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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON451「サムスン電子とシャープの動向~競合分析の重要性を考える」

2013年2月1日



 サムスン電子

 2012年年間売上高 約16兆5,000億円

 シャープ

 南京の液晶テレビ向上 レノボ売却で交渉




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 ▼ スマートフォンで利益を上げるサムスンと、乗り遅れた日本勢

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 韓国のサムスン電子は8日、2012年の年間の売上高が

 前年比約22%増の約16.5兆円、営業利益が約86%増の約2.4兆円になった

 と発表しました。


 いずれも1969年の創業以来、史上最高額。


 売上高はIT企業としては、米アップル社などを上回り、

 3年連続で世界最高となる見込みとのことです。


 同じく業績が順調な台湾の鴻海精密工業の売上高が約10兆円ですが、

 鴻海の場合には約50%はアップルに依存しています。


 サムスンは自社ブランドで自社の店舗で展開している強みがあると言えます。


 四半期ごとの業績推移を見ると、この2年間の伸びは素晴らしいものがあり、

 今は利益だけで2兆4000億円という規模になっています。


 日本のすべてのエレクトロニクスメーカーの利益を足しあわせても、

 この金額には届きません。


 日本勢はまるで歯がたたない状況です。


 2007年4月~2012年11月でシャープ、パナソニック、ソニーの

 3社が失った時価総額は、約14兆円にのぼります。


 もはや世界で戦えない状態だと言わざるを得ないと思います。



 サムスンの利益の大半をたたき出しているのが、

 半導体とスマートフォンです。


 テレビはさすがに厳しい状況です。


 10兆円を超える売上高の規模で営業利益を86%も増加できたのは、

 利益率の高いスマートフォン事業のおかげです。


 この点を見ても、スマートフォンに乗り遅れてしまった日本勢の挽回は、

 本当に厳しいでしょう。


 日本メーカーの悩みはかなり深刻な状況です。 


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 ▼ シャープの解体が始まり、鴻海は販売に乗り出す

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 経営再建中のシャープが中国・南京市の液晶テレビ工場を

 中国のパソコン最大手レノボ・グループへ売却する交渉を進めている

 ことがわかりました。


 マレーシアのテレビ工場についても台湾の電子機器の

 受託生産大手・ウィストロンなどと売却交渉を始めている模様で、

 海外工場の売却により資産の現金化と固定費削減を急ぐ考えのようです。


 苦戦する日本メーカーの縮図を見るようです。


 すでに堺の工場を鴻海に売却していますが、

 本格的にシャープの解体が始まりつつあるのだと思います。


 一方で、鴻海は最近になって自社製品の生産・販売に乗り出しています。

 

 台湾の傘下の家電量販店で60型の液晶テレビの発売を開始しています。


 これまで自社ブランドを持って販売することはなく、

 製造に徹してきた鴻海が自社ブランドで販売を手がけるようになると、

 今後かなり影響は大きいかも知れません。


 これからどのような展開を見せるのか注目したいところです。


 アップルとの関係性を考えてみると、スマートテレビの領域は

 アップルも手がけているので、鴻海が乗り出してくるとアップルは

 難色を示すと思います。


 逆に、伝統的なこれまでの液晶テレビなどであれば問題なく

 展開できるでしょう。


 鴻海が参入してくると、かなりの低価格を実現できるでしょうから、

 サムスン含めてテレビ事業ではさらに苦戦すると思います。


 ただし、これまでに販売の経験はありませんから、

 鴻海に「売る力」があるのかどうかは疑問です。


 安さを前面に押し出して、「安く作って安く売る」

 ということしかできないと思います。


 それでも一部量販店では大きな力を持つ可能性はありますが、

 最終的にどこまで成功するのかはわかりません。

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