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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON292 米軍普天間飛行場問題は解決できるのか?~鳩山首相の選択肢は2つに1つ~大前研一ニュースの視点~

2009年12月18日

米軍普天間飛行場問題
 鳩山首相
 亀井、福島氏と会談
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 ▼ 海兵隊=攻撃力の保持、という真実に目を向ける
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 鳩山由紀夫首相は社民党の福島瑞穂党首、国民新党の亀井静香代表と
 11日夜に会談したと発表しました。その中で沖縄県の米軍普天間飛行場
 移転問題などで意見交換を図り、移設先についてあらゆる可能性を含め
 て3党で協議しながら迅速に結論を見出すことで一致したとのことです。


 また米国務省のキャンベル国務次官補らと米軍普天間基地の移設問題を
 巡り意見交換した訪米中の国民新党の下地幹郎政調会長によると、
 米側は18日までの決断を求め、現行計画を履行できなければ関連予算を
 他に転用すると警告したとのことです。


 米軍普天間飛行場問題もここまで揉めてしまうと、最終的にはもう1つ
 の新しいオプションが出てくるかも知れません。


 それは民主党がマニフェストで掲げていた通り「グアムに移転してもらう」
 というオプションです。


 小沢幹事長などは、最後は普天間で落ち着くという姿勢を崩していない
 ようですが、私は可能性があると感じます。


 そもそも、なぜこの問題はこれほどまでに揉めてしまうのか?というと、
 歴史的に自民党が「嘘つき」で国民に真実を語ってこなかったからです。


 日本は憲法上、攻撃力を保持せず、防衛力のみ許されています。だから
 「自衛隊」であり「防衛省」という名称になっているわけです。


 ただ防衛力だけでは、万一近隣の中国や北朝鮮で有事が起こったときに
 対応できません。だから米軍・海兵隊に駐屯してもらっているのです。


 日本が保持していない攻撃力を肩代わりする存在、それが米軍・海兵隊
 です。普天間基地での軍事訓練の騒音や飛行場での墜落事故の危険性
 などが問題視されていますが、「防衛」のための訓練ではなく「攻撃」
 のための訓練をしているので、ある程度は致し方ないことです。


 橋下大阪府知事は、普天間飛行場の移設について関西国際空港での受け
 入れの可能性について言及したとのことですが、これは本質を外して
 いると思います。


 攻撃力を保持しなければ意味がないのですから、移設するならば海兵隊
 という軍事力について「ワンセット」全部必要だからです。船・タンク
 ・ヘリコプター部隊など、すべての海兵隊が一緒に移設されなければ
 意味がないのです。


 本来ならば保持していないはずの「攻撃力」について自民党がずっと
 嘘をついてきたために、社民党の福島党首などが正論を述べるだけで
 正しく聞こえてしまうのだと思います。


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 ▼ 鳩山首相が取るべき選択肢は、2つに1つ
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 では鳩山首相としては、この問題にどのように対処するべきでしょうか?
 私ならば「嘘つき」はやめて、海兵隊についての真実を正直に国民に話
 します。


・憲法上、攻撃されたときだけ守るという「自衛・防衛」しか許されていないが
・それでも万一の有事のときのために「攻撃力」を保持したいと思う
・この矛盾のためにあるのが、沖縄に駐屯している米軍の海兵隊である


 その上で、国民投票という形で日本国民に問うでしょう。こうした矛盾
 を認めても、米軍・海兵隊の攻撃力を保持するべきか、あるいは憲法に
 従ってこれを認めるべきではないか。


 もしこの答えが「YES」ならば、日本国民全員で「迷惑をかけて申し訳
 ないけれども、よろしくお願いします」と、沖縄の人にお願いをすると
 いうことになるでしょう。逆に答えが「NO」ならば、海兵隊という攻撃力
 そのものが必要ないということですから、「どうぞグアムに帰ってください」
 ということになるでしょう。


 過去数十年の歴史を振り返ると、日本の防衛のため、あるいは攻撃された
 際の自衛のために沖縄の海兵隊が動いたことはありません。


 海兵隊がグアムに駐屯するというのも現実的にあり得るオプションだと
 言えると思います。またそれでも万一の有事が起こった時には、日米安
 保条約に従い、米軍・海兵隊に対する支援要請についてその度に「交渉」
 をするということになるでしょう。


 では、果たして米国側はこのような日本の意見を受け入れる可能性が
 あるか?というと、私は「お金次第」で大いにあると思います。


 沖縄からの移転が現実になった場合、当然のことながら米国は移転費用
 の支払いを求めてくるでしょう。


 さらに、「一度移設したら、後から有事の際に海兵隊に来てくれと頼まれ
 ても、その時には費用は高くつくぞ」という類のことを言ってくるでしょう。
 しかし逆に言えば、こうした費用について日本が「払う」と答えれば、
 米国としてもそれ以上何も言えないはずです。


 鳩山首相の選択肢は2つに1つだと思います。国民の意見を聞き、
 「沖縄に日本国民全員でお願いをする」もしくは「米国に帰ってもらう」
 のいずれかを選ぶだけです。


 今、この問題はこれまで自民党が嘘をついてきた「ツケ」を支払わされ
 ているのです。このまま嘘つきの議論を続けても埒が明きません。それ
 を根本から払拭することが第一歩であり、大切なことだと私は思います。


 鳩山首相や岡田外相を見ていると、少し「学生」のような青臭い議論を
 することがあると私は感じます。


 「日本に攻撃力は必要ないから、米軍には出て行ってもらうのは当然」
 という意見についても、それだけを学生のように正論として主張してい
 ても「現実的な解決」には結びつきません。


 この点について改めて考えてもらいたいと思います。また「年を越す」
 というタイミングなので「1度米軍もグアムに戻る」という議論も、
 案外受け入れられる可能性が高いのではないかと私は見ています。


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