大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON268 千葉市長選~志高く勤勉な若者が活躍できる土壌を作れ~大前研一ニュースの視点~

2009年6月26日

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千葉市長選
熊谷俊人氏が初当選
民主党推薦・31歳
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●一新塾出身の新千葉市長の熊谷氏に期待


 収賄罪で起訴された鶴岡啓一前市長の辞職に伴う千葉市長選は
 14日投開票され、民主党が推薦する無所属新人の前市議、熊谷
 俊人氏(31)が初当選しました。


 投票率は43.50%で、2005年の前回選挙を6.30ポイント上回
 る結果となりました。


 前職が汚職で失脚したというのに、その後釜として前副市長と
 いうナンバー2の立場だった林孝二郎氏(63)を擁立したこと
 自体、自民・公明両党の戦略ミスだといわざるを得ないと思い
 ます。


 今回当選を果たした熊谷俊人氏は、NPO法人・政策学校の
 「一新塾」の出身です。


 06年5月から1年間「一新塾」に所属し、政治活動について
 きちんと勉強しているというのは、評価に値する点だと思います。


 実際、熊谷氏が「一新塾」で学んでいたということが、いくつ
 かのマスコミでも取り上げられており、まじめに政治について
 研鑽を積んでいたというアピールポイントになっているようです。


 「議員パスで新幹線のグリーン車に乗れるのが嬉しい」などと
 発言してしまう議員や、タレント出身で政治についてまともに
 勉強したことがない人たちと比べると、その違いは一目瞭然と
 言えるかも知れません。


 「一新塾」は「理想を語り、 政策を論じ、自らが行動し社会創
 造のプロセスに参加してゆく『主体的市民』を作る」ことを目
 的に、1994年私が創設しました。


 現在も私はファウンダーですが、組織自体はNPO法人として
 活動しています。


 これまでに「一新塾」から国会議員は5名、現職の地方議員は
 67名を輩出するにいたっていますから、その実績は客観的に見
 ても評価に値すると感じています。


 「一新塾」出身者は創設から15年間で3000名を超えるほどに
 なっています。


 さらにこの3000名の中から、熊谷氏のような若い世代が活躍
 してくれることを、私は大いに期待しています。


 かつての私の事務所「大前研一事務所」の出身者も、その多く
 が議員になって活動しています。私が携わった組織からこうし
 た人材が育ち、そして活躍してくれるのは何より嬉しく感じて
 います。


●日本の変革期には、20代の若者が活躍


 31歳という全国で最も若い熊谷氏の市長当選を受けて、明治維
 新の頃活躍した「人材」について考えさせられました。


 明治維新を先導し、日本を近代国家へと導く変革を成し遂げた
 人たちの多くは、20代という若さでした。


 例えば、1860年に日米修好通商条約の批准書を携えた遣米使節
 に随行した咸臨丸には、福澤諭吉など、後に日本の発展に大き
 な貢献をした人物も乗船していました。


 福澤は当時20代の若者でした。私はどのようにして、当時の
 為政者が日本の近代化を担う「人材」となる若者を見つけ出し
 たのかという点に非常に興味を持ちました。


 当時の渡米は、ある意味、命がけと言っても良かったと思いま
 す。そのような危険な渡米だったからこそ、国家の将来を担う
 人材として、その人選は厳しかったのではないかと想像できま
 す。


 おそらく10代の頃には頭角を現していたような人でなければ、
 咸臨丸への乗船を推挙されることはなかったように思います。


 そのような稀有な人材をいかにして見つけ出すことが出来たの
 か? その人材選定のノウハウが何かドキュメントとして残っ
 ているものはないか? いくつか探してみたのですが、残念
 ながら見つかりませんでした。


 この150年の歴史を紐解いてみると、日本が大きく変革する時
 代には、20代の若者が大きく活躍しています。


 松下幸之助氏や本田宗一郎氏なども、20代のうちに起業し、30
 代の頃には、すでに組織の骨格を作り上げて固めることに成功
 しています。


 日本の場合には、これまでの150年間で2回の大きな変革期を
 体験したと言えると思います。3回目の機会はITバブルの崩壊
 で空振りに終わり、残念ながら上手くいきませんでした。


 今、「一新塾」出身者を見ていると、30歳前後で積極的に手を
 上げて、どんどんと活躍の場を広げていこうとしています。


 そんな彼らの活動を見ていると、本当に私自身「一新塾」を
 創って良かったと感じています。先ほども述べたように、
 「一新塾」は「自ら社会創造のプロセスに参加する主体的な
 市民を作る」という目的からスタートしました。


 それが1つ1つ形になってきていると感じます。これからの日
 本の変革期を担う人材として、ぜひ活躍してもらいたいと思い
 ます。


 千葉市長に当選した熊谷氏は、千葉都市モノレールの社長公募
 を検討するなど、色々と新しい試みを始めているようです。


 ただ、財政事情が厳しい千葉市には取り組むべき問題が山積し
 ています。それらの問題解決の任に堪えられるかどうか、当た
 り前ですが、これからが熊谷氏の真価を問われる時です。


 熊谷氏の手腕に期待しつつ、今後の動向を注目していきたいと
 思います。


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