シャープ 米インテルと資本提携交渉
ルネサスエレクトロニクス 国内官民共同出資案が浮上
日本経済 「2050年の世界」がベストセラーに
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▼ シャープもルネサスも、生き残りには厳しい道のり
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シャープが、半導体世界最大手の米インテルと資本提携に向けて交渉を
進めていることが明らかになりました。
インテルはシャープの中小型液晶パネルの技術を高く評価しており、
自社製半導体を使ったスマートフォンなどの協業相手として有望視。
インテルがシャープに300億円超を出資する方向で協議しており、
早ければ10月中にも合意したい考えとのことです。
シャープの現在の株価に対して300億円の出資をすると、
持ち株比率で10%を超えます。
ただしインテルの狙いは資本提携ではなく、中小型スマートフォンの液晶パネル
にインテルのチップを組み込むという技術レベルの提携にあるとも聞きます。
技術レベルの提携であれば、本来あえて資本を入れる必要はありませんが、
今はシャープが資金を必要としているので、特別な状況だということでしょう。
インテル以外にも様々な企業がシャープに提携の打診を始めているようです。
では、液晶技術に絞ってシャープが生き残っていけるのか?
と言うと、難しいと思います。
もともとシャープは総合家電メーカーですから事業をバラバラにしても
ダメですし、液晶事業は赤字事業の最たるものですから、
その点で考えても厳しいでしょう。
また、経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスを支援するため、
官民ファンドの産業革新機構と国内自動車メーカーなどによる共同出資案が
浮上していることが明らかになりました。
年内をめどに総額1000億円超を集め、株式の過半数を握ることも視野に入れ、
出資を提案している米投資ファンドに対抗し、国内資本を軸に
再建を進める狙いとのことです。
ルネサスエレクトロニクスという会社は、マイコンの世界シェアが高く、
自動車関連には非常に強いという特徴があります。
この強い部分を欲している企業はたくさんいますが、コスト構造が悪く
利益が上がらない工場が目の上のたんこぶになっています。
誰かがこれらの工場を整理してくれれば、多くの企業が手を上げてくると思います。
台湾のTSMCもルネサスを虎視眈々と狙っていると思いますが、今自ら積極的に
動かなくても、KKRにせよ産業革新機構にせよ、結局はエグジット戦略として
最終的にはTSMCに売却せざるを得ない状況になるかも知れません。
そして、ルネサスエレクトロニクスの再興にあたって重要なのは、
「誰が」経営するのか?ということです。
KKRであれば優秀な経営者を連れてくるとおもいますが、
産業革新機構の場合には相当怪しいと私は感じています。
現在のごたごたした状況を統合し、リーダーシップを発揮できる人がいなければ、
何をしてもお金の無駄になってしまうでしょう。
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▼ 2050年の日本は「暗たんたる状況」に陥っている
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イギリスの経済誌『エコノミスト』編集部がまとめた『2050年の世界』が、
発売1か月で4万部を超え、ベストセラーになっています。
『エコノミスト』誌といえば、1962年に「驚くべき日本(Consider Japan)」
という特集を組み、日本が世界第2位の経済大国に成長していくストーリーを的中
させていますが、今回は日本が世界史上最も高齢化の進んだ社会になると予測。
国家間の貧富の差が縮まっていく中、相対的に地位を下落させていく
先進国の中でも、とりわけ日本は「暗たんたる状況」と分析しています。
エコノミスト誌は日本について他にも様々な予測を発表しています。
今回の件について私の率直な感想を言えば、「日本が繁栄する」理由は
今のところ全くありませんから、当たり前だ、ということです。
日本政府も2050年の人口動態を発表していますが、3人に1人が高齢化し、
その高齢者を支える税金も労働力もないという状況です。
エコノミスト誌の予測を聞くまでもなく、世界で最高に高齢化が進んだ社会で、
「どうやって日本という国を運営していくのか?」というのは明白な
大きな課題です。
しかしながら今回の自民党の総裁選で、この問題に言及している人は
いませんでした。これが日本の厳しい現状だと思います。
新しい国家像を創り、そこに向けて進んでいかない限りは、エコノミスト誌が
指摘するような「暗たんたる状況」になってしまうのは避けられないでしょう。