大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON312 ガバナンス不在の銀行~長引く経営問題とそれを放置した金融庁の不甲斐なさ

2010年5月21日

みずほFG みずほ3会長が退任へ
 新生銀行 業績を下方修正
 日本振興銀行 木村剛会長が退任へ
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 ▼みずほFGは、今こそ統一された企業として歩み始めるチャンス
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 みずほフィナンシャルグループ(FG)の前田晃伸会長と傘下のみずほ
 コーポレート銀行(CB)の斎藤宏会長、みずほ銀行の杉山清次会長の
 3氏が退任する方向で最終調整していることが11日、明らかになりました。


 みずほFGの塚本隆史社長らに経営のかじ取りを全面的に委ね、迅速な
 経営判断ができるようにする狙いとみられています。


 みずほ銀行の「ごたごた」は日本最大級の経営の笑い話の1つだと言え
 るでしょう。3大メガバンクで最も統合に成功していないのが、みずほ
 です。


 三井住友銀行も古い銀行の名前を残してしまい、英語表記では
 SumitomoMitsuiにするなど苦肉の策を講じるほど「もめた」のですが、
 今現在は意外と1つの銀行としてのまとまりが出てきていると感じます。


 また三菱東京UFJ銀行は、圧倒的な三菱陣営の強さが他の勢力を寄せ
 付けず、旧三菱銀行を中心にまとまりが出ていると思います。


 富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行の3行の統合に際して、名前を
 「みずほ」に統一したところまでは他のメガバンクよりも評価できたの
 ですが、その後のまとまりが最低だったと言わざるを得ません。


 みずほフィナンシャルグループ、みずほコーポレート銀行、みずほ銀行
 という3つの銀行を作り、それぞれ旧体制のトップがそのまま会長に」
 居座ってしまいました。


 それ故、せっかく名前は統一したものの会社の体制はバラバラ。みずほ
 CBの会長が女性問題のスキャンダルを起こしたとき、退任を迫られな
 かったのも、企業としての体制が崩れていたからだと思います。3大メガ
 バンクの中で最も自己資本比率が弱っているのも当然でしょう。


 今回、3会長が同時に退任することでようやく「老害」が取り除かれる
 ことになると思います。これを契機に、これから先は旧3行のしがらみ
 をなくし、統一した企業としてカスタマーサービスに力を注いでもらい
 たいと強く願っています。


 「旧どこそこの付き合いで・・・」という旧態依然とした企業カルチャー
 はいい加減に捨て去るべきです。今、このタイミングはその大きな
 チャンスです。


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 ▼新生銀行、日本振興銀行は金融庁の汚点
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 新生銀行は10日、2010年3月期連結業績について、純損益を従来予想
 の100億円の黒字から1401億円の赤字に下方修正しました。消費者関
 連事業や不動産融資などの引当金を大幅に積み増すことが響いた形です。


 新生銀行は、08年度以降赤字が続き、現在株価も約100円にまで下落し
 てしまい、完全にテクニカルノックアウトの状態です。


 金融庁としては過去の経緯もあって新たに資金を入れづらかったので、
 あおぞら銀行との合併を画策したのですが、それも破談に終わってしま
 いました。


 さらにプラス数百億円の増資が必要ということですから、もう手の施し
 ようはなく、金融庁の汚点として残ることになると思います。


 旧リップルウッド・ホールディングスは、経営破綻したため約8兆円も
 の公的資金が注入された旧日本長期信用銀行を買収し、その後新生銀行
 の上場にあたって莫大な利益を得ることに成功しました。


 旧リップルウッドの創業者の1人、ティモシー・コリンズ氏は上手に
 株を売り抜けて、現在は経営に全くタッチしていません。現在、経営に
 関わっているのはJ. クリストファー・フラワーズ氏のみです。


 そのフラワーズ氏は、現在の新生銀行の業績悪化を受けて、約3000億
 円の増資を引き受けているため、非常に厳しい状況にあると思います。


 一方、金融庁は「ハゲタカファンド」に対する反感もあって、おそらく
 フラワーズ氏が関わっている限り、新生銀行の救済には乗り気ではあり
 ません。


 しかし、このまま新生銀行を潰してしまったら、「国民の税金を8兆円
 も使って何をやっているんだ」と非難されるでしょうから、それも避け
 たいと考えているでしょう。


 資本の問題以外にも、新生銀行には、まともに経営できる人材が不足し
 ているという問題があります。2000年に新生銀行の会長兼社長として
 招聘された八城氏は、すでに高齢ということもあり、昔ほどの切れ味・
 パワーがなくなりつつあると私は感じます。


 潰すにつぶせず、フラワーズ氏を退けることもできない「金融庁」、増資
 を引き受けてしまいこれ以上資金がなく困っている「フラワーズ氏」、
 そして経営できる人材がおらず業績回復の兆しが見いだせない「新生銀行」。
 いずれも身動きが取れず、完全に三竦み状態に陥ってしまいました。


 新生銀行と同様、金融庁の汚点として残りそうな事例がもう1つあります。
 それが日本振興銀行です。約51億円の最終赤字を計上し、ついに木村
 剛会長が退任するとのことですが、私に言わせれば、ほとんど高利貸し
 のようなビジネスを展開していた銀行であり、最初から問題があったと
 言わざるを得ません。


 本来、このような銀行は必要なかったと思います。小泉政権時代、木村
 剛氏が上手に話をつけて銀行ライセンスを取得して営業を始めたときから
 不安を感じていましたが、結局まともな銀行にはなりませんでした。


 こんな銀行の誕生を許容してしまったのも、金融庁の汚点として刻まれた
 と言えるでしょう。


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