大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON246 ポルシェ好調~ユニークなポルシェの経営手法から何を学べるか~大前研一ニュースの視点~

2009年1月30日

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
独フォルクスワーゲン
08年世界販売 623万台~前年比0.6%増加
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■


●新興国に強さを見せるフォルクスワーゲンの好調さ


 欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲンが11日発表した
 2008年の世界販売は、新興国での販売が好調で過去最多記録を
 更新し、前年比0.6%増の623万台になりました。


 ただ、世界的な自動車市場低迷で、今年は減速する可能性も
 あるとのことです。


 世界的な自動車業界の壊滅的な状況に比べると、フォルクスワ
 ーゲンは比較的好調な業績を見せています。


 競合他社に比べて新興国に強いというのが、フォルクスワーゲ
 ンの特長であることは、この5年間の販売台数を見ても一目瞭
 然です。


※フォルクスワーゲンの販売台数(チャートを見る)
  → 


 ドイツ国内販売でも強さは発揮していますが、それほど飛びぬ
 けて伸びているわけではありません。一方で、ヨーロッパを含
 む海外では06年以降、急激に販売台数を伸ばしていることが
 分かります。


 とりわけ中国において06年には70万台強だったものが08年
 には100万台を突破しました。中国・ブラジル・ロシアという
 新興国における販売台数は、好調に推移しています。


 このようなフォルクスワーゲンの快進撃に重要な役割を果たし
 ている人物が2009年2月2日号のFORTUNE誌の表紙を飾っていま
 した。


 それは、現在ポルシェのCEOを務めているヴィーデキング氏で
 す。2009年1月、ポルシェは同社が取得したフォルクスワーゲ
 ンの株式が50%を超え、子会社化したと発表しましたが、ヴィ
 ーデキング氏はまさにこの買収の立役者だと言えます。


 ヴィーデキング氏は、歴史的に業務提携関係にあり、ポルシェ
 の創業者一族が保有していたフォルクスワーゲンの株式を買い
 増し、あっという間にフォルクスワーゲンに対する持ち株比率
 を2009年1月現在で50.76%まで押し上げました。


 今後さらにデリバティブ取引などで追加取得できる権利も含め
 ると75%まで買い増せる状況にまでなっています。


 これにより、ポルシェという小さな会社がフォルクスワーゲンと
 いう大企業を傘下に収めることに成功したのです。


●ポルシェが今後のトヨタの一番のライバルになる


 ポルシェ自体は小さな会社ですが、フォルクスワーゲンを傘下
 に収めることにより、ポルシェは量産体制を作り始めています。


 例えば、ポルシェには「カイエン」という四輪駆動の車種があ
 ります。


 おそらくポルシェが設計開発を担当し、エンジンまで提供しつ
 つ、実際の「カイエン」を量産体制するのに、フォルクスワー
 ゲンを活用することもできるでしょう。


 ヴィーデキング氏はポルシェ叩き上げの人ですが、この手のこ
 とを非常にクレバーに着手しています。フォルクスワーゲン株
 を買い増した手腕も、ヘッジファンドよりも上手なやり方だっ
 たと評されているほどです。


 さらには、この買収劇によってフォルクスワーゲンの株価が一
 時期世界最大の時価総額に達するほど急上昇をした際には、こ
 れを利用して2兆円ものキャッシュをポルシェに取り込んでし
 まったのですから、見事という他ありません。


 FORTUNE誌の見出しでも「THE MAN WHO OUTFOXED THE
 MARKET(マーケットを出し抜いた男)」と紹介されています。


 またFORTUNE誌では、今年の夏にポルシェから発売予定の4ドア
 スポーツカー「パナメーラ」の記事も掲載されていましたが、
 これも面白いコンセプトの車だと思います。


 ポルシェの車でありながら、小さくて窮屈ではなく、セダンで
 ゆったりと高級感があるという車になっています。


 この車は、1台当たり120万円~130万円の利益が出るとのことで
 すから、他のメーカーの車とは利益率が全く違うことが分かる
 と思います。逆に言えば、だからこそ「儲かる」のでしょう。


 この他、ポルシェの完成車を保管しておく、円形垂直型の「バ
 ーティカル・ストレージ・ライン」も紹介されていましたが、
 ポルシェとしての美観を損なうことなく、小さなスペースに多
 くの車を保管できるという意味で非常に経済的だと思います。


 小が大を生み出す典型的な形を実現しているのがポルシェだと
 言えるでしょう。


 今、世界的な自動車業界の不況の中で、日本のトヨタも苦戦を
 強いられています。特に北米での販売不振や途上国にリーチで
 きていないという点が大きな課題の1つになっていると思います。


 その点から考えると、ポルシェ、フォルクスワーゲンが今後の
 トヨタにとって一番のライバルであり、今後の悩みの種になっ
 ていくのではないかと私は思います。


 米ビッグ3によるパワーバランスが崩壊した今、世界の自動車
 業界の動向を見ていく上でも、ポルシェ、フォルクスワーゲン
 には注目していきたいと思います。


問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点