大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON394「相次ぐトップの不祥事~ガバナンスを機能させる仕組み作りを」

2011年12月23日

 オリンパス
 隠蔽体質を厳しく批判
 大王製紙
 トーマツが会計処理の誤り指摘


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 ▼コーポレート・ガバナンスを機能させるために必要なことは?
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 オリンパスの損失隠しの実態を調べていた第三者委員会が、調査報告書を
 同社に提出しました。


 損失隠しは歴代社長ら「トップ主導で秘密裏に行われた」きたとして、
 隠蔽(いんぺい)体質を厳しく批判。問題を見過ごした経営陣の一新や
 関係者に対する法的責任の追及を求める内容となっています。


 オリンパスの高山社長は、
 「当面の危機対応や再建に目処がついた時点で現役の役員は全員退陣する」
 と表明しています。


 この第三者委員会というのはストレートにモノを言い、
 今回の調査に関して言えば短い時間の中で非常に良い仕事をしたと思います。
 ウッドフォード元社長の動きも、評価に値するものでした。


 ただ敢えて言えば、オリンパスの体質を「サラリーマン根性の集大成」と
 批判していますが、この表現は的確ではないかも知れません。


 一般的にサラリーマン根性というのは、「雇われる側(立場)」として、
 前任や後任に責任を押し付けて「責任逃れ」をする性質を揶揄して使う
 言葉です。


 今回の場合、単なる責任逃れというレベルではありません。
 明確に犯罪意識を持っていて、それを隠そうとしているのですから、
 「完全なる会社の私物化」だと思います。


 またここには優良会社を潰してしまうほどの「悪意」と「判断ミス」が
 折り重なっているとも感じます。


 この事件を機に「コーポレート・ガバナンスをどのように機能させるのか?」
 という問題を改めて考えるべきでしょう。


 これまで語られてきた言葉の上での「コーポレート・ガバナンス」では
 不十分だということが、実際の事例を見れば明らかです。


 東証が指導している「コーポレート・ガバナンス」で言えば、
 内部の人間だけで役員を固めるのではなく、外部の人間に取締役や監査役を
 任せることで、その効果が発揮されると解釈されています。


 しかし実際には、社長が人事権を持っていてその社長から任命された
 外部取締役や監査役では十分に社長を牽制できません。


 自分を任命してくれた社長に対して、「何年も赤字が続いているのだから
 責任をとって退任するべきだ」と指摘できている人など、まず見かけません。


 外部役員だけでなく、女性役員を増やしましょうという対応も
 全く機能していないと私は思います。


 日本のある有名企業を見れば、取締役には外部役員も女性役員もいますが、
 何年もある事業分野で赤字を出し続けているにも関わらず、
 一向に社長の責任を追求していません。


 コーポレート・ガバナンスを機能させるためには、「経営者としての適性」
 「最低限の常識」「適切な判断力」などが備わっているのかどうかを見極める
 ことが、まず一番大切だと思います。


 経営者にこのような資質が欠けていたら、いくら「仕掛け」として
 外部役員の数を決めようと意味はないでしょう。


 ゆえに形の上だけで「コーポレート・ガバナンス」を唱えるのではなく、
 常識や判断力のある人を選定していくプロセスを確立することが重要だと
 思います。
 そして「仕掛け」としては、何か問題が発生したときにそれらが表に出てくる
 ようなものを用意するべきだと思います。


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 ▼トーマツは保身のためだけに、大王製紙の会計処理の誤りを指摘した
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 大王製紙は12日、監査法人トーマツから過年度決算に関する会計処理について
 誤りがあるとの指摘を受けたと発表しました。


 繰り延べ税金資産の計上額など会計処理の誤りが5項目見つかったと
 いうことで、2007年3月期から11年4-6月期まで5年分強の有価証券報告書や
 決算短信を訂正するということです。


 この発表はトーマツが保身のためにとった行動で、率直に言えば「卑怯」だと
 私は思います。


 オリンパスの監査を担当していた「あずさ監査法人(2009年3月期まで)」
 「新日本監査法人」が共に様々な批判を受ける中、日本三大監査法人の
 一角である「トーマツ」が今度は大王製紙の監査について矢面に立とうと
 しています。
 これは非常に厳しい状況だと言わざるを得ないでしょう。


 しかしだからと言って、5年遡って調べたところ「大王製紙の」会計処理が
 間違っていた、と指摘するのは明らかにおかしいと思います。


 その間もトーマツが監査を行なっていたわけですから、
 「自分たち(トーマツ)の監査に誤りがあった」と言うべきです。
 その上で、過去4年分の誤った会計処理を見過ごしてしまったため、
 今年は適正報告が書けませんというのが筋ではないでしょうか。


 しかも今回の指摘事項は、井川前会長の事件とは関係がない部分であり、
 その影響で連結最終赤字に転落するというのですから、とんでもない事態です。
 自分たちの監査の甘さについては何も触れず、大王製紙の会計処理に誤りが
 あったなどと言うのは、本当にひどい話だと思います。


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