■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
高速道路無料化
JR東日本社長
高速道路無料化に懸念を表面
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
●そもそも、なぜ高速道路無料化という案が出てきたのか?
2日、JR東日本の清野智社長は記者会見で、民主党が掲げている
高速道路の通行料金の無料化について「政府の政策として実施して
いくのはいかがなものか」と述べ、影響が及ぶことに懸念を示しま
した。
また、日本経済新聞社が民主党新政権の柱となる政策の評価を
都道府県知事に聞いた調査で、高速道路の無料化を支持する知事は
3人だけだったことを明らかにしました。
民主党が掲げている高速道路の無料化について批判が相次いでいま
すが、これは民主党が如何に政策の本質を理解していないかを示し
ているものだと思います。
元々「高速道路の無料化」という案は、私が考え出したものだから
はっきりと分かります。小泉元首相が「民営化委員会」というおか
しな組織を結成し、高速道路の民営化という御下問がくだったとき、
私はその問題点に気づき、それを是正するために資料をまとめたのです。
2002年の11月に発表してから、様々なメディアにも掲載されまし
たし、政界の有力議員の方々にも直接説明しました。
その時から民主党はこの高速道路の無料化という案をぜひ採用したい
ということでしたが、結果としては民主党が政策の中身を理解して
いないままに、「高速道路=無料化」だけが一人歩きしてしまいました。
ここで私が2002年の11月11日に発表した「高速道路問題」の概要
について説明します。
民主党の議員やその他の政治家にも同等の説明を行っていますので、
どれだけ彼らが理解不足・勉強不足であるかが分かると思います。
まず、私は「高速道路民営化の問題点」を指摘しました。トピック
を紹介しておくと、次のようになっています。
・そもそも民営化の御下問が正しいのか
・道路関連予算と料金収入を分ける大義名分がない
(民営会社の正当性vs.国の責任)
・民営化したら所有権が移る→権限は?
・現在の負債をだれが、いつ、負担するか?
・経営に失敗した道路公団を民営化の母体とすべき理由は?
・国民負担は国民に問うべきではないのか?
例えば、「民営化の御下問は正しいのか」という点で言うと、
道路公団を作った時の考え方や法律に違反していると指摘しました。
そもそも「20年経過したら無料にします」という約束だったのに、
民営化して永続していくというのでは話が違います。私は過去の
あらゆる関連する法律を洗いざらい調べ、その上で違法だと判断しました。
「道路関連予算と料金収入を分ける大義名分がない(民営会社の正
当性vs.国の責任)」という点では、交通インフラは国の責任では
ないのか?という問題を提起し、道路公団は有料と無料の道路を
用意すべきであり、そうでなければ重複投資が発生するということ
を示しました。
「有料道路を使うこともできるが、遠くて時間がかかっても必ず
無料の道路だけで行ける」という大前提が崩れてしまうと、国民は
二重払いを強いられることになり、ガソリン税や重量税の正当性にも
疑問が出てきます。
またこれは道路公団にのみ当てはまる問題ではありませんが、国民
負担を課すのならば、事前に国民に問うべきです。そのためには
道路公団を残さない等の代案を示し、その上で39兆円もの道路公団
の借金を国民負担にしていいかどうかを聞くべきだと指摘しました。
このように高速道路民営化については様々な問題があり、それを
解消するための施策として、私は「高速道路の無料化」という案を
提示しました。
当然のことですが、そこには39兆円もの道路公団の借金を
どうやって返済していくかというプランも含まれています。
こうした背景を理解せず、「無料化=選挙に有利なキーワード」
という短絡的な思考をするから、「財源をどうするのか?」という
指摘を受けて民主党はまともに回答できないのです。
●高速道路無料化のための財源確保の方法は?
今、民主党は「高速道路無料化の財源はどうするのか?」と批判を
受けていますが、私はその答えも明確に提示していました。
2002年当時、日本道路公団の資金収入と資金支出は5.5兆円でバランス
がとれていましたが、問題は「資金収入の大半を補助金・借入金で
賄い、資金支出の大半を借入金の利払と償還に費やしている」こと
でした。
5.5兆円の資金支出のうち、金利・償還費等だけで3.3兆円を占め
ていました。そこで私が考えたのは、次のような方法でした。
1.まず、実は約13兆円もある道路財源なら17%程度(2.2兆円)
削減することは可能。それにより資金支出における道路建設費
・維持管理費等(2.2兆円)を捻出する。
2.更に大きな問題である39兆円の借金返済のためには、
新たに「プレート課税」を導入する。これにより、金利・償還費等
(3.3兆円)を賄う。そして、その一環として「高速道路の無料化」を
実現する。
では、「プレート課税」とはどういう考え方なのか?それは全国の
保有車両のナンバープレートに固定料金を課金するというものです。
貨物車・乗用車・特殊車両などの種類別、自家用・営業用の用途別
のマトリックスで年間の課金金額を決定します。
例えば、営業用貨物車は20万円/年、自家用乗用車は3万円/年
という金額を設定します。
プレート課税を支払った人には専用の色付きプレートを発行し、
私はあまり車に乗らないから必要ないという人は今までどおりの
プレートを利用してもらいます。専用プレートの人は高速道路を
無料にして、一般プレートの人は今までどおりの課金とします。
両者を区別して決済する方法はいくつか考えられますが、2009年の
今ならETCを利用すれば良いでしょう。ETCを使えばプレートで
色分けせずに済みますから便利です。
道路公団の抱える39兆円の借金を返済するためには、
乗用車3万円/年プランで10年、乗用車1万円/年プランで約13年、
という計算になりました。
この39兆円の借金を返済するのに、小泉元首相は、45年~50年
かかると言っていましたが、私に言わせれば、絶対にNOです。
なぜなら、50年先送りするということは、後の世代に借金を背負わせる
ことになるからです。
今後、人口も減っていくわけですから、何とか「現役世代」でこの
借金を返済することを考えるべきだと私は思います。
そして、そのために現役世代には10年だけ我慢して欲しい、その
代わり10年経ったら全て無料にします、というのが私の考え方です。
もし民主党がこうした説明をできていたなら、「ウチの地域に高速道
路を建設する予定がなくなってしまうから、高速道路が無料化され
たら困る」といって反対する人もいないはずです。
財源は道路財源からの削減分とプレート課税によって確保できてい
ますから、道路建設も維持・メンテナンスも全て今までどおり進め
てもらって構わないからです。そういう意味では誰も反対する理由
がないのです。
戦後、初めて第1党になった民主党ですが、こうした背景を含め政
策の本質を理解できていないと、今後地獄を見ることになると思い
ます。
逆に、「借金を作って次の世代に背負わせようとした自民党」とは違
う「本当の解決策」を提示して実行できれば、それは大きなアピー
ルになるでしょう。
今回、私は知人の民主党議員数人に、2002年当時の関連資料を送付
しておきました。今からでも遅くないので、民主党議員にはきちん
とこの問題について勉強し直してもらいたいと思います。