大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕#131 携帯・ネット・放送・通信の未来は?

2006年9月26日

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 放送と通信の分離という考え方が
 ナンセンスであることを示唆
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●WOWOW スカパーに番組提供


WOWOWが
「スカイパーフェクTV!(スカパー)」に
番組提供し、
スカパー内にWOWOW専用チャンネルが
新設されるとの発表がありました。


スカパーで
WOWOWが見ることができるとなると、
じゃあ
地上波デジタルとかBSは一体何だったのか?
という話になるでしょう。


これまで日本では
放送と通信を分離するという考えの下に、
BSとCSを分けた運用が適用されてきました。


元々スカパーは
CS(Communication Satelliteの略)で
「通信」を目的とし、一方、BS放送は
BS(Broadcasting Satelliteの略)で
「放送」を目的としています。
そして、ライセンス・許認可についても
BSとCSでそれぞれ別に必要になっています。


そのため、
一般の家庭でBSを見るためには
BS用のセットトップボックス、
スカパー(CS)を見るためには、
CS用のセットトップボックスを
用意しなければなりませんでした。
全く迷惑で面倒な話としか言えません。


私は、
昔から旧郵政省による
このような放送と通信の
分離という考え方には
意味がないと思っていました。


そして、
いずれは通信が放送を統合していく時代が
来ることを述べてきました。
放送と通信を分けて考えること自体が
ナンセンスなのだと。


今回のWOWOWによる
スカパーへの番組提供というのは、
それを如実に物語っている一例だと
言えるでしょう。


いくら立て前では放送と通信の
分離を唱えてみても、もはや実態として
無理が生じてきてしまったのです。
だから、なし崩し的にではありますが、
両者の垣根が
なくなろうとしているのでしょう。


放送と通信という観点で言うと、
先日発表された
NHKのネット配信のニュースを見たときにも、
私は日本の政府・国の対応に疑問を
感じることがありました。
それは、NHKが保有する
過去番組のインターネット配信を、
2008年を目処に開始する予定ということを
竹中大臣が発表したということです。


NHKによる番組ネット配信には
放送法の改定が必要になるから、
国・政府が全く無関係というわけでは
ないでしょう。


しかし、それにしても、
NHKというのは国民の所有物であって、
そのNHKの意向については、
NHKが自ら発表すればよいのですから、
総務省が発表する理由は
どこにもないと私は思います。


なぜ、NHKの放送について国が決めるのか、
全く意味がわかりませんし、
私は強い違和感を覚えました。



●全てが一体化した媒体となり、
パッケージ・サービスが必要とされる時代


放送と通信の一体化という波は、
ブロードバンド化の流れに乗って、
携帯電話・インターネットという分野とも
一体化していくことを意味しています。


例えば、先日、
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は
2007年を目処にインターネットを通じた
映像配信事業に参入するというニュースを
発表しました。


インターネットを通じて
映画や音楽などを配信していく
予定ということですが、
これは明らかに
TSUTAYAという自分のお店そのものを
否定する動きになっています。


インターネットで
映画を観ることができるようになってしまうと、
わざわざ実際の店舗に足を運んで
DVDやビデオを借りる必要がなくなるのだから
当然でしょう。


しかし、CCCは、
取り立てて店舗経営に行き詰って
このような手を打ってきたわけではありません。
逆に、現在のところは、本などの販売も含めて
店舗経営は上手くいっていると言ってよいと
思います。


それでもなお、
ブロードバンド化の流れを考えると、
放送・通信とインターネットが一体化していき、
実際の店舗に訪れる人が少なくなるのは
避けられないと考えた上で、
先手を打ってきているのだと私は見ています。


このような
放送・通信とインターネット・携帯電話という
分野までが一体化していくという流れが
今後の主流になっていくのは、
間違いないのではないかと思います。


そうして、
これら全ての分野を
1つの媒体として取り扱える
パッケージ・サービスを提供していくことが
重要になってくるでしょう。


7日、
固定通信の日本テレコム(ソフトバンク傘下)は、
倉重社長が代表権のない取締役に退き、
ソフトバンク社長・日本テレコム会長の
孫正義氏が
社長兼最高経営責任者(CEO)に就く
人事を決めた、と発表しました。


孫氏は、
携帯電話のボーダフォン、
ブロードバンド通信のソフトバンクBBと合わせ、
グループの通信3社の社長を
務めることになります。


なぜ、このような人事が行われるかというと、
先ほどのCCCと根本的な理由は
全く同じだと思います。
今後、
放送・通信・インターネット・携帯電話という
分野を分けて考えることができなくなっていく
という考えがあるのでしょう。


それぞれの分野ごとに
別々の経営者をおくというやり方では、
これから求められるサービスに
対応できないと判断した結果だと
私は思います。


全ての分野を1つの媒体とするような
一体化したサービスが求められるからこそ、
孫氏が陣頭指揮を執って、
1つの方向性を示していく
必要があるのでしょう。


放送と通信のみならず、
インターネット・携帯電話までが
一体化していく流れは、
今後もどんどん
大きくなっていくでしょう。
放送と通信の分離といった
見当違いな見解を持っていては、
世界の動きから遅れをとることに
なってしまいます。


まして、国・政府が介入することで、
これらの動きを妨げるようなことがあっては
ならないと強く感じます。
政府・役人の方にも、このあたりの考えを
見直していもらいたいものだと思います。


                      以上


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