大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON354「東北地方太平洋沖地震~復興のための消費税「1%」増で「強い日本」に!」

2011年3月18日

災害対策
衆参両院の国会審議を取りやめ
与野党
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 ▼万一に対応できる街づくりを設計思想に取り入れるべき
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 11日の東北地方太平洋沖地震を受け、与野党は14日の衆参両院の
 国会審議をすべて取りやめる方針を固めました。


 14日に衆院災害対策特別委員会の理事懇談会を開き、今後の対応を
 協議するなど各党は国会対応などで協力し、災害対策に全力を
 挙げる考えとのことです。


 今回の地震で被災地の中には緊急度・優先順位の関係で、未だに
 ライフラインの確保を含め十分な公的な支援がなかなか受けられずに
 困っている方々が沢山いると思います。


 この事態を避けるためには、一定区間ごとに「非常用のジェネレー
 ターセット・緊急食糧・医療器具」などを配備し、街全体の設計にも
 「電線を埋設する」「軟弱地盤を強化する」などの工夫が必要です。


 私が東京都知事選に立候補したのは1995年の4月ですが、同年1月の
 阪神淡路大震災を受けて私は東京でこのコンセプトに基づく街づくりを
 提案しました。


 今回の地震で千葉県の一部地域では軟弱地盤が液状化しているよう
 ですが、東京でも起こりうることであり、お金をかけて作り替える
 必要があると思います。


 そして「強化策」と同時に「街並み」を整備することも提案したの
 ですが、以来16年経過しても未だに実現されていません。結局、
 こうした地道な「準備」を怠らないことが重要ではないかと思います。


 またライフラインの確保という意味では、個人レベルでも「電気・
 電池」をどのように確保するのか、というのが大きな課題でしょう。


 携帯電話、iPhone、iPadなどの端末に頼っていた人が殆どだと思い
 ますが、電池がなくなってしまっては使い物になりません。


 私の場合、3重のバックアップ体制をとっています。メインの携帯
 電話に加えて、スペアの携帯電話を1つ用意し、それぞれの携帯を
 常にフル充電しています。そして充電もできる電池パックを1つ
 予備で持ち歩いています。


 これだけの体制をとっていても、実際にどこまで持つのか?と考え
 出すと切りがありませんが、携帯電話が我々のライフラインとして
 欠かせないものになっている以上、「電気がない状態で携帯などを
 どうやって動かすのか」というのは今後も課題として残るでしょう。


 一方、混乱状態で電話が通じなくなってしまったのに対して、
 インターネット(特にTwitter、Skype)で連絡が取り合えたと
 いうのは大きな収穫と言えると思います。


 特にTwitterはワンパケットだけでメッセージを送信できるので、
 混雑した回線の中でも切れずに済んだのだと思います。この点、
 1つのメッセージ送信にあたって複数パケットを必要とするメール
 に比べてもはるかに優れていました。


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 ▼ 復興費用は、1年間限定で消費税率を6%にして捻出する
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 また今回の地震に対する日本の対応能力について、海外のメディア
 が高い評価を与えています。CNN・BBCニュースでは「有史以来
 最悪の地震が、世界で一番準備され訓練された国を襲った。


 犠牲は出たが他の国ではこんな正しい行動はとれないだろう。
 日本人は文化的に感情を抑制する力に優れている」と
 取り上げられました。


 中国でも、混乱に乗じで盗みもせずに整然とコンビニに列をなして
 いる日本人に対して、改めて日本人の道徳の高さに驚いているとの
 ことです。


 こういう点では、日本にとって「良い面」もあったと言えるかも
 しれません。ただ私はより正確に言えば、今の日本人は「正直な
 ところ、呆気に取られて何をやっていいのか分からない」状態に
 なっているのだと見ています。


 今後、仮設住宅での暮らしが長引き、村全体の壊滅的な被害状況
 などが明らかになってくると、精神的なダメージと疲れが押し寄せて
 くると思います。


 その落胆をどう乗り越えていくのか、どう克服していくのか、
 というのが本当の意味で日本人に問われている「強さ」だと
 思います。


 恐らく阪神淡路大震災と比べても、想像を絶するくらい大変です。
 私は阪神淡路大震災の際、現地に行ったことがありますが、今回の
 東北地方はそれと比べても比較にならないほど「跡形もない」状況
 だと思います。これからが本当の正念場でしょう。


 こうした状況の中で、私は知り合いの民主党議員にオーストラリア
 の「ギラード首相」を見習った政策を薦めています。


 オーストラリアはクイーンズランド州の大洪水で被害を受けた
 インフラや家屋、企業などの復興資金を調達するため、一時的な
 課税策を導入しました。


 年間5万豪ドルを超える所得に0.5%、年間10万豪ドルを超える
 収入には1%の税率で所得税が課される仕組みで、洪水被害を受けた
 家庭は課税が免除されます。


 これに倣って、例えば「来年1年間のみ復興費用の捻出のため、
 消費税率を1%増税させて欲しい」と国民に説明すれば良いと
 思います。


 もちろん被災地は除くという条件付きでも良いでしょう。1年間
 だけでも消費税率を1%上乗せすれば、2兆円規模の資金を捻出
 することができます。


 この仕掛けならば、2兆円の前借りであって日本国債に悪影響を
 及ぼすことはないでしょう。


 政府は2000億円規模の臨時予算を検討しているとも聞こえてきま
 すが、この状況でさらに赤字国債を発行すると日本国債暴落の
 危険性があります。


 地震による被害に加えて、国債が暴落する事態まで引き起こして
 しまったら、本当に目も当てられません。


 日本国民全員が救済のために「1%」の消費税の増税を「1年間だけ」
 認めること、そしてその「2兆円」を「復興費用」に充てること。
 この政策には資金的なインパクトもあると同時に、「国民の結束感」
 を生む効果があるのではないかと私は思っています。


 そして2兆円を使えば、例えば高台に街を築き、その下に公園など
 を配置するという以前よりも綺麗かつ安全な街づくりを行えるで
 しょう。


 このようなことを行うことで、日本はより「強い」国になることが
 できると思います。


 こうした提案を実行に移すことができれば、もしかすると死に体の
 「菅政権」も復活するかも知れません。


 「鉄の女」と呼ばれ長期政権を誇ったサッチャー英元首相も、
 フォークランド紛争においてリーダーシップを発揮することで、
 それまでの低支持率からの回復を果たしました。


 今は多くの国民が混乱している状況だと思います。ここで足踏み
 することなく、1%の増税施策などを実施し復興への足掛かりに
 することができれば、「強い日本」になると私は思います。
 ぜひ、政府には検討してもらいたいと思っています。


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