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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON391 「オウム真理教刑事裁判終結~テロ集団としての分析・研究をもっと進めるべき」

2011年12月2日

 オウム真理教裁判
 オウム刑事裁判が集結
 1995年から16年


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 ▼政府はオウム真理教の事件をもっと深刻に受け止めて、原因追求すべし
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 地下鉄サリン事件で殺人罪などに問われて1、2審で死刑とされ、
 オウム真理教事件の刑事裁判で最後の被告となった元幹部遠藤誠一被告の
 上告審判決で、最高裁第1小法廷は21日、被告側の上告を棄却しました。


 これにより、松本智津夫死刑囚らに続く13人目の死刑が確定し、
 95年3月の教団への強制捜査から16年8カ月を経て、一連の刑事裁判が
 事実上全て終結します。


 日本では一連のオウム真理教関連の事件について、
 「この件の殺人、あの件の殺人」というように個々の事件を扱っていますが、
 私は「オウム真理教=国家転覆を企んだテロリスト集団」という捉え方を
 するべきだと思っています。


 実際、米国ではそのような認識のもと、未だにオウム真理教に関しての
 研究が続いています。


 オウム真理教とは宗教の名を借りたテロリスト集団だったのです。
 テロリスト集団はよく化学兵器を用いたり核兵器を狙ったりしますが、
 オウム真理教がやったことは全く同じだと分かります。


 弁護士一家殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件などオウム真理教が
 引き起こした事件は、死傷者数も多い凶悪な事件であり、明らかに国家転覆を
 狙った世界的に見ても例がない事件だと言えると思います。


 日本政府が本気でオウム真理教が引き起こした事件の再発防止を考えるなら、
 彼らは宗教に傾倒した「狂信者集団」ではなく、テロリスト集団だったと
 強く認識するべきだと思います。


 その上でもっと深刻に「なぜオウム真理教のような集団が生まれてしまったのか?」
 という原因を分析し、「結果として彼らの事件を許容してしまった日本の警察に
 ぬかりはなかったのか?」という点を突き詰める必要があると思います。


 国家・社会に対する脅威の芽を摘むためには、もっともっと掘り下げて欲しいと
 私は感じています。


 あの地下鉄サリン事件が発生した95年、私は東京都知事選挙に立候補していました。
 その際、「都知事候補もオウム真理教の標的に入っているから注意してください」と
 その筋から警告を受けていました。


 実際、私はガードマンを雇って1年間防弾チョッキを着て過ごしました。
 そのくらいオウム真理教については「リアル」な体験をしました。


 オウム真理教という組織の特徴として興味深かったのは、彼らがまるで
 事業部制のように別々に動いたと思われる点です。


 化学兵器の開発に協力させるために拉致する部隊と、粛清という名のもとに
 殺害する部隊が個別に動いていた節があります。片方の組織が「拉致」しようと
 している人物を、もう片方の組織が「殺害」しようとしている、
 そんなケースがあったようです。


 今回の判決で、殆どの主犯格の人物の死刑が確定しました。
 しかし、これで一件落着ではありません。
 残党が同じようなことを起こさない様に、そして二度と同じようなことが
 起きないように政府には徹底的に原因究明をしてもらいたいと思います。


 繰り返しになりますが、彼らは宗教団体ではなくテロリスト集団です。
 「自分たちの言うことを聞かないのなら、殺してしまえ」というのは、
 完全に宗教から逸脱しています。


 政府には、ぜひこの点を重く受け止めて、もっと厳しい目でこの事件を
 見なおしてもらいたいと強く感じます。


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