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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON249 築地移転問題から見える東京都の課題~五輪招致より優先することはないのか?~大前研一ニュースの視点~

2009年2月20日

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 築地移転問題 組合理事長選で賛否両候補が同数票
 新理事長選任は先送り
 五輪招致 東京五輪の経費 46億2000万円計上
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●五輪招致。東京はシカゴよりも圧倒的に不利


 9日、東京・築地市場の約770の水産仲卸業者が加入する同市場
 最大の「東京魚市場卸協同組合」の理事長選挙があり、豊洲
 地区への移転に賛成する候補と、反対する候補が15票ずつを
 獲得し、新理事長選任は17日の理事会以降に先送りになりま
 した。


 市場移転問題について、あらゆる問題・課題が宙に浮いてし
 まって、一向に解決の糸口が見えてきていませんが、これは
 東京への五輪招致が原因になっています。


 東京都の新年度予算案に、2016年の東京五輪招致の経費として
 46億2000万円が計上され、五輪招致の予算は3年間で100億円に
 なる見通しとなっています。


 しかし、招致イベントの開催費用として都内の全区市町村に
 一律1000万円を支給するなど、都議会などで使途の妥当性を問
 う声も出ているとのことです。


 まず五輪招致に対する現状について、東京都とシカゴ(米国)
 の一騎打ちの様相という趣旨の報道が目立ちますが、私はリオ
 デジャネイロ(ブラジル)も対立候補として有力だと思います。
 東京の立場は、日本で報道されているほど強くないと感じます。


 また実際にシカゴと一騎打ちになったとすると、相当「不利」
 な立場に立たされる可能性があります。


 なぜなら、最終的にシカゴが五輪の候補地として残ってくれば、
 シカゴとの関係が深いオバマ米大統領が登場する可能性が高い
 からです。


 そして、すでにシカゴはこの戦略で動き出しています。13日に
 公表されたシカゴの2016年五輪招致に向けた立候補ファイル
 は、「オバマ効果」を最大のセールスポイントにしたものに
 なっています。


 立候補ファイルでは、シカゴ市で行われたオバマ大統領の勝利
 演説集会や、候補時代のオバマ氏がダーレイ市長と握手する写
 真などを大きく掲載されているとのことです。


 ソチ(ロシア)に2014年の冬季五輪を招致させることに成功
 したプーチン首相の演説を思い出さずにはいられません。


 もしオバマ米大統領が演説したら、日本の石原都知事では到底
 太刀打ちできないでしょう。順当に行けば、シカゴへの五輪招
 致の可能性が最も高いと思います。


 オバマ米大統領がシカゴへの五輪招致に消極的な態度を示すよ
 うなことがない限り、番狂わせは起きないのではないかと私は
 見ています。


●東京都には、五輪招致よりも優先すべき課題がある


 東京がシカゴに対して分が悪いかどうは別として、私は基本的
 に今回の東京への五輪招致には反対しています。


 というのは、五輪招致という「お祭り」に興じる以前に東京都
 には「都市機能」を働かせるためにもっと優先すべき事項がた
 くさんあると思うからです。


 その1つが築地、晴海、豊洲といった地域の開発です。この地
 域を東京都の都市機能としてどのように活用するか、そしてそ
 のためにはどのように開発を進めるべきかということは、とて
 も重大な課題だと思います。


 それを棚上げにして、五輪招致という「お祭り」に興じてばか
 りいるのは本末転倒ではないでしょうか。


 おそらく五輪招致が片付かないと、築地移転のプロジェクトも
 遅々として進まないと思います。これは大きな問題だと指摘し
 たいのです。


 また五輪招致にあたって、都議会でも指摘されているという
 「全区市町村に一律1000万円を支給する」という公金の使い方
 については、ただ呆れるばかりです。常識外れの愚策だと思い
 ます。


 2008年の北京五輪を見て一面ではすごさを感じましたが、私は
 中国の中央集権的な特徴が色濃く反映された五輪だったと感じ
 る部分がありました。


 おそらく私以外にもそのような印象を持った人が多かったと思
 います。その中央集権的だった北京五輪への「嫌気」から、反
 対に五輪のテーマとして「エコ」や「フレンドリー」を掲げる
 機運が出てきています。


 日本ではスタジアムの屋根への太陽光発電の利用や電気自動車
 の使用などで、「エコ五輪」をアピールするということです。


 しかし、果たして、100億円ものお金を招致活動にばら撒いて
 おいて「エコ」と言えるのでしょうか?私には甚だ疑問です。


 主張していることと実際の政策が全く一致していないというの
 では、お話になりません。


 東京への五輪招致というのは甘美な香りを放っているのだと思
 います。「お祭り」に興奮する人は多いでしょう。


 しかし東京都のトップマネジメントという立場ならば、現在「東
 京都」という都市が抱える課題は何か、その中でも優先して対
 処すべき課題は何か、ということを考えるべきです。


 石原都知事、都議会議員、都の幹部職員の方にも、こうした意
 識を持って頂きたいと思います。


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