大前研一「ニュースの視点」Blog

KON715「朝鮮半島情勢/日韓関係/北朝鮮情勢 ~文在寅大統領が目指すのは、韓国が核保有国になるための半島統一」

2018年3月2日 北朝鮮情勢 日韓関係 朝鮮半島情勢

本文の内容
  • 朝鮮半島情勢 金正恩氏の親書手渡し
  • 日韓関係 文在寅大統領が安倍首相に不快感
  • 北朝鮮情勢 核開発は「再統一の野心から」

日本射程内のミサイルは約200発。国防のためにもっと積極的な対応が必要


平昌冬季五輪に合わせて韓国を訪問した金与正党第1副部長は先月10日、文在寅大統領と会談し、金正恩委員長の親書を手渡しました。金与正氏は口頭で『文在寅大統領に早期に会う用意ができている。都合の良い時に北を訪問して下さることを要請する』とする金正恩委員長のメッセージを伝え、これに対して文在寅大統領は「これから条件を整え、実現していきましょう」と答えたとのことです。

現在北朝鮮のトップ数名がオリンピックの閉会式に参加するために韓国を訪れていますが、おそらく閉会式だけでなく、何らかのミーティングの場が設けられることは間違いないでしょう。

文在寅大統領の姿勢は、一貫して反米・親北です。
オリンピックが終わった後、米韓合同軍事演習が予定されています。当然米国は予定通り実施の姿勢を見せていますが、北朝鮮は中止を求めています。オリンピックへの北朝鮮選手団への派遣費用を3億円ほど負担するなど、文在寅大統領は国連が禁止している北朝鮮との付き合いを続けています。北朝鮮の非核化を目標とすることは国連の決議でもありますが、今回のミーティングでも文在寅大統領が北朝鮮にそれを強く要求した報道は出ていません。

文在寅大統領の頭の中は、ほとぼりが覚めて韓国と日本が手綱を緩めている間に北朝鮮に赴いて関係修復を図りたいという思いが強いのでしょう。北朝鮮に対する対話を重視した「南風政策」では、過去に何度も騙されてきました。北朝鮮は、援助を引き出しておきながら、結局は裏切って核開発を行ってきました。文在寅大統領の対応を見ていて、日本を含め周辺諸国は「また北朝鮮に騙されるのではないか」と警戒しています。

その文在寅大統領に対して、日本の安倍首相が米韓合同軍事演習を冬季五輪後に予定通り実施するよう求めたことに、文在寅大統領が不快感を示したと報じられています。文在寅大統領は内政干渉だと主張しているとのことです。

北朝鮮が保有・開発した弾道ミサイルのうち、韓国:約1000発、日本:約200発、米国:1発がその射程範囲にあると言われています。米国に届くミサイルの開発が成功したことで、ようやく大きな問題となりました。恐ろしいほどの数のミサイルが日本を射程圏内に捉えているわけですが、今の日本ではこのミサイル攻撃にまともに対応できません。

抑止力とは、相手が攻撃してきた場合、軍事的な対応により損害を与えること、またその姿勢を示すことで攻撃そのものを思いとどまらせることと定義されています。しかし、今の日本の憲法ではこの抑止力を発揮することができません。憲法においては専守防衛という概念ですから、「1発だったら誤爆かもしれない。2発打たれたら本気と考えて対応する」というようなほとんど冗談のような対応しかできません。

今の北朝鮮の軍事力を考えれば、抑止力だけではなく、もっと積極的な対応が必要だと私は思います。例えば、明確に北朝鮮のミサイルが日本を目指して発射準備をしている証拠が見つかったならば、こちらからミサイルあるいは戦闘機でそれらを破壊するという行動に出る必要があると思います。こうした対応ができなければ、日本国民の安全は守れないでしょう。


文在寅大統領が目指すのは、韓国が核保有国になるための半島統一


河野太郎外相は先月16日、ドイツで開催された「ミュンヘン安全保障会議」に出席し、「北朝鮮は朝鮮半島再統一の野心があり、目的達成のために核兵器を重要な手段と考えている」と考えを示しました。また、米太平洋軍のハリス司令官も先月14日、「長期的には北朝鮮が主導する『共産主義に基づく南北統一』を目指している」との分析を示しました。

意外に感じる人が多いかも知れませんが、「朝鮮半島を北朝鮮主導で統一するのも構わない」という考え方を持っている文在寅大統領のような親北派の韓国人が一定数います。これは北朝鮮と統一した結果、韓国が核保有国になれるからです。韓国が核保有国になることは、米国が強く反対するため、普通には実現することができません。ところが、核を保有したままの北朝鮮と統一すると、まるで裏口入学のような形で韓国は核保有国の仲間入りを果たせるのです。河野氏が指摘したのはまさにこの点でした。

韓国の中には韓国が主導で、核を保有したままの北朝鮮を統一し、やはり結果として韓国が核保有国になるというシナリオ支持する人たちもいますが、本質的に考えていることは同じです。河野氏、ハリス氏という重要人物がこの点について懸念する認識を示すのは当然であり、同時に非常に重要なことです。

文在寅大統領は、北朝鮮と仲良くして、日本や米国には気づかれないうちに、韓国が核保有国になっていたというシナリオを
描いている可能性が高いと私は見ています。「核なき統一」が日本と米国の主張であり、目指すべき形です。韓国の考えているシナリオと日本・米国の考えているそれとの違いは、今後さらに大きな問題となってくると思います。


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※この記事は2月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、朝鮮半島情勢の話題を中心にお届けいたしました。

韓国が核保有国になるための半島統一のシナリオに対して、
河野氏、ハリス氏という重要人物が
この点について懸念する認識を示しました。

これに対して大前は、韓国の考えているシナリオと
日本・米国の考えているそれとの違いは、
今後さらに大きな問題となってくると指摘しています。

北朝鮮の今後のシナリオについては、
自滅シナリオ、話し合いによる開国シナリオなど、
様々なシナリオが考えられます。

このようにあらゆるシナリオをあらかじめ想定しておくことで、
「想定外」の出来事を減らし、「立ち位置」の自由度を
増やすことが可能となります。

「もしも」の事態に真剣に取り組み対策を講じることで、
想定外の出来事に慌てることは少なくなります。


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