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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON382 「復興財源と国内産業支援~財務省寄りの考えを改め適切な策を打つべき」

2011年9月30日

 復興財源
 所得・法人税にたばこ税を追加
 国内産業支援
 第3次補正予算案に3000億円補助金盛込み


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 ▼すぐに消費税を使って復興を開始するほうが良い
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 民主党税制調査会の藤井会長は18日、東日本大震災からの復興財源に充てる
 臨時増税について、政府税制調査会がまとめた増税案の税目以外も検討する
 考えを示しました。


 先に野田首相が消費税増税案を外すよう指示したことを受けたもので、
 所得税などの増税幅を圧縮したい考えです。


 野田首相の言葉を借りると、「消費税は社会保障と税の一体改革の際に
 考える税目であり、復興財源とは別にした方がいいのではないか。」
 とのことですが、この判断は財務省の意向を反映したものであり疑問です。


 現在の国民感情からすると、消費税だけ早めに増税という形をとっても
 国民の納得を得ることができると思います。


 早いタイミングから消費税の増税を開始し、その分を早く復興財源に
 充てたほうが得策ではないでしょうか。


 その上で2015年からは消費税を10%にするということで、
 全体としての数字も辻褄が合うでしょう。


 たばこ税と相続税と法人税と所得税で対処するとの姿勢を見せていますが、
 法人税の税率を40%から35%に変更するのは「数年後から」という辺りが
 理解に苦しみます。


 これらの決定は、野田首相自らが財務省の代弁者としての立場にいることを
 表すようなもので、一国の首相が示す態度・姿勢としてはマイナスの印象
 を与えてしまうと思います。これは非常に残念なことです。


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 ▼現場を知ること。議員は積極的に工場見学をすべし
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 野田首相は19日、円高に苦しむ企業の国内投資を後押しするため、
 2011年度第3次補正予算案に、3000億円規模の雇用創出産業立地補助金を
 盛り込む考えを明らかにしました。


 また首相は同日、日産自動車工場や東京都大田区の自動車部品関連工場
 を視察し、中小企業向け支援を強化する方針を示していました。


 野田首相は工場の視察を終えた後、「現場を目の当たりにし、小説より
 はるかにリアリティを持って、こういう人たち、こういう仕事を支えて
 いかなければならないと実感した」と述べたとのことです。


 理想を言えば、首相になる前に100カ所くらい工場に足を運んで現場を
 見ておいてほしかったと思います。私はかつてパナソニックの工場を
 見学したことがありますが、やはり現場を見ていると感じるものがあります。


 テレビの組立工場を見学した時、工場のラインで働いているスタッフが、
 普通なら片手で1つずつ処理するところを、両手に工具を持って次々と
 処理していく様を見て、私も驚愕した覚えがあります。


 また2011年度第3次補正予算について、野田首相は日産のカルロス・ゴーン社長
 らと意見交換した後、「日産の電気自動車のモーター開発は補助金によって
 支えられたということだったので、2010年度予算で計上した1400億円の
 倍以上積み上げるくらいの措置を取らなければいけない」と述べたそうですが、
 カルロス・ゴーン社長に上手く利用されたという感が拭えません。


 もう少し、重く判断するべきだと思います。


 中国の工場に行くと、入り口には過去にその工場を訪れた要人の写真が
 飾ってあることが非常に多く、それだけ政治家も足を運んでいるということ
 でしょう。


 これは他の代議士に対しても言えることですが、産業政策を押し進める立場に
 あるなら、現場を知ることは非常に重要であり、工場見学などはうってつけの
 好機だと思います。


 議員になってからでも遅くは無いので、是非現場に直接赴き、実感する場面を
 自ら積極的に持っていただきたいと思います。


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