子ども手当
上乗せ部分の支給方法を見直し
財政再建
11年度から消費税引き上げを提言 ~IMF~
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▼ 財源を確保することが、子ども手当の最も大切なポイント
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長妻昭厚生労働相は18日の閣議後の記者会見で、2011年度から子ども
手当に上乗せする月額1万3000円分について「すべて現金か、一部を
保育所整備などの現物給付にするか、政務三役で検討する」との見解を
示しました。月額2万6000円の満額支給にこだわらず、上乗せ部分の
支給方法を見直すとのことです。
長妻厚生労働相は、かつて私が代表を務めた「平成維新の会」にも参画
していた人物です。その意味で今回「的を外した議論」を展開して
しまっているのは非常に残念です。
長妻厚生労働相の発言の背景には、おそらく「財源がない」という事情
があるのだと思いますが、日本国債のデフォルトが迫ってきている今に
なって「財源を確保する」のは不可能でしょう。
ですから、子ども手当問題を議論する際には「財源を明確にする」と
いう点が非常に重要であり、これが問題の本質だと私は思います。
おそらく月額2万6000円の子ども手当を支払ってしまうと、来年度予算を
組むことはできません。そのため、子ども手当に匹敵するものを予算から
「削る」しかないと思います。
子ども手当だけに焦点を当てるのではなく、それらを含めてトータルで
議論を進めなければ意味がないのです。
しかし、子ども手当の財源をつくるために配偶者控除を廃止でもすれば、
家庭を守る奥さんたちが黙っていないでしょう。
この場合、上乗せ部分の支給方法が「学校に対する支援」あるいは
「保育所に対する支援」になるという議論は意味を持ちません。
財源を明確にして議論を進めないと、いくら高尚な理念や意味を掲げても、
この問題は解決しないと思います。
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▼ 経済が活性化する仕掛けがなくては、税率を引き上げても効果なし
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国際通貨基金(IMF)は19日、ギリシャの財政危機をきっかけに各国の
財政赤字に注目が集まっているとして、日本に対し「2011年度には財政
再建を開始し、消費税を徐々に引き上げていく必要がある」と提言しま
した。財政再建に必要な消費税率の目安は、15%との見方を示しました。
IMFにこのような指摘を受けること自体、恥ずかしい話です。そして
今の民主党の考え方・政策を見る限り、消費税率は15%どころか25%
程度まで引き上げなければ財政を立て直すことは難しいと思います。
そして実際に直間比率を見直して財政再建を図ろうとしたとき、民主党
ならば、経済界からの圧力が強い「法人税率の引き下げ」に対応する一方、
「所得税率の引き上げ」を行うでしょう。
民主党の頭にあるのは選挙対策だけだからです。おそらく今の民主党なら、
所得税率の引き上げで高所得者層の票を失っても安全だと判断していると
思います。
ただ所得税率を引き上げても、それほど効果は出ないでしょう。むしろ
逆に、景気を良くするためには所得税率を引き下げてしまう方が良いと
私は思います。
実際、世界の国の事例を見ると、所得税率を引き下げたときは税収が
増えています。おそらく税率が低くなるために正直に納税する人が増える
からだと思います。
同時に消費税率を15%に引き上げるなら、その「見返り」を準備する
ことが大切です。単に消費税率を15%に引き上げても経済が縮小する
だけだからです。計算上の数字は正しくても「実際に」経済が活性化し
なくては意味がありません。
主要国の付加価値税率でトップに位置している、スウェーデン・デンマーク
・ノルウェーなどの北欧諸国の税率は約25%です。日本の5%に比べると
遥かに高い税率ですが、その分の「見返り」がしっかりして
います。
例えばスウェーデンで生活しているなら、老後は国が面倒を見てくれ、
日本のように強く老後の生活不安を感じないので、25%という高い税率
にも国民は文句を言わないのです。
※「主要国の付加価値税」チャートを見る
翻って日本を見てみると、国が面倒を見てくれるのか極めて疑わしいと
思います。ゆえに日本は税率を引き上げるのが最も難しい国になって
います。
実際、消費税が初めて導入されたとき、そして3%から5%に引き上げ
られたとき、いずれのタイミングでも直後の参議院選挙で与党が敗れ、
首相が辞任に追い込まれています。
消費税を引き上げる「代わり」に何があるのかを国民に明示し、それを
含めてトータルで話を進めなければ、消費税率の引き上げは大きな問題
になってしまうと思います。
しかし今回の民主党が言う「消費税率の引き上げ」は、次の衆議院選挙
の後ということですから、私に言わせれば前提からして「いかさま」です。
というのは、次の衆議院選挙までの3年の間に日本国債がデフォルトして
しまうからです。今のまま50兆円の赤字国債を3回発行すれば、間違い
ないでしょう。
そうなる前に消費税率を引き上げるという話を先にしておいて、実際に
経済が改善しているという様子を見せることが重要だと私は思います。
本来、国の税率について他人にとやかく言われる筋合いはありません。
それをIMFに指摘されるというのは、ある意味「屈辱的」な事態と受け
止めるべきだと思いますが、驚くほど国民もマスコミも無反応です。
さらにはこの期に及んでも、亀井金融・郵政改革担当相は「お金はある
から大丈夫だ」という趣旨の発言をしています。
日本国債はいつ売り浴びせられても文句が言えない状況だと言うのに、
全く信じられません。そんな亀井氏が金融担当相を務めているのだから、
国民やマスコミに「危機感がない」のも当たり前かも知れません。