大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON352「大学入試~カンニングで答えが見つかる試験から学生も大学も汗をかく選抜方法に変えるべし」

2011年3月4日

大学入試
 入試問題 ネット投稿
 京都大、早稲田大、立教大、同志社大
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 ▼世の中に出れば、「カンニング」した者が勝ちだ
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 先月25日と26日に行われた京都大学の入試で、試験問題の一部が
 試験時間中にインターネットの質問掲示板に掲載されていたことが
 分かりました。


 またその後の調べで、同志社大(8日)、 立教大(11日)、
 早稲田大(12日) でも同様のカンニングが行われていたことが
 明らかになったとのことです。


 韓国では2004年の大学修学能力試験(日本の大学入試センター
 試験に相当)の際に、携帯電話を使ったカンニングなどの不正受験
 が多数発覚し、逮捕者が出るなど大きな問題となったことがあります。


 韓国では事件後、試験場への携帯電話の持ち込みが禁止され、電子
 機器を所持していないか調べるために小型の金属探知機が使われる
 こともあるそうです。


 日本でも同じような展開が予想されますが、この処置は「対処療法」
 に過ぎません。今回のカンニング事件は不正ではありますが、発想
 を変えて見ると興味深いことが見えてきます。


 10年以上に渡ってサイバー授業を展開しているBBTでは、
 「カンニング」を推奨しています。


 なぜなら、学校を卒業して社会に出たら、「カンニング」した者が
 勝つからです。例えば、事業を興そうと思えば過去の事例をくまなく
 調べて参考にするでしょうし、同時に競合他社の状況についても
 徹底的に調べるはずです。これらの行為は「カンニング」と同様です。


 もちろん知的所有権のあるものについて「カンニング」するのはNG
 ですが、世の中の大半のことについては「カンニングOK」だと
 私は実感しています。


 広い意味で言えば、世の中の様々な人の意見を聞いて参考にして、
 自分が間違った道に進まないように修正していくというのも同様の
 ことだと思います。


 今の世の中で求められているのは、「答えを知っている」ことでは
 ありません。


 「カンニング」をして自ら情報を収集し、その得られた情報から
 最後は自分自身の頭で考えてまとめ直し、「これが一番だ」と思える
 ものを実行に移すというスキルであり、行動力が求められているのです。


 極論すれば、広い意味での「カンニング」をしてはいけないと
 いうこと自体、私は間違っていると思います。


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 ▼ 大学・文科省が検討すべき入試制度
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 では現実的に大学では「カンニング」に対してどう対処すれば
 良いでしょうか?BBTについて、サイバー授業・試験の場合、
 生徒同士が携帯電話で相談したり、答えを教えたりするのでは?と
 質問されることがよくあります。


 しかし私に言わせれば、生徒同士が軽く相談したくらいで「答え」
 を見つけられる問題を出している学校側が悪いのです。BBTの場合
 には、例えば次のような形式で問題を出します。


 ・まず生徒に論文を書かせ、それを教師が読み込みます
 ・最終試験では個々人の論文の内容について、それぞれ別の質問をします
 ・生徒はそれぞれが違う質問をうけて、それを2時間800字でまとめます


 このようにすると、仮に全く同じ論文であったとしても質問内容が
 異なりますから、生徒同士が携帯電話で相談しても意味はありません。


 そして、教師が生徒の論文を読んで質問をし、生徒はその質問に
 ついてすぐに回答できるかどうかも試されるのです。


 「全員に同じ質問をしない」というのが重要なポイントです。この
 部分は労働集約型の作業ですから確かに教師側は大変ですが、私は
 「先生・教師側も、少しは汗をかくべきだ」と思います。


 今回の件について言えば、携帯電話で検索をすればすぐに答えが
 分かる程度の問題を出している大学も、入試の見直しを再考する契機
 にすべきだと私は思います


 大学入学と言えば、人生の運命を決める可能性がある大きな一歩です。
 その入試問題が、他人に聞けば簡単に答えがわかる問題であって
 いいのでしょうか?


 大学の重要性を謳うなら、それこそ長大な論文を生徒に書かせ、
 教師側も死ぬ気で論文に目を通して成績をつけるべきではないかと
 私は思います。


 またその意味では「面接」も非常に有効な手段であり重要です。BBT
 では必ず面接を実施しています。


 面接をする余裕すらないというマンモス大学もあるでしょうが、
 その時点で「教育を諦めている」と言わざるを得ません。であれば、
 選抜の方法も何でも良いのではないかと正直感じます。


 今回のカンニング事件についての不正を論じることとは別の課題と
 して、今一度、大学・文科省は「あの程度の問題で生徒の人生を
 決めていいのか?」ということを問い直すべきでしょう。


 そして大学にはもっと自ら汗をかき、創意工夫を重ねてもらいたい
 と強く思います。


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