大前研一「ニュースの視点」Blog

KON722「RIZAPグループ/日野自動車/ファーストリテイリング/武田薬品工業 ~RIZAPと武田薬品が仕掛けるそれぞれの買収の問題点」

2018年4月20日 RIZAPグループ ファーストリテイリング 日野自動車 武田薬品工業

本文の内容
  • RIZAPグループ 湘南ベルマーレの経営権取得
  • 日野自動車 商用分野で提携交渉
  • ファーストリテイリング 売上高1兆1867億円
  • 武田薬品工業 「5兆円買収」でお粗末な市場対応

RIZAPと武田薬品が仕掛けるそれぞれの買収の問題点


フィットネスジム運営のRIZAPグループは6日、Jリーグの湘南ベルマーレの経営権を取得すると発表しました。現在の筆頭株主である三栄建築設計と合弁会社を設立し、ベルマーレが実施する約1億円の第三者割当増資を引き受けるとのことです。

今回の買収は金額がそれほど高くないので目くじらを立てるほどのものでもないかもしれませんが、お金が有り余っているという理由で買収をするのは経営者として「緩い」と私は思います。お金があると色々な人が近づいてきます。大切なのは買収をした後の経営力があるかどうかです。

RIZAPの過去を振り返ると、これまでに成功した事業はほぼ1つだけで、その他の事業はほとんど失敗しています。経営で重要なのはKFSであり、そこに集中するべきです。RIZAPはまだ無駄遣いをできるような時期ではないと思います。

成功したRIZAPのダイエット・減量事業にしても、その成功ノウハウはインストラクターの教え方に依存する部分が大きいと私は感じます。優秀なインストラクターであれば将来独立する危険性も高いですし、その他の面も含めまだまだ企業として土台を安定させなければいけないでしょう。むやみにあれこれと買収をしている暇はありません。

ビジネス・インサイダーは13日、『「5兆円買収」でお粗末な市場対応』と題する記事を掲載しました。アイルランドの製薬大手シャイアーの買収を検討していると報じられ、武田薬品工業の株価が急落しました。買収額が約5兆3000億円にのぼることを嫌気したもの。これを受けて行われたウェバー社長の説明も、資金調達の方法に触れないなど不十分なもので市場の疑念はさらに深まったとしています。

長谷川会長も退任し、ウェバー社長のタガが外れても抑えることができる人がいないのだと思います。ウェバー社長は目付け役がいなくなり、シャイアーを買収したら、すべてが上手くいくという夢物語を見ているように私は感じます。

5兆円の会社を買収して、その後の勝算はどのように描いているのか。武田薬品は2008年にミレニアム、2011年にはナイコメッドを買収し、相当な資金を使いました。今ようやく落ち着きを取り戻してきたタイミングで、5兆円の買収をする意義があるのか。不安視されても致し方ない状況だと思います。

純損益は回復したとはいえ、一昔前に比べると大したレベルではありません。そして何より問題なのは財務状況です。かつては2兆円ほどあった現金も、ナイコメッドとミレニアムの買収などもあり、今は2000億円ほどしかありません。

そんな状況にも関わらず、武田薬品は時価総額に対して3~5%という高配当をしており、最近になって社債と借入が大きく増えているのも頷けます。

武田薬品の時価総額は株価が下落し、約3.9兆円に落ち込んでいます。このような財務状況にあって、自社よりも高い時価総額のシャイアーを買収することになります。果たして資金調達はどうするつもりなのか?ここが一番大きな問題だと思います。



VWと日野という意外な組み合わせに期待/ユニクロの現状は柳井社長の思惑通り


日野自動車は12日、独フォルクスワーゲンの子会社とトラックやバスなど商用車の分野で提携交渉に入ると発表しました。電動化や自動運転技術の開発、物流など幅広い分野で協業する方針です。これについて日野自動車の下社長は、「商用車の先進技術は乗用車の延長線だけでは対応できない」と述べ、親会社トヨタとの連携だけでは生き残れないと強調しました。

フォルクスワーゲンもディーゼルの排ガス問題を乗り越えて上向いていたので、この提携は少々意外でしたが、絶妙です。世界的に見るとトラックやバスといった商用分野には、スウェーデンのスカニア、ドイツのマンといった強豪がいます。この欧州勢に食い込んでいくためには、フォルクスワーゲンが日野自動車と手を組むのは相性がいいと思います。

欧州では人手が不足しているので、トラックやバスを連結するという需要が高くなっています。日野自動車は技術力が高く、こうした需要に対応しやすくなるでしょう。最終的には、自動運転で2台のトラックやバスを連携するレベルまで目指していると思いますが、大掛かりな実験は日本ではなかなか難しいので、欧州に進出することは日野自動車にとってもメリットは大きいでしょう。

トラックの世界販売シェアを見ると、ダイムラーを筆頭に、中国の第一汽車、東風汽車など、さらにはインドのタタと続いていて、フォルクスワーゲンと日野自動車は10位前後に位置しています。三菱ふそうも取り込み、圧倒的なシェアを誇ってるダイムラーに対抗するためには、フォルクスワーゲンと日野自動車が抜本的な技術提携をして力を合わせる時期なのかも知れません。ダイムラーへの対抗馬という意味では、意外な組み合わせで面白いことになることを期待したいところです。

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが12日発表した2018年2月中間連結決算は、売上高が前年同期比16.6%増の1兆1867億円、営業利益が30.5%増の1704億円で、中間決算として過去最高。アジアなど海外事業の伸びが大きく、中間決算では初めて海外売上高が国内売上高を上回りました。

柳井社長は、売上が1兆円突破したときに5兆円まで目指すと発言していました。今順調に売上は2兆円をクリアし、利益も出しています。そして、海外事業が国内事業を上回るというのも、柳井社長の発言通りの結果になっています。ユニクロの店舗数推移を見ると、海外が激増していることがわかります。海外にも非常に大きな店舗も作っていますし、営業利益も十分です。柳井社長が目指す目標に向かって、努力してきた賜物といえるでしょう。

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※この記事は4月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

Jリーグの湘南ベルマーレの経営権を取得すると発表したRIZAPグループ。

これに対して大前は、まだ無駄遣いをするような時期ではなく、
経営で重要なKFSに集中すべきだと指摘しています。

KFSは、競争環境において他社との優位性を築くのに、
最も重要な要素となります。

経営には、必ず1つか2つの成功の鍵があり、事業というのは、
良いことを全部をやっていては駄目になります。

本当にこれだと思ったことを徹底して実行することで、
事業の成功に近づくことができます。


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