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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON321「超高収益企業「サムスン」~なぜこんなに儲かるのか!?」

2010年7月23日

 韓国サムスン電子
連結営業利益 約3600億円
リチウムイオン電池
次世代基幹産業に位置づけ 韓国政府


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 ▼ サムスン電子の業績は、かつてのソニー・パナソニックを凌ぐ
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韓国のサムスン電子は7日、2010年4~6月期の連結営業利益が前年
 同期比87.3%増の5兆ウォン(約3600億円)となったもようだと発表
 しました。


 高値圏で推移する半導体メモリーが業績をけん引し、液晶パネル、
 薄型テレビ、携帯電話の主力部門がバランス良く利益をあげたとみられ、
 日本の電機大手と比べ、抜きんでた利益水準を維持しています。


 サムスン電子は2008年のリーマンショックの後、一時業績は悪化し、
 2008年初頭に約10%だった営業利益がマイナスに転じました。


 しかし2009年以降、見事な回復を見せ、今では営業利益率は約14%に
 達しています。


 ※「サムスン電子の営業利益率の推移」チャートを見る 
⇒ 


驚異的な回復具合も素晴らしいと思いますが、今回発表された「数字」
 はそれ以上に驚異的なものだと私は思います。


 サムスン電子と日系主要電機6社の業績(2009年度)を比較すると、
 どれほどサムスン電子の数字が群を抜いているか理解できるでしょう。


・売上高
 日系6社合計:38兆円
 サムスン電子:9兆円
・営業利益
 日系6社合計:6800億円
 サムスン電子:7800億円
・純利益
 日系6社合計:マイナス2380億円
 サムスン電子:7100億円


 売上高では上回っているものの、営業利益ベースでは6社合計でさえ
 負けています。


 純利益になると相手にならないほど差が開いています。まさに、日本勢
 は枕を並べて討ち死にしてしまったと言っても過言ではないでしょう。


  ※「サムスン電子と日本の主要電機メーカーの利益率」
⇒ 


 かつてソニーやパナソニックの業績が好調な時でさえ、年間で数千億円
 の利益というレベルでしたから、このサムスン電子の業績は圧倒的です。


 このまま行くと、今年は1兆2、3000億円の利益が出るのではないかと
 私は見ています。


 利益での日本勢のトップは三菱電機で、それでも純損益ベースでかろう
 じて利益を出しているレベルです。パナソニック、日立、シャープ、
 東芝、ソニーなどは純損益ではマイナスで、完全にひっくり返っています。


 このサムスン電子の業績と自分たちを比較して、ソニーなどは本当に
 コストダウンを叫んでいる場合なのかどうか、今一度考えてもらいたい
 と思います。


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 ▼ 発明だけして、市場が育つ頃には消えている日本
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 韓国政府は13日、自動車向けバッテリーとして需要急増が見込める
 リチウムイオン電池を次世代の基幹産業に育てる2020年までの長期
 計画をまとめました。


 研究開発や人材養成などを通じ業界を支援し、官民一体で受注拡大に
 取り組むことが盛り込まれています。


 そんな中、14日、韓国のLG化学は、米フォード・モーターに電気自動車
 (EV)の基幹部品であるリチウムイオン電池を供給すると発表しました。


 米ゼネラル・モーターズ(GM)にも今年11月から納入する予定で、
 ビッグスリーのうち2社を大型顧客として確保した形です。


 リチウムイオン電池は最初に日本が開発した技術です。今でも部品の
 多くは日本製のものが使われています。


 ところが、日本が国家全体として動くようなダイナミックな動きを見せ
 ないために、今その市場に韓国や中国は「国家」をあげて参入してきて
 います。


 発明家の日本はいったい何をやっているのかと感じます。自動車各社は
 環境車向けの基幹部品のほとんどを日本の電機・機械各社から供給を
 受けていましたが、今そこにも韓国のLG化学などが割り込んできて
 います。


 リチウムイオン電池の世界シェアの推移を見ると、2000年には約3000億円
 の市場の93%が日本企業で占められていました。


 この時点では、将来有望で明るい未来、といった感じでした。
 しかし2008年になると、日本企業のシェアは50%を割ってしまいました。


 電極などの部品を作っているのは未だに日本企業で、全体から見ると
 韓国の企業も日本からモノを買っている図式ですが、サムスン電子やLG
 科学などの台頭に確実にシェアを奪われています。おそらく、このまま
 放っておけば日本勢は消えてしまうでしょう。


 このような事態はリチウムイオン電池に限った話ではありません。日本
 は、LEDでも太陽電池でも全く同じ過ちを犯しています。


 世界のために先駆けて開発してあげて、そして巨大なマーケットに育つ
 頃には日本は消えてしまうのです。このワンパターンを繰り返しています。


 日系電機6社の合計よりも、サムスン電子1社が圧倒的な利益をあげている
 という事実。そしてこの差は、今後のリチウムイオン電池や電気自動車の
 伸びを考えると、縮まるどころか広がる可能性が高いでしょう。


 さらに加えて言うならば、「人材格差」の問題もあります。私がかねて
 から提唱している知的武装のための3種の神器「IT、金融、英語」を日本人
 はどのくらい身につけているでしょうか。


 人材格差を考えても、いっそう差が広がる可能性があると私は危惧して
 います。


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