大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON301 共通番号制度の導入検討へ~「コモンデータベース法案」をつくり、行政手続を一元化せよ!

2010年3月5日

 住基ネット
共通番号制で
住基ネット活用を検討
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 ▼住基ネットの技術では将来的な拡張性に欠ける
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政府は社会保障と税の共通番号制度で住民基本台帳ネットワーク
 (住基ネット)を活用する検討に入りました。


 全国民に固有の番号が割り振られている既存の仕組みを使い、システム
 設計にかかるコストや時間を抑える狙い。また政府は2010年度税制
 改正大綱に共通番号制度の導入を明記しました。


 2011年の通常国会に関連法案を提出し、準備期間をおいて早ければ
 2014年の利用開始をめざしているとのことです。


 世界各国の番号制度への対応を見ると、最も進んでいるスウェーデンと
 韓国は「税務、社会保障、住民登録、選挙、教育、兵役」の全てを共通
 の番号で管理しています。


※「各国の番号制度」←チャートを見る
  


 その他、オランダ「税務、社会保障、住民登録」、英国「税務、社会保障」、
 米国「税務、社会保障、選挙」、イタリア「税務、住民登録、選挙、兵役」
 となっていて、ドイツは「税務」のみの対応となっています。


 日本でも税務と社会保障の共通番号制度の確立に向けて、ようやく動き
 出そうとしているわけですが、「住基ネットを活用する」という点に問題
 があると私は思います。


 私は拙著「新・ 大前研一レポート」でも提唱している通り、コモンデータ
 ベース法を導入し、パスポートや運転免許にいたるまで国民各人の情報
 を一元管理してICカード化するべきだと考えています。


 「税務、社会保障、住民登録、選挙、教育、兵役」に限らず、全ての
 行政手続に必要な情報を一元管理するという発想に立ってさらに将来的
 な拡張を考えると、今回の「住基ネットを活用する」という方法には
 技術的な限界があると私は感じます。


 確かに、例えばICカード化するだけでも選挙の投票用紙を書く必要が
 なくなりますから便利だと言えるでしょう。しかし、ここで終わりに
 する必要はありません。


 ネットや電話を活用しながらバイオメトリクス(生体認証)と組み合わ
 せれば、選挙の際に自宅から投票することもできるでしょうし、さらに
 言えば、海外からの投票も実現できるでしょう。


 このくらい発想を広げて将来的な拡張を考えるべきです。そして、ここ
 まで考えた上で住基ネットの技術・ネットワークを活用することが望ま
 しいのか判断するべきだと思います。


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 ▼コモンデータベース法を通し、共通データベースを作ることが大切
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 この問題については先程も紹介した通り、私はすでに十数年前に
 拙著「新・大前研一レポート」で根本的な考え方として、
 コモンデータベース法(ICカード法)を提唱しています。


 それは、「パスポート、運転免許証、健康保険証、厚生年金手帳、
 印鑑登録証、さらには医療カルテや交通事故の履歴」まで全ての情報を
 一元化して、ICカードとして各人が持つというものです。


 こうしておくと、国民はカードを1枚持っているだけで全ての
 行政サービスを受けられるという状況になります。
 これは国民にとって非常に便利です。


 基本的に日本の行政サービスは、縦割りに機能しています。そのため
 コンピュータ・システムを導入しても互換性がなく、国民は何かの手続
 きをしようと思っても、それぞれの手続きを扱う役所に出向く必要が
 あります。


 一元管理された国民のデータベースをきちんと運用していれば、
 こうした事態を解決することができます。


 また、行政を担う役所業務の改革・改善にもつながります。例えば、
 私は毎年1回わざわざ国際免許証を取得していますが、これは面倒です。
 国際免許証が必要なのは、日本の免許証に英文の記載がなく外国人が
 読めないからです。


 各人が持つICカードに「運転免許」まで含めてしまい、さらには英文併記
 することで「国際免許」にもできるとしたら、それだけで国際免許証を
 発行している「ムダな」窓口業務を1つ減らすことができます。


 共通番号制度を導入するならば、「住基ネットを活用して、
 税務と社会保障を」というレベルで留めるのではなく、「パスポート、
 運転免許証、健康保険証、厚生年金手帳、印鑑登録証」などあらゆる
 情報の一元管理、遠隔操作への対応、そして英語による国際対応まで
 考えて欲しいところです。


 私がかつて試算したところでは、住基ネットなどの既存のネットワーク
 を使わず、ゼロからこうしたシステムを作り上げたとしても、約700億円
 で全てのシステムを構築することが可能でした。


 住基ネットを活用して3年~4年も時間がかかるなら、ゼロから作って
 しまった方が拡張性の点から見ても得策だと思います。


 逆にスピードを優先すると言うなら、登録が面倒な住基ネットよりも、
 PASMO(パスモ)などのカードの方がよほど世の中に普及しているし、
 活用しやすいと思います。


 こうした点を踏まえて、今一度、「住基ネット」というネットワークを
 活用するべきなのかどうかを検討してもらいたいところです。そして
 その前提として、「全ての役所が共通の国民データベースを持つ」という
 発想が大切で、「コモンデータベース法案」を通すことを実現してもらい
 たいと私は強く願っています。


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