大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON270 証券取引所統合~大証の強みとグローバル化への課題~大前研一ニュースの視点~

2009年7月10日

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 証券取引所統合
 大証とジャスダック
 来年4月にも合併へ
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●大証がとるべき道は、日経225という関連の強化


 大阪証券取引所は、子会社のジャスダック証券取引所と来年4
 月にも合併する方針を発表しました。


 先月29日、大阪証券取引所の諮問機関、市場統合のあり方に
 関する委員会は傘下のヘラクレスとジャスダックの市場統合後
 の名称について「ブランド力で優れるジャスダックが有力」と
 する報告書を発表しています。


 この流れに乗ると将来的には大証としての名前が残るよりも、
 ジャスダックという名前だけが残ることになるのでしょうが、
 これは非常に面白いと思います。


 日本国内には、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌という5つの
 証券取引所があり、加えて新興取引所としてジャスダックと
 TOKYO AIM、そしてマザーズ等の振興企業向けの証券市場が
 存在しています。


 大証は東証に次ぐ規模ではありますが、確かに大証というブラ
 ンドを客観的に見ると、何か物足りないものを感じます。東証
 のサブ機関のような印象を受ける人も多いでしょうし、それは
 否定できないものだと思います。


 しかし一方で、大証は非常に大きな特徴を持った証券取引所で
 す。それは日経225先物オプション取引を扱っているという点
 です。


 実は、東証はこの商品を扱っていません。ここに大きなチャン
 スがあると思います。私ならここに勝機を見出し、日経225先
 物や同オプション関連で市場のボリュームを取りに行き、東証
 のシェアを奪うということを考えます。


 現在のような株式市場の上昇局面では、個別銘柄を選ぶことが
 難しいため、インデックスを選択したいと考える人が多くなり
 ます。


 日経225は、日経平均(東証1部上場企業の中からバランスを
 考慮して選ばれた225種の株価平均)というインデックスを利
 用していますから、現在の市場に求められていると言えると思
 います。


 同様に、東証には「TOPIX」というインデックスがあるのです
 が、こちらは東証に上場されている全銘柄を対象としている点
 に違いがあります。


 先物オプション取引をしつつ、現物株でフォローしていく、と
 いう投資パターンを考えたとき、日経225であれば225種の株
 式ですから何とか現物株の対応が可能ですが、TOPIXの全銘柄
 をフォローすることは不可能です。


 この点において、私は大証の「日経225」は大きなアドバンテ
 ージを持っていると感じています。


 また今現在の状況で見ても、現物株の取扱高で見ると、東証を
 90とすると大証は10くらいの規模に過ぎませんが、オプショ
 ン先物取引では大証の方が数倍のボリュームを持っています。
 ここを大きく伸ばしていくべきだと私は思います。


 このような点を考えると、ジャスダックというブランドを残す
 のは問題ないと思いますが、「ジャスダック=新興市場」という
 イメージは払拭するべきでしょう。


 ジャスダックとヘラクレスと合わさってみたところで、新興市
 場は大したボリュームではありません。それよりも、日経225
 関連を追及していくことで面白い展開を見せて欲しいと期待し
 ています。


●大証が世界と戦うためのボトルネックは、システムだ


 東証に対してはデリバティブ取引で一日の長がある大証ですが、
 世界に目を向けるとその規模は極めて小さいものだと言わざる
 を得ません。


 2008年世界の市場別デリバティブ出来高を見ると、1位のシカ
 ゴ・マーカンタイル取引所(CME)が32.78億枚に対して、大
 阪証券取引所は15位でわずか1.64億枚の出来高になっています。


 CMEに続いて、
 2位:ユーレックス(31.73億枚)、
 3位:韓国取引所(28.65億枚)が圧倒的な大きくなっています。


 NYSEユーロネクスト(16.76億枚)、
 サンパウロ証券取引所(7.42億枚)、
 インド国立証券取引所(5.90億枚)、
 ヨハネスブルグ取引所(5.14億枚)、
 大連商品取引所(3.13億枚)


 など、4位以下はTOP3に比べると半減しますが、それでも大証の
 数倍の規模です。



 日本では先物・オプションといったデリバティブ市場で大きな
 ボリュームを誇っている大阪証券取引所ですが、これから世界
 の証券取引所を相手にするためには、根本的な問題を解決しな
 ければこの差は埋まらないでしょう。


 日本がこれだけデリバティブの分野で遅れている最大の理由は、
 「システムが対応していない」ということです。デリバティブ
 取引では、プログラム売買が基本になります。


 一般投資家が現物株を買うという取引スタイルに比べると、将
 来のものを買っておくことでヘッジをかけるという特性上、デ
 リバティブの取引ではプログラム売買による大量のトランザク
 ションが発生することが多くなります。


 世界一のデリバティブ出来高を誇る米・シカゴ・マーカンタイ
 ル取引所(CME)などは、24時間電子取引システム「Globex」
 に象徴されるように非常に優れたシステムを保有しています。


 大証は今後OMXのシステムを導入するという方向で話が進ん
 でいるようですが、最終的にはまだ結論が出ていないようです。
 早くプロジェクトを進めてくれることを期待したいところです。


 技術的な側面では世界からかなり後れを取ってしまった大阪証
 券取引所ですが、将来有望だと私は思います。


 「日経225に注力する」という戦略を間違えずに、そして世界
 と戦うために大きな問題となっている「システムという課題」
 をクリアしていけば、デリバティブ取引所として活躍できると
 思います。今後の大証の動向に期待しています。


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