大前研一「ニュースの視点」Blog

KON745「福山通運/キャッシュレス決済/NTT/中国EV大手/韓国・現代自動車~NTTグループの見直しをするべき時期が来た」

2018年9月28日 NTT キャッシュレス決済 中国EV大手 福山通運 韓国・現代自動車

本文の内容
  • 福山通運 日曜の集荷・配達を中止
  • キャッシュレス決済 QR決済さらに多様化
  • NTT グループ一体で資材調達へ
  • 中国EV大手 中国新興EV、生存競争激しく
  • 韓国・現代自動車 鄭義宣氏が総括主席副会長へ

日曜の配達中止は英断


日経新聞が21日報じたところによると、福山通運は10月から順次、日曜日の企業向け荷物の配達を取りやめるとのことです。総務省も郵便物の配達を平日のみとする検討に入るなど、働き方改革の動きが広がってきているとしています。

福山通運の配達も郵便局の配達も、土日を取りやめるというのは良い判断だと思います。引受郵便は今でも年間数億通ありますが、その中には年賀状や暑中見舞いなども含まれています。

私の実感としては、郵便で配達されるものの中に「受け取ることが絶対に必要」というものがほとんどありません。以前は電力使用の明細などを郵便で受け取る必要がありましたが、今はそうではありません。こうした実態を考えても、土日の配達をやめるというのは英断だと思います。



キャッシュレスでATM不要は当然の流れ


日経新聞は22日、「QR決済さらに多様化」と題する記事を掲載しました。スマホを使ったキャッシュレス決済について特徴ある機能を打ち出す新規参入組が増えています。これらはポイント還元率よりも入出金方法などで特徴を打ち出していて、対応店舗が増えれば利用者の選択肢はさらに増えていくとのことです。

みずほFGの坂井社長は、インタビューで「ATMは公衆電話のように消えていく」と答えたそうですが、まさにその通りです。ただし私に言わせれば、「銀行も消えていく」と付け加えたくなりますが。

ATMの設置台数は横ばい状態です。キャッシュレス化が進めば、当然のことながらATMは不要になります。現状はセブンイレブンが積極的にATM設置を進めた結果、他の銀行は自社のATMではなく、ほとんどがセブンイレブンのATMを利用する形になっています。

最近になってローソン銀行が開業しましたが、「20年遅い」と思います。ATMの機械は高額ですし、散々セブンイレブンが活用してしまっています。端末によっては今から設置してもしばらく使えるものはあると思いますが、それほど寿命は長くないでしょう。なぜ、20年前にやらなかったのか?ローソンの親会社である三菱商事の時代感覚が、それだけ遅れているということだと私は思います。



NTTグループの見直しをするべき時期が来た


NTTは12日、パソコンやサーバーなどの資材をグループ一体で調達するための専門会社を米国に設立すると正式発表しました。NTTは1999年の再編時の政府方針で、持ち株会社とNTT東日本、NTT西日本が資材を共同調達することはできないことになっていますが、次世代通信方式「5G」を巡る競争が本格化するなか、グループ会社の調達をまとめてコストを削減する見通しです。

かつてNTTを分割した頃とは時代背景も違います。当時は、米国に「資材調達を海外に公開しろ」と指摘を受けたり、分割後に共同購買ができてしまうと「競争力が強すぎる」と禁止されましたが、今は状況が異なります。専門会社を米国に置くことで米国側からも文句は出ないでしょうし、今回のスキームは1つの抜け穴となると思います。

NTTの売上と利益を見ると、相変わらずNTTドコモが稼ぎ頭で、光ファイバー、フレッツ光なども利益を上げています。全体的には悪くない業績ですが、世界に目を向けると、アマゾンやAT&Tなどの売上高はNTTを凌駕しています。

米国も、かつては分割がありましたが、今ではベライゾンとAT&Tに集約されるようになりました。日本でもそろそろNTTについて見直す時期だと思います。もちろん、KDDIやソフトバンクからの反対は予想されますし一筋縄ではいかないでしょうが、NTTをまとめることでコスト削減を図れるようにすることは重要だと思います。行政が主導権を握って推し進めて欲しいところです。



中国EVメーカーも数社に絞られるのは必然


日経新聞は13日、「中国新興EV 生存競争厳しく」と題する記事を掲載しました。中国の新興EVメーカーで最も高い企業価値を誇る威馬汽車の沈暉CEOのインタビューを掲載。沈暉氏は「中国の約60社に上るEVメーカーのうち、生き残るのは3社」と指摘するとともに品質と価格の両立を追求した結果、今月発売する同社初のEV車は価格や航続距離をガソリン車並みの水準で実現したと紹介しています。

米国でも多くの自動車メーカーがありましたが、今は3社に落ち着きましたし、日本の二輪車業界でもかつて250社以上もあったメーカーが、今は4社に集約されています。そして国内競争で生き抜いた数社が世界に打って出て成功しています。

中国のEVメーカーでも同じようなことが起こるのは必然でしょう。60社のうち国内競争に勝ち抜くのが3~4社。その数社が世界化していくというフェーズに入っていく、ということです。

これは、例えばパソコン業界にしても、多くの産業が同じ道を辿っていることで特に驚くことではありません。



韓国は経営者の引き継ぎが遅い


韓国の現代自動車は14日、創業家出身の鄭義宣副会長が現代自グループナンバー2の総括首席副会長に就任したと発表しました。鄭義宣氏は、グループを率いる鄭夢九会長の長男で、韓国メディアが会長の健康悪化観測を報じる中、鄭義宣氏が次期総帥の最有力候補だと明確に示す人事となりました。

もともと鄭義宣氏が後継者と言われていたので、特に驚くことではありませんが、特徴的なのは今回のニュースを契機として、鄭夢九会長の体調不良について報じられていることです。

韓国の場合には、後継者に早い段階で引き継ぐということがほとんどありません。例えば、サムソン電子の李健熙会長は心筋梗塞で倒れ、健康状態を心配する声は絶えませんが、未だに正式に引き継いでいません。最も不幸な例は、ロッテでしょう。

こうした韓国企業の通例があるため、今回の場合には早い段階でナンバー2に指名したことで、かえって鄭夢九会長の健康問題を懸念されることになったのでしょう。


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※この記事は9月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

NTTは、パソコンやサーバーなどの資材を
グループ一体で調達する専門会社を
米国に設立すると正式発表しました。

大前はNTTに対して記事中で、まとめることで
コスト削減を図れるようにすることは重要であり、
行政が主導権を握って推し進めて欲しいと言及しています。

NTTは、次世代通信方式「5G」を巡る競争の本格化など
取り巻く環境や市場、競争環境が大きく変化しています。

このような状況の中、新たな顧客価値を創造し
グループ成長を構築していくために重要なことは、
制約条件に制約されないことです。

自分で変えられるもの(変数)と制約条件の2つに分けて考え、
与えられた環境の中で、自分が動かせる変数を目一杯使って
最大の利益を目指すことが大切です。



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