大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON385 「ソフトバンク~企業を取り巻く環境の変化と戦略」

2011年10月21日

 米ヤフー
 日本ヤフー株放出の可能性
 ソフトバンク
 自社株取得枠を設定 上限119億円


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 ▼米ヤフーの動向を見据え、孫社長が考えていることとは?
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 米ヤフーが日本のヤフー株を放出するのではないかとの観測が再浮上しています。
 英フィナンシャル・タイムズ紙が7日、米ヤフーの事業再構築の一環として
 数週間以内にも放出の可能性があると報じました。


 これはマイクロソフトが買収するという話につながりますが、これを受けて
 日本ヤフーの筆頭株主であるソフトバンクの孫社長は、
 どのように対応するでしょうか?


 現在の日本ヤフーの株主構成を見てみると、ソフトバンクが35.45%で筆頭株主、
 続いて米ヤフーが34.75%となっています。


 さらにソフトバンクの子会社であるSBBMが6.42%所有しているので、
 実質的にはソフトバンクが40%以上の比率を抑えていることになります。


 ソフトバンクとしては、米ヤフーが大量の株を保有している限り、
 台所事情が苦しくても今の地位を維持して発言権を確保しなければならない
 と考えていると思いますが、米ヤフーが株を大量放出するとなれば、
 絶好のチャンスだと言えます。


 米ヤフーが株を放出した場合、続いて保有比率が高いのは
 日本トラスティ・サービス信託銀行という年金ファンドですが、
 わずか2.95%に過ぎませんからソフトバンクの相手ではありません。


 そして、これを機会に孫社長なら株を買い増す戦略を取る可能性は
 十分にあると私は見ています。


 このタイミングで買えるだけ買っておいて、後で売却すれば良いからです。
 極端な言い方をすれば、拒否権を確保できる33.4%を保有していれば、
 それ以外はゆっくりと売却していけばいいのです。


 経営は日本ヤフーの井上社長に任せながらも、米ヤフーという存在が
 あるかぎりは孫社長としては乗っ取られないように常に気をつかって
 きたはずです。


 その状況を打開できるチャンスであり、将来株を売却することで相当な
 利益さえ見込めます。孫社長がこの機会を見逃すはずはなく、
 おそらく孫社長の頭にはこのようなシナリオが描かれていると思います。


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 ▼ソフトバンクにとって通話領域の狭さは致命的
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 ソフトバンクは28日、取得総額119億円を上限とする自社株取得枠を
 設定すると発表しました。


 KDDIが米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone」を
 発売すると22日に報じられたのを受け株価が急落しており、
 株主への利益配分を増やし株価のてこ入れを図る考えです。


 今回のKDDIによるiPhone市場への参入を見ていて、もう少し値段設定を
 工夫するべきだったと感じました。


 ユーザーのソフトバンクへの不満の最たるものは、通話領域が狭いことで、
 その点においてKDDIのほうが強みを持っています。
 この強みを生かして、同じくらいの価格設定にしていたら、
 もっとソフトバンクからの乗り換え需要を喚起できたかもしれません。


 今ソフトバンクの株価は安定しています。孫社長はビル・ゲイツ会長と
 仲が良いですから、もし日本ヤフーをマイクロソフトが買収したら、
 何かしらの事業展開に発展する可能性はあるでしょう。


 とは言え、現在の状況は来る「iPhone5」までの場繋ぎ的な意味合い
 しかないとも言えます。iPhone5では完全にSIMフリー化されると
 言われていますから、おそらくNTTドコモが参入してくることになります。


 NTTドコモが劇的に安い価格帯を設定してきたら、ソフトバンクは
 かなり厳しい立場に立たされることになるでしょう。
 そうした状況を想像すると、やはりソフトバンクにとって
 「通話領域が狭い」というのが致命的になる可能性は高いと思います。


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