■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
独フォルクスワーゲン
第1四半期の販売台数
トヨタ抜き首位の見通し
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
●幅広い車種を揃えるフォルクスワーゲンが、トヨタのライバル
17日、独フォルクスワーゲンは、第1四半期の世界の販売台数
は前年同期比11%%減の約139万台となったと発表しました。
独政府の販売奨励策が寄与し、主要市場での需要が堅調となっ
たことが背景にあります。第1四半期の自動車販売台数でトヨ
タ自動車を抜き、首位となる見通しです。
数ヶ月前、トヨタが販売台数でGMを抜いて世界一になったと
きに私が説明したことが、まさに現実になってきました。
GMを抜き世界一になったトヨタにとって、今後世界一を競う
ライバルはフォルクスワーゲンになる可能性が高いということ
です。
もちろん、未だ第1四半期だけの結果ですから今後の結果は分
かりません。しかし、フォルクスワーゲンがトヨタにとって戦
いづらい相手であることは間違いないと私は見ています。
その根拠は、日米欧の主要自動車メーカーの資本関係を見ると
分かります。
フォルクスワーゲンはポルシェを最大の株主にしつつ、チェコ
のシュコダ、スペインのセアトという低価格車を得意とする会
社と、アウディ、ベントレーといったハイエンド車を得意とす
る会社を持っています。
※「日米欧の主要自動車メーカーの資本関係」チャートをみる
トヨタがGMを追い越したときには、GMの車よりもトヨタの
車の方がオールラウンドでカッコイイという印象がありました
が、相手がフォルクスワーゲングループとなると「カッコイイ」
という意味では、比べるのすら難しい気がします。
例えば、トヨタのレクサスは良い車ですが、ベントレー、アウ
ディ、ポルシェとは比べてしまうと高級感では見劣りしてしま
うかもしれません。
また、フォルクスワーゲンは低価格車の市場でも強さを見せて
います。チェコのシュコダ、スペインのセアトを保有しつつ、
さらに中国市場ではナンバーワンになっていますし、ロシアを
始めとする途上国への進出も抜かりはありません。
一方、トヨタは2008年度の連結販売台数のうち、約60%を日米の
2カ国が占めており、新興国市場の開拓に課題を抱えています。
ポルシェ、ベントレーというハイエンド車から、セアト、シュ
コダといった低価格車までカバーするラインアップは強力です。
フォルクスワーゲングループが持つ車種の広さはトヨタにとっ
て大きな脅威であり、今後の課題の1つになると思います。
●トヨタ、フォルクスワーゲン、そしてフィアット。「2強+1」の勢力図へ
今後、世界の自動車業界の勢力図は大きく塗り変わっていくと
思います。米ビッグスリーの時代は終わり、トヨタとフォルク
スワーゲンを中心に、フィアットが食い込んでくるような構図
になるのではないかと見ています。
フィアットはクライスラーの買収を検討しているようですが、
今後さらにGMやオペルのような会社を買収していけば、かな
り大きな規模に成長する可能性があります。
ただ、例えそうなっても、近い将来で見ればトヨタやフォルク
スワーゲンには及ばないでしょう。
フィアット傘下にはマセラッティ、フェラーリという超ハイエ
ンド車がありますが、これらの市場は極めて小さいものです。
トヨタ並みにミドルエンドの車のラインアップを揃えてくるよ
うになると、世界のトップ争いができるようになるでしょうが、
GMやオペルを買収するくらいであれば、トヨタやフォルクス
ワーゲンにとって脅威になるレベルではありません。
このように見てくると、トヨタとフォルクスワーゲンの一騎打
ちという構図が浮かび上がってきます。
しかし、実際のところ今のままではフォルクスワーゲンの方が
有利だと私は思います。
トヨタは平均的に非常に質が高い車を揃えていますが、例える
なら「Jazzのような」あるいは「セクシーな」印象を与える車
種が欠けています。
以前、トヨタは1600万円ほどの価格でスポーツカーの販売を
予定していましたが、先駆けて日産にスカイラインGT-Rを800
万円で発売されてしまったせいなのか、未だ開発中とのことで
発売されていません。
一方のフォルクスワーゲンは、この分野にアウディ、ベントレ
ー、ポルシェといった車種を持っています。
トヨタはこれらの車種と互角に戦えるようにならなければ、最
終的にフォルクスワーゲンに勝てる見込みも薄くなると思いま
す。
現時点において販売台数で抜かれてしまったのは、トヨタその
ものが原因というよりも、ドイツなどの欧州の国が新車販売に
対して強力な補助を実施したためですから、さほど気にする必
要はないでしょう。
この点について、欧州は見事に「心理経済学」を理解した対策
を講じており、それが効果を発揮しています。
トヨタをサポートするという意味でも、日本の役人や政治家は、
ぜひ今の欧州を見習ってもらいたいところです。
世界大不況を経て、自動車業界の勢力図は一変しました。トヨ
タ、フォルクスワーゲン、そしてフィアットを中心に今後どの
ような展開を見せていくのか注目していきたいと思います。