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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON452「自民党政権とアベノミクス~価値ある情報を理解する」

2013年2月8日


 2013年度予算案

 一般会計総額92兆6115億円


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 ▼ 安倍政権の問題は、外交ではなく「アベノミクス」

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 政府は先月29日、2013年度予算案を閣議決定しました。


 一般会計総額は前年度比0.3%減の92兆6115億円で、

 7年ぶりに前年度を下回り、新規国債発行額は前年度より

 1兆3930億円減少。


 安倍政権にとって最重要の課題である景気のテコ入れに

 軸足を置いたものということです。


 一般会計総額が減少と言っても、2013年度予算は

 12年度の補正予算と組み合わせた15ヶ月分の予算ですから、

 単年度で減少したという今回の見せ方はイカサマに近いと思います。


 安倍政権について安倍首相のいわゆる「右翼」傾向の強さと

 それに伴う外交問題が懸念されてきましたが、1月28日号のTIME誌には、

 本当の問題は「アベノミクス」にあると指摘する論文が掲載されていました。


 日本では「株価上昇」と「円安」のおかげでアベノミクスを

 礼賛する声が大きいようですが、私はTIME誌に賛成です。

 何度か指摘しているように、アベノミクスは古い経済学に基づくものであり、

 現実的な成果を生むことは考えにくいと思います。


 また内閣支持率が60%を超え、発足時から上昇しています。

 この点について期待感を持つ国民も多いと思います。


 おそらく、この支持率は今年の夏の参議院選挙まで

 さらに上昇していくでしょう。


 しかし、これまでの約20年間の自民党と民主党政権が

 「ひどすぎた」反動という側面も否めないと私は感じます。


 青島幸男氏の次に石原慎太郎氏が都知事になったとき、

 石原氏に期待感を抱いてしまった東京都民の状況と似ています。


 過去に細川政権が発足後、順調に支持率を伸ばし、

 数ヶ月で歴代最高の92%に達したことがありましたが、

 その3ヶ月後には退陣記者会見を開いていました。


 歴史的に見れば高い支持率などというものは儚いものであり、

 それほど重要視しても仕方ないと思います。


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 ▼ 参議院選挙の勝利のために、信念を封じる安倍総裁

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 首相就任前は中国や韓国に対する教鞭な姿勢を示していた安倍首相ですが、

 最近の動向を見ていると、ややブレーキがかかっているように

 感じる人も多いでしょう。


 外交問題にかぎらず、日銀についての強い姿勢も緩やかになっています。


 これは全て参議院選挙をにらんだものだと私は思います。


 今、安倍政権としては高い支持率の後押しを受けて、

 その勢いのままに参議院選挙で圧勝したいところでしょう。


 そして、それは現実的に大いに有り得ることです。


 逆に今の勢いを見ていると4~5ヶ月で反転することは想像しにくい状況です。


 参議院選挙で圧勝できれば、「ねじれ国会」は解消され、

 自民党のやりたい放題になります。


 そのまま憲法改正にまで踏み込んでいくつもりだと思います。


 今、中国や韓国と揉めても参議院選挙にマイナスになるのなら

 避けるべきで、従来発言してきたことや信念を封じても、

 「参議院選挙に勝つことを優先すべき」と安倍首相が判断しているのだと思います。


 その後の安倍首相について、長い間自らの信念などを封じていると、

 安倍首相が「ニクソンになる可能性」もあると私は思います。


 当時、「反共の闘士」として有名だった米ニクソン大統領が、

 電撃的に中国を訪問し国交を樹立したことに世界は驚かされました。


 安倍首相も、個人的な思考として「右翼」傾向が強いのは確かです。


 しかし、もしかすると自分自身を「偉大な政治家」の

 イメージと重ねあわせて、ニクソン元大統領のように

 態度を変化させる可能性があるのではないかと思います。


 ひとりの日本国民としては、安倍首相が偉大な政治家へと

 転身してくれることを願いたいところです。


 今の安倍首相に「トップとしてのイメージ」がどれだけ備わっているのか

 分かりませんが、「右翼」傾向の強いひとりの政治家で終わらず、

 偉大な政治家としてのイメージに置き換わってもらいたいと思います。

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