものすごい加速力で

 シムドライブの技術力をうかがい知ることができます。


 時速も最高300キロ近くに達するそうです。


 ただし、重要なのは「性能」ではなく「量産化」です。


 インドなどで量産化をする計画だと思いますが、

 果たしてどこまで「量産体制」を築き上げられるでしょうか?


 2015年を目処にしているとのことなので、

 それまでが勝負時だと思います。

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