大前研一「ニュースの視点」Blog

KON733「安倍内閣 ~安倍政権は、何1つとして政策の成果を上げていない」

2018年7月6日 安倍内閣

本文の内容
  • 安倍内閣 支持率52%、不支持率42%

安倍政権は、何1つとして政策の成果を上げていない


日本経済新聞社が6月末に行った世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比10ポイント上昇し52%となったことがわかりました。一方、不支持率は11ポイント低下し、42%に下がり、4ヶ月ぶりに支持が不支持を上回りました。支持の理由としては、「国際感覚がある」「安定感がある」「指導力がある」などが挙がったとのことです。

現在、大きく支持に傾いているように聞こえますが、3年前にも似たような状況がありましたし、支持と不支持は拮抗している状況です。

「国際感覚がある」と言っても、政府専用機を使って海外に出掛けていく回数は多いものの、取り立てて成果は上がっていません。「安定感がある」というのも、私に言わせれば「森友・加計問題」において、堂々とブレずに嘘を突き通す安定感はありますが、皮肉以外の何物でもありません。

今の安倍政権は何1つ、今の日本が抱えている本当の問題に手を付けていません。3本の矢、憲法改正など、次々と口先だけの発表をしていますが、何1つ形になっていません。今は働き方改革やIR法を取り上げて重要法案などと言っていますが、冗談もほどほどにしてほしいと思います。これらが今の日本にとって重要法案のはずがありません。もっと日本にとって重要な問題は山ほどあります。

中央集権の体制を克服し、どのように地方に権限を与えるのか、という問題。労働人口が圧倒的に足らず、毎年減っているという問題。AIを始めとした新しい領域における人材が育っておらず、以前にも増して国際競争力を失っているという問題。

過去の首相の成功事例を振り返ると、こうした重要な問題に対してシングルイシューで取り組むことが必要だと私は思います。池田勇人元首相の所得倍増計画、田中角栄元首相の日本列島改造論、中曽根康弘元首相の三公社の民営化など、1つのことに絞って徹底的に実行しました。小泉純一郎元首相の郵政民営化も同様でしょう。小泉進次郎氏が進めていた農業改革に私は期待していましたが、農協の民営化に対して手綱を緩めてしまいました。残念ながら、父親のように徹底することはできないようです。


それでも、今回の調査で国民が安倍政権を「支持する」割合が高かったというのは、文科省の勝利かも知れません。先生の言うことを忠実に聞く、という教育が徹底された結果とも言えるでしょう。




野党が奮起しなければ、自民党は長期政権・独裁化の道を歩む


しかし一方で、安倍政権が信用され支持を受けているのではなく、野党がだらしなく空中分解している結果という見方もあり、私もまさにそう感じています。実際、世論調査の結果では「支持政党なし」が約30%になっています。この人たちは「都市型のサイレントマジョリティー」です。

民主党や民進党の調子が良かった時代には、彼らを取り込むことに成功し、いわゆる、「1区現象」を引き起こしました。そして、政権奪取にまで成功しました。しかし、その政権運営があまりに酷すぎました。それが未だに影響しています。

あのときの失政を認めて反省し、国民に詫びた上で新しい態度を示さない限り、民主党などの野党が再び力を持つことは難しいと思います。小池都知事が優勢だと思えば、踏み絵を踏んで希望の党に身を寄せ、小池都知事の人気に陰りが見えれば、手のひらを返したり、このようなことを繰り返していて国民から支持されるわけがありません。

今の自民党ではダメだと思っている国民は多いはずです。「森友・加計問題」への対応などを見ていても、自民党は嘘ばかりを並べ立てて、国民も野党もバカにしています。そのような状況を許してしまっていることが、最大の問題の1つです。

9月に総裁選が予定されていますが、再び安倍首相が選ばれるとなると、さらに状況は悪化していくことになると思います。

長期政権で独裁化し、掲げた政策は何1つとしてまともに完了せず、空中分解で成果ゼロ。それでも、それを追及し指摘するマスコミはほとんどいません。マスコミも、手痛いしっぺ返しを恐れていて、「長いものには巻かれろ」という姿勢になっているからです。特に、産経新聞と読売新聞はそのように感じます。

朝日新聞と毎日新聞は、若干、抵抗していますが、それも限界が見えています。朝日新聞が最後のあがきで、「森友・加計問題」関連の資料を掲載していますが、最終的には黙認したまま力技で押し切られることになりそうです。

自民党と共に政権を担っている公明党にしても、かつては明確な役割や思想がありました。しかし、政権政党の旨味を味わった今、真っ向から自民党を批判することはできず、やはり「長いものには巻かれろ」状態です。自民党からすれば、最も御しやすい党に成り下がってしまいました。

今の自民党への支持は、本当の意味での支持ではなく、野党の失速が生み出してしまったものです。このままでは、長期政権・独裁化という道を自民党は進んでいくでしょう。野党は過去を反省した態度を国民に示し、野党としての役割を果たしてもらいたいと強く思います。



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※この記事は7月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、安倍政権の話題を中心にお届けいたしました。

日本経済新聞社が6月末に行った世論調査によると、
安倍内閣の支持率は52%、不支持率は42%となり、
4ヶ月ぶりに支持が不支持を上回りました。

「国際感覚がある」「安定感がある」「指導力がある」
などが支持理由として挙げられたとのことですが、
大前は記事中で、今の安倍政権は、労働人口減少など、
今の日本が抱えている重要な問題に手を付けておらず、
何1つとして政策の成果を上げていないと指摘しています。

問題解決に取り組むにあたって最も重要なことは、
目の前に起きている問題をやみくもに対処するのではなく、
「何を解決すべき課題とするのか」を決めることです。

記事中でも、過去の首相の成功事例を大前が紹介していますが、
本質的な問題を徹底的に分析した上で、
解決策の立案や解決策の実行に取り組むことが大切です。


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