大前研一「ニュースの視点」Blog

KON718「米中関係/日米関係/米韓関係/米通商政策 ~トランプ大統領は歴史を学び、少しでも知識をつけるべき」

2018年3月23日 日米関係 米中関係 米通商政策 米韓関係

本文の内容
  • 米中関係 中国製品への追加関税
  • 日米関係 日本がアメリカ車に「ボウリング球検査」
  • 米韓関係 対韓貿易赤字を強調
  • 米通商政策 米クアルコム買収阻止の大統領令に署名

トランプ大統領は歴史を学び、少しでも知識をつけるべき


米メディアが13日報じたところによると、トランプ米大統領が検討する中国の知的財産権侵害への制裁措置を巡り、追加関税の対象となる中国製品が最大600億ドル(約6兆4000億円)に達する見込みが明らかになりました。トランプ大統領は3月中にも制裁発動を決断する見通しで、鉄鋼・アルミニウムに続く強硬的な輸入制限に踏み切る可能性があるとのことです。

このようなトランプ大統領の対応を見ていると、実態をもう少し勉強してから数字を出してほしいと思います。先日もトランプ大統領は、カナダのトルドー首相に対して貿易赤字の不満を述べていましたが、実態はトランプ大統領の発言とは異なっており、後から米国政府が発言内容について修正をしました。

米国の貿易相手国別の貿易(財)収支を見ると、財では中国やカナダに対して大きな赤字になっていますが、サービス部門では圧倒的に米国が黒字になっています。財とサービスを合計すれば、カナダに対して米国は貿易黒字の状態です。

トランプ大統領は事実を知らずにモノを言います。これまでの小さなファミリービジネスの中では通用していたかもしれませんが、米国の大統領としては明らかに資質を欠いていると感じます。

つい先日、日本に対しても驚くべき発言がありました。日本がアメリカ製の車を国内市場から排除するために不当な検査をしているとし、「アメ車に20フィート(約6メートル)の高さからボウリングの球を落として検査するんだ」と言い放ちました。

これに対して米政府は15日、「トランプ氏の発言は冗談だった」と弁明しましたが、冗談という以外には説明のしようがなかったということでしょう。確かに非公開の場ではありましたが、それでも多くの聴衆がいる前で、このような発言をするのは、まったく理解できません。

日本における自動車のメーカー別輸入車新規登録台数を見ると、ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、BMW MINI、ボルボと続き、米国車が売れていません。この点を指摘して、米国車が売れないのは「何かしら日本側に問題があるからだ」とフォードなどはよく主張します。

GMは中国でシェアを伸ばしていますが、フォードはアジアで上手くいっていません。日本も実質撤退している状況です。フォードファミリーとトランプ大統領は親しい仲ですから、トランプ大統領の発言の背景にはフォードのこともあるのかも知れません。

トランプ大統領の無知さ加減は、韓国に対しても発揮されています。「私たちは韓国との貿易で非常に大きな赤字を抱えており、一方では韓国を防衛している。貿易でお金を失い、軍事費でもお金を失っている」と発言したそうです。

朝鮮戦争以降、米軍が韓国に駐留しているのは、米ソ冷戦の最先端・橋頭保としての役割を果たすためであり、米国の意思に基づいています。それを貿易問題と一緒に論じ、あまつさえ批判するのは筋が違います。


米国には歴史的に「難癖」をつける傾向がある


トランプ米大統領は12日、シンガポール半導体大手ブロードコムが提案している米クアルコム買収について、国家安全保障上の観点から禁止する大統領令に署名しました。この買収が成立すれば、今後10年以内に中国の同業ファーウェイが関連技術を牛耳ることになるという懸念が背景にあるとのことです。

これもまた、歴史を全く知らないトランプ大統領が難癖をつけた事例です。ブロードコムはシンガポールに本社がありますが、もともとは米国の会社です。HPの半導体部門が起源となっているアバコがブロードコムを買収したのです。

税金の問題もあり、登記上の本社はシンガポールになっていますが、ブロードコムのCEOはトランプ大統領に対して本社をシンガポールから米国に移転すると表明しています。それにも関わらず、今回ブロードコムの買収に難癖をつけたのは、大手取引先にファーウェイが含まれているからでしょう。

ファーウェイは、創業者が人民解放軍にいた、という理由で中国共産党との関係が深い、との嫌疑からアメリカ市場からは実質的に閉め出されています。トランプ大統領としては、この点を重視したのだと思いますが、これも全くの見当違いです。

かつて富士通がフェアチャイルドを買収しようとしたとき、米国から「国防上の理由」という何とも曖昧な理由で、同じような難癖をつけられました。歴史的に米国にはこうした難癖をつける傾向があります。中国やシンガポールも米国の無知と戦う段階になったということでしょう。

ただし、トランプ政権になってから、米国の無知さ加減は3倍ぐらいに増幅した印象です。日本としては、安倍首相がトランプ大統領との仲の良さを一生懸命アピールしていますが、そんなことよりもやるべきことがあります。日米間には、長い貿易戦争の歴史があります。その歴史を踏まえた正しい認識を伝え、トランプ大統領のおかしな発言に対しては、すぐに反論すべきです。過去の歴史や実態を無視したトランプ大統領の無知な発言を放置しておくべきではありません。


---
※この記事は3月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、米国の話題を中心にお届けいたしました。

トランプ大統領は3月中にも中国の知的財産権侵害への
制裁発動を決断する見通しで、
鉄鋼・アルミニウムに続く強硬的な輸入制限に
踏み切る可能性が明らかになりました。

これに対して大前は、実態をもう少し勉強してから
数字を出してほしいと指摘しています。

ファクトをしっかり把握せずに直感や感覚だけで判断することは、
よくある問題解決の失敗例としてあげられます。

また、問題を引き起こしている本質的な要因が不明なまま、
対症療法的に飛びついてしまうことも、同様です。

ビジネス上の様々な問題解決を行う際には、本質的な問題を発見し、
これに対して、仮説作成とファクトに基づく検証を繰り返し、
当を得た解決案を立案・実行することが重要です。


▼『新 問題解決必須スキルコース』無料デモ視聴キャンペーン
講義の一部を無料で視聴できるキャンペーンを実施中!
視聴期間は<2018年3月31日>まで!登録はこちらです!
http://tr.webantenna.info/rd?waad=Uo6rns66&ga=WAAAAk-1&ugad=Uo6rns66

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点