■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
独フォルクスワーゲン
08年世界販売 623万台~前年比0.6%増加
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
●新興国に強さを見せるフォルクスワーゲンの好調さ
欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲンが11日発表した
2008年の世界販売は、新興国での販売が好調で過去最多記録を
更新し、前年比0.6%増の623万台になりました。
ただ、世界的な自動車市場低迷で、今年は減速する可能性も
あるとのことです。
世界的な自動車業界の壊滅的な状況に比べると、フォルクスワ
ーゲンは比較的好調な業績を見せています。
競合他社に比べて新興国に強いというのが、フォルクスワーゲ
ンの特長であることは、この5年間の販売台数を見ても一目瞭
然です。
※フォルクスワーゲンの販売台数(チャートを見る)
→
ドイツ国内販売でも強さは発揮していますが、それほど飛びぬ
けて伸びているわけではありません。一方で、ヨーロッパを含
む海外では06年以降、急激に販売台数を伸ばしていることが
分かります。
とりわけ中国において06年には70万台強だったものが08年
には100万台を突破しました。中国・ブラジル・ロシアという
新興国における販売台数は、好調に推移しています。
このようなフォルクスワーゲンの快進撃に重要な役割を果たし
ている人物が2009年2月2日号のFORTUNE誌の表紙を飾っていま
した。
それは、現在ポルシェのCEOを務めているヴィーデキング氏で
す。2009年1月、ポルシェは同社が取得したフォルクスワーゲ
ンの株式が50%を超え、子会社化したと発表しましたが、ヴィ
ーデキング氏はまさにこの買収の立役者だと言えます。
ヴィーデキング氏は、歴史的に業務提携関係にあり、ポルシェ
の創業者一族が保有していたフォルクスワーゲンの株式を買い
増し、あっという間にフォルクスワーゲンに対する持ち株比率
を2009年1月現在で50.76%まで押し上げました。
今後さらにデリバティブ取引などで追加取得できる権利も含め
ると75%まで買い増せる状況にまでなっています。
これにより、ポルシェという小さな会社がフォルクスワーゲンと
いう大企業を傘下に収めることに成功したのです。
●ポルシェが今後のトヨタの一番のライバルになる
ポルシェ自体は小さな会社ですが、フォルクスワーゲンを傘下
に収めることにより、ポルシェは量産体制を作り始めています。
例えば、ポルシェには「カイエン」という四輪駆動の車種があ
ります。
おそらくポルシェが設計開発を担当し、エンジンまで提供しつ
つ、実際の「カイエン」を量産体制するのに、フォルクスワー
ゲンを活用することもできるでしょう。
ヴィーデキング氏はポルシェ叩き上げの人ですが、この手のこ
とを非常にクレバーに着手しています。フォルクスワーゲン株
を買い増した手腕も、ヘッジファンドよりも上手なやり方だっ
たと評されているほどです。
さらには、この買収劇によってフォルクスワーゲンの株価が一
時期世界最大の時価総額に達するほど急上昇をした際には、こ
れを利用して2兆円ものキャッシュをポルシェに取り込んでし
まったのですから、見事という他ありません。
FORTUNE誌の見出しでも「THE MAN WHO OUTFOXED THE
MARKET(マーケットを出し抜いた男)」と紹介されています。
またFORTUNE誌では、今年の夏にポルシェから発売予定の4ドア
スポーツカー「パナメーラ」の記事も掲載されていましたが、
これも面白いコンセプトの車だと思います。
ポルシェの車でありながら、小さくて窮屈ではなく、セダンで
ゆったりと高級感があるという車になっています。
この車は、1台当たり120万円~130万円の利益が出るとのことで
すから、他のメーカーの車とは利益率が全く違うことが分かる
と思います。逆に言えば、だからこそ「儲かる」のでしょう。
この他、ポルシェの完成車を保管しておく、円形垂直型の「バ
ーティカル・ストレージ・ライン」も紹介されていましたが、
ポルシェとしての美観を損なうことなく、小さなスペースに多
くの車を保管できるという意味で非常に経済的だと思います。
小が大を生み出す典型的な形を実現しているのがポルシェだと
言えるでしょう。
今、世界的な自動車業界の不況の中で、日本のトヨタも苦戦を
強いられています。特に北米での販売不振や途上国にリーチで
きていないという点が大きな課題の1つになっていると思います。
その点から考えると、ポルシェ、フォルクスワーゲンが今後の
トヨタにとって一番のライバルであり、今後の悩みの種になっ
ていくのではないかと私は思います。
米ビッグ3によるパワーバランスが崩壊した今、世界の自動車
業界の動向を見ていく上でも、ポルシェ、フォルクスワーゲン
には注目していきたいと思います。