- 本文の内容
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- 米フェイスブック 時価総額約8兆4000億円減
- 個人情報流出問題 シリコンバレー、始まった「逆回転」
- 米アマゾン・ドットコム 時価総額約81兆8000億円
フェイスブック問題の本質は、「完全に」アカウント削除ができないこと
フェイスブックの個人情報が流出していたことが発覚して以降、株価が先月27日までに18%下落し、時価総額も約8兆4000億円減少しました。沈静化へ向けて、マーク・ザッカーバーグCEOは、議会で証言する考えを示していますが、一部の投資家からは今回の件を受けて、米国内外でフェイスブックやグーグル、ツイッターに対して、より厳しい規制が課されるのではないかと懸念が上がっています。
このフェイスブックの問題は非常に深刻です。フェイスブックの株価を見ると大暴落というほどではありませんが、18%の下落は大きいと思います。米国上場企業の時価総額を見ると、アップル、アルファベット、アマゾン、マイクロソフトに続いて、バークシャー・ハサウェイが5位にランクインしています。さらに中国アリババ、JPモルガン、ジョンソンアンドジョンソン、エクソンモービルが上がってきています。これまで上位はIT企業が独占してきましたが、この1ヶ月間のIT企業の時価総額の下落は非常に激しいものになりました。
環境、社会性、ガバナンスの頭文字をとったESGという考え方があります。投資判断として、財務諸表ではなく、ESG要素を考慮する投資を「ESG投資」と呼び、2006年アナン国連事務総長(当時)が機関投資家に呼びかけたことでも話題になりました。今後は、より一層この考え方が浸透してくるかもしれません。
今回のフェイスブックの問題で一番厄介なのは、最終的に「完全に」自分のアカウントを削除することができない、あるいは非常にそのプロセスが難しいということです。単に自分のアカウントを削除しただけでは、自分とつながっている友達、その友達とつながっている友達などのところに残っている情報までは削除されません。そうした部分から、個人情報が漏れる可能性が残っています。
例えば私で言えば、過去に名刺交換などで知り合った人が数千人単位になりますが、そのすべてにおいて私の情報を削除することはほぼ不可能だと言えるでしょう。
先日のビジネスウィーク誌に「Where's Our Digital EPA」という記事が掲載されていました。ここでは、デジタル社会でもEPAに匹敵する組織が必要ではないかと提言しています。
EPAは環境政策全般を担当する行政組織で日本の環境省に相当します。人の健康や、大気・水質・土壌などに関する環境の保護・保全の役割を担っています。「Where's Our Digital EPA」は、デジタル社会においても、EPAのような存在が必要ではないか、ということです。このままだと、フェイスブックという樽から汚れた油が流れ続けてしまう、と指摘しています。
フェイスブックは当初、個人情報を転売された自分たちは、犠牲者であると発言していましたが、問題の本質はそこではありません。フェイスブックに登録している人が、もう登録を抹消したいと思っても、その情報を完全に削除できないということが一番深刻な問題であるということが明らかになってきました。
日経新聞は、先月28日「シリコンバレー、始まった「逆回転」」と題する記事を掲載しました。個人情報の不正流出にからみ、規制論が高まる可能性がある一方で、フェイスブックなどのIT企業が持つ高い技術力やイノベーションを生む力は米経済の成長エンジンでもあり、米産業の行方を決める歴史的な日になるだろう、としています。
かつてマイクロソフトは独占禁止法に違反しているとされ、裁判を経験しています。あの時ビル・ゲイツ氏は弁護士に任せず、裁判をすべて自分自身で対応していました。今回のフェイスブックの問題で、ザッカーバーグCEOがどのように対応するのかは注目したいところです。
ハアマゾンの躍進に反比例で窮地に陥っているUPS
先月20日の米株式市場でアマゾン・ドット・コムの時価総額が初めてアルファベット(グーグルの親会社)を抜き、アップルに次ぐ世界2位に浮上しました。アマゾンは2月14日に初めてマイクロソフトを上回り、時価総額で世界3位に浮上したばかりでしたが、ネット通販とクラウド事業を柱に成長期待を背景に買いが続いています。
アマゾンの時価総額が大きくなる一方で、米トランプ大統領は自身のツイッターで米アマゾンを名指しで「税金を払っていない。数千の小売業を廃業に追いやっている!」などと批判しています。
税金問題以上に、深刻だと認識されてきているのがUPSの赤字問題です。日本でもアマゾンのために、ヤマト運輸や佐川急便が大変な事態に陥りました。ようやく値上げなどの対処をした結果、今は一息ついた状態です。
アメリカにおいてはアマゾンの影響力はさらに大きいですから、UPSのような配送業者にかかる負担は遥かに大きなものになっています。現状では、UPSは1個配送するたびに、1.5ドルの赤字になっているそうです。超優良企業だったUPSが困窮しつつあります。
トランプ大統領の狙いとしては、配送業務に関わる多くの選挙民に対して、自分がその処遇を改善したのだというわかりやすいアピールの場にしたいのだと思います。私としてはこうしたアピールの仕方は賛同しかねますが、トランプ大統領らしい分かりやすい方法です。トランプ大統領の行動は99%について何一つ褒められたものではありませんが、もしかしたら「UPSを救う」という1点において、思わぬ役割を果たすかも知れません。
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※この記事は4月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、フェイスブックの話題を中心にお届けいたしました。
フェイスブックの問題は非常に深刻な問題となり、
大量の個人データを扱う企業全般への規制論が高まる可能性がでてきています。
これら企業が持つ高い技術力やイノベーションを生む力は米経済の成長エンジンでもあり、
議会証言の日は、米産業の行方を決める歴史的な日になるだとう、としていますが、
PEST分析のようなマクロ環境分析は戦略立案において、非常に重要です。
自社で提供している製品、サービスや目の前の顧客だけをみていると
その市場の外側で何が起こっているのかが、見えなくなってしまいます。
環境の変化や事業活動に影響を与える要因を探り、
現在の環境とともに将来の環境に基づいて戦略を立案することが大切です。
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