大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON453「日本の社会人教育と東南アジアの急成長~常に学ぶ姿勢の重要性」

2013年2月15日



 BBT大学 「10年後」がキーワードのビジネス書が人気

 フィリピン経済 2012年のBPO総売上 約1兆2200億円

 インドネシア投資 外国からの投資額2012年に約2兆円



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 ▼ 大学・大学院に占める社会人の割合。OECD平均21%、日本はわずか2%

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 テレビ東京の経済情報番組ワールドビジネスサテライトで8日、

 ビジネス・ブレークスルー大学が開催した「10年後に必要なスキル」

 と題するセミナーの模様が報じられました。


 大手企業に勤務していても業績悪化でリストラをされる時代。


 グローバル化の進展で海外人材との競争も激しくなるなど、

 日本のビジネスマンは10年後を見据えて、必要な努力をする時期に

 来ていると紹介しています。


 先日、英フィナンシャル・タイムズ紙が発表した

 「グローバルMBAランキング2013」を見ると、

 1位:ハーバード、2位:スタンフォード、3位:ペンシルバニア、

 4位:ロンドン、5位:コロンビア、と続き、

 日本の大学・大学院はトップ100に1校もランクインしていませんでした。


 また大学・大学院入学者に占める社会人の割合を見ると、

 OECD加盟国の平均が21%に対して日本はたった2%です。

 

 韓国でさえ10%です。英国は20%、米国23%、アイスランドは37%です。


 OECDの平均で見ても、大学や大学院への入学者のうち5人に1人は

 社会人なので、相当数の社会人が新しいスキルを勉強するために

 大学・大学院に戻ってくるわけですが、

 日本では「1度卒業したらそれで終わり」という人が圧倒的に多いのです。


 競争力を失いつつある日本人が5年後、10年後、

 企業人として伸びていくためには2つの問題があると私は見ています。


 まず1つは、大学側に「教えるスキルがない」ということです。


 未だに日本の大学では20年前の教科書を使っていますし、

 今の日本の大学の先生には教えられるスキルがありません。


 もう1つは、学生側(社会人)に「学校に通ってもっとスキルを学んでいく」

 という発想がないことです。


 ほとんどの日本の社会人は、大学を卒業したら

 後は自分で努力することが全てだと思っています。


 日本の社会人の中で、英語でリーダーシップを取れる人は

 どのくらいいるでしょうか?


 あるいは、複式簿記の計算ではなく、実際に企業買収の現場で

 使えるような企業価値の算出方法を知っている人が

 どのくらいいるでしょうか?


 こういう実践的なスキルを教えてくれるビジネススクールは

 日本にはほとんどありませんが、海外にはたくさんあるのです。


 だから、オーストラリア、米国、カナダに行けば、

 この程度のスキルを身に付けている人はたくさんいます。


 大学の学位と職業が密接に結びついていると言えると思います。


 「社会に出たら、上司の言うことを我慢して聞いていればいい」

 そんな時代はとっくに終わっています。


 私は十数年間社会人教育を行なってきました。


 まだまだ日本の天井が高く伸びる可能性があるという点で

 期待できる反面、それでもなお日本人は「鈍い」と感じざるを得ません。


 大学や大学院で勉強する社会人が増えると、

 かなり状況は違ってくると思います。


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 ▼ フィリピン、インドネシアの経済が好調

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 フィリピンビジネス・プロセス協会がまとめた統計によると、

 2012年BPO関連の総売上は、およそ134億ドル(約1兆2200億円)で

 GDPの6%に達したことが分かりました。


 最初にフィリピンのマカティでBPO事業が立ち上がったのは、

 米国の某銀行向けのコールセンター業務でした。


 私の友人でもあるマレーシア人が立ち上げた事業です。

 

 その友人から「フィリピン人の英語のほうが、インド人に比べて

 米国人に抵抗がないので、フィリピンでコールセンターを作る」と

 話を聞かせてもらいました。


 私はすぐにフィリピンのそのコールセンターを見に行きましたが、

 確かに素晴らしいコールセンターでした。


 当初は数千人の規模でスタートしたフィリピンのBPO事業は、

 2年後には5万人に増え、今では60万人に達しています。


 2016年の売上高は約250億ドルと見込まれています。


 こうしたBPO事業が広がり、フィリピンでは優秀な人材が

 「出稼ぎ」に行く必要がなくなりました。


 今後は、人件費も上昇し競争も激しくなってくると思いますが、

 人口9000万人のフィリピンはまだ飽和していないと私は感じます。


 フィリピンはインドとは違った強さを示しています。


 フィリピンと同様、経済の好調さが伝えられているのがインドネシアです。


 インドネシア投資調整庁は22日、2012年の外国からの投資額が

 前年比26%増の221兆ルピア(約2兆円)となり過去最高を

 更新したと発表しました。


 鉱業や自動車、化学分野の投資が好調で13年は「23%増」の

 273兆ルピアを目指すとのことです。


 ASEANの中でも特に「優良児」と見られているのが、

 VIP(ベトナム・インドネシア・フィリピン)の3カ国です。


 インドネシアの直接投資の受け入れ状況を見ると、

 シンガポール、日本、韓国と続きます。日本の2012年の投資額は

 かなり大きくなっています。


 また韓国も近年急激に数字を伸ばしていることが分かります。


 日本は自動車産業を中心に投資していますが、

 インドネシア全体で見ると、鉱業、交通、化学、エレクトロニクス、食品など

 あらゆる分野で、その有望さが伺えます。


 先日私の友人がインドネシアに行った時にも、

 空港や高速道路の建設が始まっていて活況だったそうです。


 ユドヨノ大統領の後任が誰になるかによって今後の方向性が変わる

 可能性はありますが、現時点で言えば、インドネシアとフィリピンの

 経済の好調さは日本にとっては非常にありがたいことだと思います。


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