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〔大前研一「ニュースの視点」〕#127 米国預金金利、年5%上回り。預金獲得に注力

2006年8月29日

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 米国預金金利
 年5%上回り。預金獲得に注力
 高金利競争で銀行の儲けは縮小
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●金利・為替リスクのいずれを考えても、国際投資は必須


米国の普通預金の金利が上昇し、
5%を上回る商品が出てきました。


自らの利益を圧迫してまで、米銀行が金利を上昇させているのは、
預金者獲得のために必要だからです。


逆に言えば、そのくらいの金利をつけなければ米国の国民は、
銀行にお金を預けてくれないという状況を
推測することができるでしょう。


一方、日本に眼を向けてみると、
各銀行の預金金利は、0.1%~0.2%の間で
横並び状態になっています。


米国の預金金利は5%、日本の預金金利は0.2%という数字を
見ると、とても同じ金融商品とは思えない格差になっています。


このような状況を見ていつも私が感じるのは、
なぜ日本人は、こんな金利格差を目の当たりにしてもなお、
海外の銀行へお金を移動させないのか?ということです。


預金ですから、いわゆる元本割れの危険性がある
リスク商品ではないのです。


そして、同じ金融商品なのに利率が25倍にもなるのに、
そちらを選ばないというのが私には理解できないのです。


結局のところ、論理的な理由などなく、
単に過去に失敗した苦い経験があるとか、
国から受けた教育をそのまま信じているというところが、
本当の理由ではないでしょうか。


「そうじゃない。
外貨建ての預金を持つことになると
為替リスクが発生するではないか。
その危険性は大丈夫なのか?」


と指摘する人がいるかも知れません。


そこで、米ドルの推移を見てみると、
85年のプラザ合意直後には価格の乱高下が見られ、
最近の10年では、一時130円を越えた時期もありましたが、
ほぼ1ドル100円~120円の間で納まっています。


ですから、実際には年5%の預金金利があれば、
この10年の例を見る限り、為替リスクが発生しても
吸収してくれる可能性が極めて高いということです。


さらに言えば、日本円だけで資産を持っていることは、
円が安くなれば資産価値は下がるので、
逆に為替リスクを回避できているとは
言えないのではないでしょうか。


為替リスクの危険性について言うのであれば、
為替のボラティリティ(変動幅)は
長い目で見れば金利差に反映されるわけですから、
黙って資産をドル・ユーロ・円で
資産を3分割しておく方法が最も得策ですし、
為替リスクに一喜一憂しない方法だと思います。



●日本円の弱体化。もはや国際通貨ではない日本円だからこそ…


18日、ユーロが対円で史上最高値の148円強を記録しました。


ユーロは99年に140円弱で形成されてから、
一時100円を割り込んだのですが、
2000年後半から徐々に上げ始め、
約6年弱で今回の史上最高値をつけるまで上昇してきました。


このユーロの価格推移を見ても、国際分散投資をすること、
しかも米ドルだけをターゲットにするのではなく、
米ドル・ユーロ・円の3つで国際分散投資を
する必要性があると私は考えています。


1つには、ユーロ建ての資産を持っていれば、
年2~3%の金利がついた上に、
このように価格も上昇しているのですから、
日本円だけの資産形成に比べて有利だということです。


もう1つには、国際通貨としての日本円の弱体化を
見て取ることができるからです。


ここは非常に重要な点です。


ユーロがこれだけ値段を上げてきた理由の一つは、
米ドルから資金が移行したということでしょう。


そのため、ユーロに対抗するため、現在米ドルは、
金利を上げて、ユーロから再び資金を引き剥がして
ドルに移行させようとしています。


このように米ドルとユーロが喧嘩をすると、
どういうことが起こるでしょうか?


それは、結局、米ドルとユーロを強くすることにつながり、
日本円が1人弱体化するという結果を招くことに
なってしまうでしょう。


実際に、その兆しとなる数値が顕在化してきているのです。


それは、かつては世界の外貨準備金の
10%を占めていた日本円が、
現在では3.4%に後退してしまったという事実です。


米ドル(66%)、ユーロ(25%)はもちろんのこと、
英ポンド(4%)にも劣る水準になってしまっているのです。


実際、貿易決済の現場でも、米ドル・ユーロ建て決済が多く、
日本円での決済は非常に少なくなってきています。


かつて「円の国際化」などと
声高に叫ばれたことがありましたが、
もはや、日本円は国際通貨と
呼べるものではないと私は思います。


このように円が国際通貨として通用しなくなって、
弱体化が進んでくると、
益々為替リスクを負う可能性が高くなるでしょう。


この点からも、資産を国際分散投資することは、
必須なことではないでしょうか。


投資・資産形成に関しては、
日本人の非論理的な国民性は際立っています。


リスクがなく得だと言われても動かない、
リスクが高く危険だといわれても留まっている。


過去に痛い経験をしたという人もいるのでしょうが、
それも含めて、投資・資産形成に関する教育不足と
いうことが否めないと思います。


自分の資産をどのように形成し、どのように保護し、
どのようにリスクを取って、
どのように運用していくべきか。


自分の頭で考えられる教育の必要性を強く感じています。


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