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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON274 「戦略・経済対話」~日本は自分の立ち位置を客観的に認識せよ!~大前研一ニュースの視点~

2009年8月21日

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米中関係
「戦略・経済対話」が閉幕
人民元問題にも踏み込む
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●世界の情勢は、「G2」「G20」体制へ


 28日、米中の閣僚が一堂に会し、経済や安全保障分野の懸案を
 議論する初の「戦略・経済対話」が2日間の日程を終えて閉幕
 しました。


 貿易不均衡を是正して持続可能な経済成長を実現するため、
 マクロ経済政策で協調することを確認。米国は過剰消費の是正、
 中国は内需拡大を進める考えを表明しています。


 80年代には、日本と米国で世界のことを決めようという、日本
 と米国による「G2体制」の動きがありました。


 ヨーロッパ諸国は、当時の日米の「G2体制」について、
 やや批判的な態度を示していましたが、それも今となっては
 懐かしい話です。


 今回の米中による「戦略・経済対話」では、明確に米国と中国
 による「G2体制」が宣言されたと言っても過言ではないでしょう。


 冒頭のオバマ米大統領の挨拶でも、21世紀を牽引していくのは
 米国と中国であり、この両国で多くのことを相談していく可能性
 が高いことを述べていました。


 2010年には中国のGDPが日本のそれを上回る可能性もあり、
 来年以降も米中による「G2」会議は毎年1回定期的に
 開催されることが決まっています。


 今回の会議には、オバマ米大統領以下、米国の閣僚全員が出席
 していました。一方の中国は、経済関連の閣僚は出席していま
 したが、胡錦濤主席と温家宝首相は出席していません。


 総動員体制の米国を見ていると、この会議に対する米国の強い
 思い・姿勢を感じることができます。


 私が記憶する限りでは、かつての日米間の会議でもこのような
 ことはなかったと思います。


 このような状況において、日本は未だに自らが存在感を発揮で
 きる「G8」にこだわりを見せています。


 今年の7月に行われたイタリアのラクイア・サミットでは、
 「もはやG20でなければ意味がない」という意見も出たよう
 ですが、これも当然のことだと思います。


 経済危機対策・環境問題など、8カ国だけでは解決できない問題が
 山積しているのは明らかだからです。


 世界の情勢は、明らかに「G2」と「G20」へと流れています。
 「G8」という立場を主張したい日本の影響力・存在感は低くな
 りつつあります。


 今、日本は20分の1の国家になってしまったということを事実
 として受け止めるべきだと私は思います。


●日本にとって、「米国=最重要国」と言えるのか?


 2009年8月10日号のTIME誌の表紙には、
 「Can China Save The World?(中国は世界を救えるか?)」
 という見出しが躍り、消費大国となった中国が世界を救済
 できるのか?という点について考察されていました。


 大筋の論調としては、China Flies High(中国は高く飛んでいる)
 というもので、今年のGDPの成長率からも、中国経済に対しての
 明るい見通しを示していました。


 そのような中で、米国との関係性が深い「日本・中国・インド」
 について、それぞれが米国にとって経済的にどれほど強い結び
 つきを持っているのかを考察している記事がありました。


 まず、米国に対する輸出入を含めた貿易総額です。03年までは
 日本と中国は2,000億ドル弱でほとんど同額でした。


 しかし、2008年においては中国が大幅に伸ばしており、
 約4,000億ドルという日本の倍額を記録しています。


 20年前には米国にとっての最重要国は日本であり、中国やインド
 とは比べるまでもない状態でしたが、今後は中国=最重要国
 という図式になることは、この数値を見ても明らかだと思います。


 おそらく来年以降、日本との差はさらに開いていくことになる
 でしょう。


 米国への直接投資を見ると、まだ日本(約800億ドル)が中国
 (約400億ドル)を上回っています。


 ただ、日本からの投資額は06年をピークに逓減しているのに
 対し、中国からの投資額は06年から08年にかけて、約2倍の
 伸びを見せています。この点においても、日本が安泰だとは
 言えないかも知れません。


 最後の統計が米国への留学生の数です。ここでは日本と中国を
 押さえて、インドがトップシェアを獲得しています。


 ただし、3国の中で日本だけは90年代半ばをピークに、留学生
 の数が減っています。


 2000年以降も伸び続けているインド・中国とは、明らかに違う
 傾向が見て取れます。草食系男子などと呼ばれる日本の男子ですが、
 海外留学をするという気概もあまり持ち合わせていないのかも
 知れません。


 こうした統計数値を見ていると、米国からすれば日本はどこに
 いったのか?と問いたくなるでしょう。


 日本にとって「米国=最重要国」という認識がないと感じられ
 ても不思議ではありません。非常に残念な事態ですが、これが
 日本の現状だと思います。


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