大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON424「マイクロソフトとグーグル・ヤフー ~情報の裏側を考える」

2012年7月27日

 マイクロソフト 最終赤字386億円
 米ヤフー マリッサ・メイヤー氏を新CEOに起用
 米グーグル 純利益2190億円


 -------------------------------------------------------------
 ▼ マイクロソフトが、「初の赤字」を受け入れた本当の理由があるはず
 -------------------------------------------------------------


 米マイクロソフトが19日発表した4~6月期決算は、最終損益が
 4億9200万ドル(約386億円)の赤字となり、1986年の上場以来、
 四半期ベースで初めて赤字となりました。


 2007年に約63億ドルで買収したインターネット広告会社の「のれん代」を
 減損処理したことが響いたということです。


 なぜ5年前の買収に関わる「のれん代」を、今このタイミングで
 一括減損処理する必要があるのか?


 このニュースを見る限りでは、理解することができません。


 マイクロソフトの業績推移を見ると、売上も鈍ってきていて利益は
 大幅な赤字に転落していますが、今回の減損処理を除けば、
 それほど悪い数字ではありません。


 もしかすると、買収そのものが上手く機能しておらず、会計事務所から
 一括精算をするよう指導された可能性はあるでしょう。


 しかし私の経験から言えば、それでも「のれん代」を複数回に分けて
 少しずつ計上することはできたはずです。
 
 しかも、1986年の上場以来、四半期ベースで「初の赤字」になるという
 のですから、普通に考えれば初めての赤字を避けようとするはずです。
 
 そう考えてみると、おそらくこのニュースでは語られていない「何か」が
 あるのでしょう。
 
 今期、一括でのれん代を償却する理由となる「何か」についての
 「情報」が欠けているのです。
 
 -------------------------------------------------------------
 ▼ 業績好調のグーグルにも、何か表に出ていない事態が起こっている
 -------------------------------------------------------------
 
 米グーグルが19日発表した4~6月期決算は、純利益が前年同期比11%増の
 27億8500万ドルでした。


 買収効果で売上高が122億1400万ドルと同35%増加。


 主力のネット広告も好調で、収益拡大に寄与したとのことです。
 
 エリック・シュミット会長は12日、病気で休養しているラリー・ペイジ
 最高経営責任者の症状は回復しつつあり、9日にはオフィスに姿を見せたと
 明らかにしました。


 私はこのニュース記事を読んで、先のマイクロソフトと同様、
 まだ明かされていない何かがグーグルに起こっているのではないか?
 と感じました。


 エリック・シュミット会長は、ラリー・ペイジCEOが回復したと
 発言していますが、グーグルの株主総会にラリー・ペイジCEOは
 出席していません。


 グーグルの業績は好調そのもので、売上も純利益も順調に伸びています。
 
 しかし、何かしらの社内の軋轢があるのではないか?
 それが情報として開示されていないのではないか?
 と疑ってしまいます。


 私がこのように感じるもう1つの理由は、グーグルの女性エンジニア、
 マリッサ・メイヤー氏が、空席が続いていた米ヤフーの最高経営責任者に
 就任するというニュースを知ったからです。


 メイヤー氏はグーグルの創業期から同社を支えたエンジニアで、
 創業者コンビやエリック・シュミット会長と並んで同社の顔ともいえる
 存在でした。


 R&Dのゲートキーパーと言われた人物で、世界中から寄せられる無数の
 新サービスのアイディアについて、メイヤー氏が厳しい審査を
 行っていました。


 検索エンジンの技術を始め、Gmailなど100個以上の機能やサービスを
 立ち上げたと言われています。


 経営者・CEOとしては未知数ですが、研究開発の判断力は
 ずば抜けたものがあるのは間違いないでしょう。


 メイヤー氏は莫大な資産を持っていますから、今さら給料に惹かれて
 ヤフーへ行くということはまず考えられません。


 するとグーグル経営陣のトップで何か問題が起きているのではないか?
 その結果、メイヤー氏にとって面白くない状況が生まれているのではないか?


 そして、今のグーグルの延長線上には「チャレンジ」がないと
 判断したからではないか?と私は推測しています。


 今回のマイクロソフト、グーグル、ヤフーのようなニュースを読んだ時、
 そのまま鵜呑みにするのではなく、論理的に考えることで
 「出揃っていない情報があるはず」ということに気づけるように
 普段から訓練してみて欲しいと思います。
 


問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点